11月6日、5日に投票が行われたアメリカ大統領選で、トランプ氏は大統領選挙の勝利宣言を行った。Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)を掲げ、政策もアメリカの国益を優先するアメリカ第一主義をとっている。
そんなトランプ氏の政策は良くも悪くも、日本に大きな影響を与えると考えられる。これまでの発言などから、予想される影響を見てみたい。
エネルギー政策
トランプ氏は化石燃料の促進を主張しており、2期目に向けた公約を集めたサイト「AGENDA47」に掲げるエネルギー政策の中で、トランプ氏はパリ協定から、再び脱退する意向を示しており、バイデン政権の気候変動対策やエネルギー政策の規制を撤廃する方向を示しており、世界的な環境政策に影響を与え、間接的ながら、日本の再生可能エネルギー政策にも大きな影響を与える。
トランプ氏はバイデン政権のEV促進政策を撤回する意向を示しており、日本の自動車産業、特にEV開発・製造に影響が出る可能性がある。
一方で「全てのエネルギーを公平に扱う」として、再生可能エネルギーよりも化石燃料を優遇するとしており、ガソリン価格が下がる可能性が指摘されている。
原子力発電に関しては、8月にイーロン・マスク氏と対談した際、「原子力が最大の脅威だ。日本で起きたことを考えると、3千年ぐらいはその土地に戻れない」と語り警戒する姿勢を見せている。
為替政策
ブルームバーグ・ビジネスウィークでのインタビューで、トランプ氏は米国の製造業の現状に関連して「大きな為替の問題がある」と指摘していた。
前政権時の2018~19年にかけて、頻繁にFRBに金融緩和を迫っていたこともあり、政権が発足後、円高ドル安を指向する可能性が高い。
これは日本の輸出産業、とりわけ自動車産業に悪影響を与える可能性があり、日本経済全体の賃上げムードにも水を差す可能性がある。
関税政策
先月15日、トランプ氏は中西部イリノイ州シカゴで開かれたイベントで「私にとって辞書の中で最も美しい言葉は、タリフ(関税)だ」と語った。
同氏は中国からの輸入品に一律60%の関税、日本や欧州など友好国を含むその他すべての国からの輸入品に10〜20%の関税をかけると発言している。
その他、ジョージア州での演説でも「私の(経済)計画の柱は製造業の復興だ」と述べるなど競争力を失った米製造業を守り、復活をめざしている。
これは大きなマーケットを抱える米国に輸出している日本の製造業のみならず、世界の輸出産業にとってダメージとなる。
IMFは、トランプ氏による大幅な関税引き上げなどが実行された場合、2025年の世界経済の成長率が0.8ポイント下押しされるとの試算を示している。
安全保障
ブルームバーグによるとトランプ氏は前政権の2019年に、日米同盟は日本がアメリカを防衛する義務を負っておらず不公平であるため、破棄すべきではないかと側近に語っていた
これは日米同盟の根本的な再評価を示唆しており、トランプ氏は防衛費の増額や米軍駐留経費の負担増を求める可能性が高く、厳しいディールを仕掛けてくることも考えられる。
具体的な影響の程度は、実際の政策実施や国際情勢によって変わる可能性があるものの、アメリカ第一主義を掲げるトランプ氏の政策は日本にとって厳しいものとなる可能性は十分あるだろう。
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