習近平の側近苗華逮捕 中国政治に大変局の兆し

2024/12/03 更新: 2024/12/03

11月28日、中国国防部の報道官は、中央事委員会政治工作部主任で習近平の重要な側近である苗華(びょうか)の逮捕を発表し、これが中国政治における大変局の始まりであるかもしれないと示唆した。この動きは習近平の権力基盤に対する大きな打撃とされ、中国の将来の政治動向に、深刻な影響を及ぼす可能性があると見られている。

苗華は習近平の軍の重要な側近であり、習が軍の権力を掌握するための重要な人物の一人である。苗華は中共(中国共産党)軍の中で第5位の地位を占めており、中共軍の政治工作部は、全軍の政治活動を統括し、軍内の動きを監視している。

苗華に対する取調べは、習近平にとっても大きな打撃となるだろう。

これは習近平が、中共20回党大会以来受けた最大の打撃であり、中国の政治情勢に重大かつ深遠な影響を与えると考えられる。習近平の主観的な願望とは逆に、「百年に一度の大変局」がすでに到来したことを示唆しているかもしれない。

第一に、習近平の権力への衝撃

中共は常に「銃器から政権が生まれる」と信じてきた。誰が本当に軍権を握っているかが、中共の真の最高権力者を決定する。習近平は2012年の就任以来、一貫して軍権の掌握に努めてきた。 では、どのように軍権を掌握するのだろうか? 

最も重要なのは、軍の高級将校の人事権を自分の手に握ることである。誰に頼るのか? それは中央軍事委員会政治工作部の主任である。この主任は、習近平が軍の高級将校を選抜・任用する「組織部長」のような存在である。

中央軍事委員会政治工作部の初代主任である張陽は、かつて習近平が、軍の高級将校の人事を管理するための重要な頼みの綱であった。

しかし、2017年8月、張陽は失脚し、取調べを受け、同年11月23日に首吊り自殺した。彼の死後、中国軍報は彼を「罪を恐れての自殺」とし、「理想信念、党性原則、法紀への畏敬、道徳的底線を失い、表と裏で二つの顔を持ち、忠誠を叫びながら裏で汚職を行う典型的な『二面性のある人間』」と厳しく非難した。

張陽は2012年~17年までの5年間、習近平のために軍の高級将校の選抜と任用を管理しており、その結果「大悪人」とされた。

張陽の失脚後、習近平は慎重に苗華を選んだ。苗華は習近平と福建で10年間共に働いた経験があり、習の「側近中の側近」として知られていた。

苗華は2017~24年までの7年間、習のために軍の高級将校の選抜と任用を管理し、その結果「重大な規律違反の疑い」をかけられることになった。

張陽から苗華にかけての12年間、習の「政治による軍統治」を支える全軍の「政治委員の中の政治委員」である中央軍事委員会政治工作部主任は、どちらも信頼できない人物であった。これは習が人を見る目に確信を持っていたのか、あるいは老眼で判断を誤ったのかという疑問を呼び起こす。

2022年の中共20回党大会で、習は苦心の末に「3期目」を実現し、生涯で権力の頂点に達した。しかし、わずか数か月後、習は一連の重大な打撃に見舞われた。

最初の打撃は、習が自ら抜擢した最年少の党と国家の指導者、中央委員・国務委員・外交部長の秦剛(しんごう)が、就任からわずか6か月で「失踪」し、その後3つの職務全てを解任されたことである。

2つ目の打撃は、習が自ら抜擢したロケット軍の幹部たち、司令員、政治委員、副司令、参謀長などが「一網打尽」にされ、全部失脚したことである。

3つ目の重大な打撃は、習近平が選び重用した中央軍事委員会の委員であり、国防部長でもある李尚福(りしょうふく)が取調べを受けたことである。

4つ目の重大な打撃は、習近平が選び重用した元中央軍事委員会委員、国務委員、国防部長、初代ロケット軍司令官の魏鳳和(ぎほうわ)が取調べを受けたことである。

5つ目の重大な打撃は、元国防大学の政治委員であり、元中国国家主席李先念(りせんねん)の娘婿である劉亞洲(りゅうあしゅう)が、名目上は汚職であるものの、実際には習近平に反対したために取調べを受けたことである。

6つ目の重大な打撃は、習近平が選び重用した元空軍司令官の丁来杭(ていらいこう)を含む、陸・海・空・ロケット軍・戦略支援部隊・5大戦区・中央軍事委員会連合参軍部・装備発展部の高級将校たちが取調べを受けたことである。

7つ目の重大な打撃は、習近平が選び重用した一連の国有特大型軍需企業の高官たちや、軍需関連の先端国防研究機関の高官たちが取調べを受けたことである。

中共20回党大会の前後、中共のメディアは、習近平を極限まで賛美し、彼の「英明で偉大な」リーダーシップを宣伝した。

しかし、党大会からわずか2年で、習近平は重大な打撃を受け、彼の「英明で偉大な」イメージは覆された。常識のある人は、習近平が英明で偉大どころか、人を見る目がなく、人選や人材登用を誤り、軍を統治する能力がないと考えるだろう。

第二に、軍隊への影響

最も重要な影響は、2024年の今日、中共の軍権が誰の手に握られているかである。

もし習近平の手に握られているなら、苗華のような「側近中の側近」を全力で保護し、少なくとも平穏な引退を許すはずである。

苗華の取調べによれば、軍の実権は習近平ではなく、副主席の張又侠(ちょうゆうきょう)が握っている可能性が高い。

今年の夏の中共第20期第3回中央委員会以降、中国の上層部で「静かなクーデター」が起こり、習近平が突然の病気に見舞われ、張又侠が「宮廷クーデター」を仕掛けて権力を奪ったという噂が広がっている。

7月31日、中国人民大学の退職教授である冷傑甫(れいけつほ)氏は、張又侠中央軍事委員会副主席宛てに公開書簡を執筆し、8月初めにインターネット上で発表した。手紙には、彼がWeChatを通じて習近平が重病で職務を果たせず、党、政府、軍の業務が張又侠らに委ねられていることを知ったと記されている。

冷教授は中共が直面する厳しい状況を考慮し、倒されるよりも自ら歴史の舞台から退くことを選び、立憲民主主義への移行と「中華連邦共和国」の設立を呼びかけた。8月11日、冷教授は大紀元の記者にその公開書簡が自分のものであると確認した。

この公開書簡の発表後、冷教授には特に何も罰を受けていない。これは、公開書簡で習が「重病」と言及したことが妄言ではなく、実際に習が病気であること、また「党、政府、軍の業務が張又侠らの手に落ちた」という記述が的外れではないことを示している。

習近平が病気になった後、軍の実質的な責任者である張又侠が政局で重要な力を持つようになった。この変化には4つの理由がある。

第一は、習近平が軍内の多くの高級将軍から反感を買ったことである。

習近平が政権を握った後、前中共の独裁者江沢民が実質的に掌握していた軍権を奪うために、反腐敗キャンペーンを展開し、最初の2期10年間で160人以上の将軍を取調べた。習近平が取調べをした将軍の数は、1927年の中共軍創設以来、内戦や対外戦争、文化大革命で失脚した将軍の総数を上回っている。

これら160人以上の将軍とその家族、子供たち、そして彼らの後ろ盾となっていた上司たちは、習近平に対して深い憎しみを抱いており、習近平を排除しない限り満足しないと考えているという。

2015年、習近平は軍改革を実施し、中央軍事委員会の4つの総部を15の部門に改編し、全国の7つの軍区を5つの戦区に再編成した。また、従来の4つの軍種を海軍、陸軍、空軍、ロケット軍、戦略支援部隊の5つに変更した。この改革は軍隊内での大規模な利益調整を意味し、その過程で習近平は多くの高級将軍から反感を買った。

さらに、習近平が前国防部長李尚福を取調べしたことが、張又侠に大きな影響を与えたことも重要である。

張又侠が軍事委員会装備発展部の部長を務めていた際、李尚福は副部長であった。張又侠が中央軍事委員会の副主席に就任した後、李尚福がその部長職を引き継ぎ、さらに、張又侠が中央軍事委員会の副主席に再任した後、李尚福は中央軍事委員会の委員、国務委員、国防部長に昇進した。

李尚福の昇進には習近平の承認が必要であったが、実際には、彼は張又侠の側近であった。

習近平が李尚福を取調べした後、装備発展部の高級将軍たちも取調べ対象となったが、彼らは皆張又侠の元部下であった。

三つ目は、張又侠が習近平の冷酷さを深く理解している点である。

張又侠は、習近平による軍隊の反腐敗キャンペーンの全過程を目撃し、中共第20回全国代表大会で習近平が恩義のある前国家主席胡錦涛(こきんとう)を排除する命令を出すのを見た。また、前総理の李克強(りこくきょう)が退任からわずか半年で不可解な死を遂げたことや、真実を語る勇気を持つ「紅二代」(共産党幹部の2代目)、企業家であり前国家副主席王岐山の親友である任志強(じんしきょう)が18年の重刑を言い渡されたことも目の当たりにした。

張又侠は、習近平の暴走を放置すると、自身も元中央軍事委員会副主席の徐才厚(じょさいこう)や郭伯雄(かくはくゆう)のように囚人になる可能性があることを懸念していたのかもしれない。

次に、張又侠が軍隊内に強固な基盤を持ち、中共の長老たちから支持を得ている可能性があることが挙げられる。

張又侠の父、張宗遜(ちょうそうそん)は元党首毛沢東を何度も守護し、「禁衛(宮廷守護)上将」と称され、軍内に広範な人脈を築いていた。張又侠は18歳で入隊し、56年の軍歴を持つ実戦経験豊富な高級将軍の一人である。彼は軍内で高い威信を誇っている。

父親との関係や自身の人脈により、張又侠は軍内に多くの支持者を抱え、習近平に不満を持つ長老たちからも支持を得ている可能性があるという。

今年の7月と8月以降、張又侠の軍内での地位は明らかに向上し、彼が主導する多くの重要な変化が見られている。具体的には、中央軍事委員会の主席弁公室主任や専任副書記、北部・中部・南部の3つの戦区司令官の交代、アメリカの国家安全保障顧問やロシアの国防相との会見、香山フォーラムの主導、全軍の軍事理論工作会議や合成訓練現場会議への出席と講話、さらにはベトナム訪問での首脳レベルの歓迎などが挙げられる。これにより、張又侠は現在、軍隊の実質的な指導者となっているようである。

また、習近平の「側近中の側近」である苗華が取調べされているのも、張又侠の主導による可能性が高い。

苗華は7年間、軍事委員会政治工作部主任を務めており、この間に習近平が任命したすべての高級将軍(少将、中将、上将を含む)は、苗華の考察を経て習近平に提出され、承認を受けてきた。

苗華の失脚は、彼が考察した高級将軍、特に彼が権力を利用して軍内に配置した側近たちに影響を及ぼす可能性がある。

苗華の取調べにより、一連の軍の高級将軍が取調べされ、免職や処分を受けることが避けられない状況になるだろう。

第三、中共最高層の権力への影響

習近平は現在も中共中央総書記、国家主席、中央軍委主席の地位にある。しかし、上記の分析が正しい場合、彼の政局を左右する権力は既に深刻に弱まっている。習近平は12年間の在任中、党政軍(共産党が政府と軍を指導)の高官からの反感を買い、内政や外交で重大な政策ミスを繰り返した。

これにより、中央から地方、国内から国外に至るまで、彼に不満を持つ人々が社会のあらゆる階層に広がっている。民心はすでに習近平から離れている。苗華の取調べによれば、習近平の権力はさらに弱まる可能性がある。

現在、中共第20回大会の四中全会の際には、習近平が中共中央総書記や中央軍委主席を辞任せざるを得なくなり、実権のない国家主席の地位だけを保持する可能性があるとの見方もある。

習近平の権力がどのように終わるかは、現時点では予測が難しい。名目上の地位を維持するのか、病気で職務を果たせなくなるのか、あるいは突然の病気で亡くなる可能性もある。いずれにせよ、習近平の権力が失われる傾向は逆転しにくいだろう。

習近平の影響力はすでに失われているという。このため、中共の最高層は権力争いに突入し、新たな激しい内紛が避けられない状況だ。この内紛の中で、実際に軍権を握る張又侠が重要な役割を果たす可能性がある。習近平に取り入ろうとする無能な中共高層の追従者たちは、お世辞を言いながら次の大粛清の標的になるかもしれない。

第四、台湾統一への影響

「台湾統一」は習近平の夢の一つである。毛沢東が解決できなかったこの問題を習近平が解決すれば、彼は歴史に名を刻むことができる。

2020年、習近平は香港で「香港版国家安全法」を施行し、27年前倒しで香港の「一国二制度」を終わらせた。また、台湾の主流の民意が「一国二制度」を受け入れないため、習近平が「一国二制度」に基づく平和的な統一を実現する可能性はほぼ消えた。そのため、武力による統一が習近平の台湾統一における優先的な選択肢となった。

台湾の武力統一には、強固な軍隊が必要だ。

しかし、江沢民が中央軍事委員会の主席や「太上皇」を務めていた時期、中共軍の腐敗は非常に深刻だった。習近平の反腐敗運動や軍改革も、中共軍の腐敗が蔓延する土壌を根絶することはできなかった。中共20回大会以降、一連の高級将校が失脚したことは、中共軍の腐敗が依然として深刻であることを示している。

苗華の取調べによれば、「大根を引き抜けば土がついてくる」とのことから、軍隊内でもまた一連の高級将校が失脚することが予想される。

中共は常に「政治第一」を信じ、軍の指導者を任命する際には必ず政治委員を任命し、その政治委員に軍を監督させている。

中央軍事委員会の政治工作部主任は全軍のなかで「政治委員の中の政治委員」とされている。前中央軍事委員会副主席の徐才厚(じょさいこう)は、かつて総政治部主任を務め、大規模に官職を売買し、総政治部を「官職卸売部」と呼ばれるように変えた。

張陽が総政治部主任を務め、2015年の習近平の軍改革後に政治工作部主任になった際も、同様に総政治部や政治工作部を「官職卸売部」として扱った。今や苗華も張陽の後を追っている。

全軍の「政治委員の中の政治委員」でさえ習近平や党に忠実でないのに、その下にいる各級の政治委員が習近平や党に忠実であるはずがない。

習近平が就任して以来、内政や外交において重大な政策ミスが続き、党、軍、国家は混乱している。内紛が絶えず、経済は低迷し、債務は増大し、失業率は急上昇し、民衆の不満が高まっている。

軍の幹部たちは、なぜ習近平に忠実でなければならないのか、党中央や中央軍事委員会に忠実でなければならないのかと考えている。

ここ2年間、中共軍は活力を失っている。

ロケット軍の上層部が「一網打尽」にされ、戦略支援部隊の番号が廃止され、装備発展部の多くの将軍が失脚した。

海軍、陸軍、空軍、各大戦区でも将軍が取調べを受けている。

093型原子力潜水艦が黄海で沈没し、周級攻撃型原子力潜水艦が武漢で沈没した。

さらに、ミサイルに燃料ではなく水が充填され、ミサイル発射井の蓋が故障するなど、軍の戦闘力は大きな影響を受けている。

現在、中共軍の最高層で組織建設と思想建設を担当する政治工作部主任の苗華が取調べを受け、軍の士気がさらに揺らぐだろう。

中共軍の多くの将兵にとって、「総政治委員」が腐敗し、「重大な規律違反」を犯している状況では、前線に立ち、弾除けとなり、命を捨てるよう求められても、応じることはないだろう。

第五、中共崩壊のカウントダウンが始まった

習近平が就任して以来、彼には「総加速師」という特別な呼び名がある。これは、習近平の本来の意図が党を守ることであったにもかかわらず、彼の重大な政策決定がその目標に逆行し、党を「中国共産党滅亡」というゴールに向かって加速させていることを示している。

習近平は一歩間違えると、すべてが間違いとなり、今日までその誤りを続けてきた。その結果、彼の名声は急落し、中共は全面的、深刻、持続的、不可逆的な危機に陥っている。

中共が現在直面している最大の危機は、民心を失ったことだ。大陸、香港、マカオ、台湾、さらには海外の民心を失っている。

中共が民心を失った重要な表れの一つは、2004年に大紀元が発表した評論『共産党についての九つの論評』以来、共産党の「偽り、悪、闘争、天に反し、地に反し、人類に反し、神仏に反する」という邪悪な本質が広く知られるようになったことだ。この影響で、全世界で中国人が中共の党、団、隊から脱退する大潮流、いわゆる「三退」の動きが起こっている。

大紀元退党ウェブサイトの統計によると、現在までに4億3900万人の中国人が中共の党、団、隊を脱退している。「三退」とは、中共との決別を意味している。

結語

2023年3月22日の夜、習近平はロシア訪問を終え帰国する前に、ロシアのプーチン大統領と握手を交わし、「我々は共に百年未曾有の大変局を推し進めるべきだ、お大事に」と述べた。しかし、わずか1年余りの間に、習近平の意図とは逆に「百年未曾有の大変局」が現実となっている。

この大変な結末は、習近平の「失脚」と中共の「失脚」に至るだろう。

 

王友群
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