自衛隊が中国共産党の脅威に備え 「輸送特化の新部隊」3月創設

2025/01/03 更新: 2025/01/03

日本の防衛体制が大きな転換期を迎えている。自衛隊は中国共産党による台湾有事に備え、南西諸島防衛の強化を目指し新たな海上輸送能力の向上に取り組んでおり、2025年3月、呉基地で「自衛隊海上輸送群」が新編される。日本経済新聞が3日報じた。この部隊は陸上自衛隊海上自衛隊が共同で運用し、本土と南西諸島間の輸送を担当する。

防衛省防衛力整備計画において、日本の防衛上必要な機能・能力として、7つの分野を重視し防衛力の抜本的強化を推進している。7つのうちのひとつに「機動展開能力・国民保護」の分野があり、今回はその一環だ。

輸送船舶の取得

防衛省が発表した「令和7年度概算要求の概要」によると、輸送船舶の取得について、「島嶼部への海上輸送能力強化のため、本土と島嶼部間の輸送を実施可能な中型級船舶、水深の浅い島嶼部の港湾にも輸送を実施可能な小型級船舶、小型級船舶では接岸できない島嶼への輸送を実施可能な機動舟艇の各種輸送船舶を導入し、今年度新編される共同の部隊(海上輸送群)において運用する」としている。

防衛省提供イメージ資料。左か中型級船舶、小型級船舶、機動舟艇

海上輸送群は令和9年度(2027年度)までに3種類の船舶を合計10隻導入することを計画しており、内訳は、中型級船舶が2隻、小型級船舶が4隻、機動舟艇が4隻となる。

防衛省提供資料

民間海上輸送力の活用

防衛省は南西地域の島嶼部へ部隊等を輸送する海上輸送力を補完するため、車両及びコンテナの大量輸送に特化した民間資金等活用事業(PFI:Private Finance Initiative)船舶を確保。 民間輸送力活用事業として6隻、509億円を予算計上している。また、 実動演習におけるPFI船舶の活用として16億円を予算計上しており、PFI旅客船舶を使用した、部隊、装備品等の輸送訓練及び港湾入港検証を実施する。

PFIとは

PFIとは、正式名称を、Private-Finance-Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIと呼ばれている。PFIとは、公共事業を実施するための手法の一つで、民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法。PFIは1990年代前半にイギリスで生まれた。

防衛省提供資料 輸送訓練等の状況

台湾有事に備えた自衛隊の南西シフト

自衛隊が台湾有事に備え、南西諸島防衛の強化を図る南西シフトは2010年頃から段階的に始まった。当時、中国の海洋進出が活発化し、中国海警局の船舶による尖閣諸島周辺での接続水域入域が増加し始め、北朝鮮によるミサイル発射実験が増加傾向にあり、「力による一方的な現状変更を許容しない」という日本の意思表明の必要性が高まっていた。また、奄美大島から与那国島までの約1200キロメートルのエリアに、沖縄本島以外に陸上自衛隊の部隊が配置されていなかったという「南西地域の防衛力の空白」が認識され、中国を封じ込めるという日米共同の軍事戦略に基づく作戦の必要性が高まっていた。これらの要因が複合的に作用し、2010年の防衛大綱と中期防衛力整備計画(中期防)で、中国を念頭に南西地域の防衛力強化が打ち出された。

2013年の防衛大綱では、南西地域での防衛態勢の強化が明確に掲げられ、以降着実に防衛力の整備が行われてきた。2014年には沖縄・与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島への部隊配備が明記され、2016年に与那国駐屯地が開設され、沖縄本島以外で初めて陸上自衛隊の部隊が南西地域に配置された。

南西シフトは2010年頃から計画され、2013年以降本格化し、2016年から具体的な部隊配備が始まったと言える。

中国の軍事的脅威

中国の軍事的脅威に関する最近の動きが、日本やアメリカの防衛機関から報告されている。防衛省のシンクタンクである防衛研究所が公表した「中国安全保障レポート2025」によると、中国はグローバルサウスと呼ばれるアジア・アフリカなどの新興国・途上国に対する影響力を強化している。中国は経済協力を梃子(てこ)に、これらの国々の対外行動に影響を与え、台湾や海洋権益などの「核心的利益」を守るための外交攻勢を展開している。

さらに、米国防総省の最新の年次報告書では、中国の核戦力の急速な拡大が指摘されている。報告書によると、中国が保有する運用可能な核弾頭は2024年半ばの時点で推定600発以上に達し、前年から約100発増加したとされている。この数字は4年間で3倍近くに増加しており、予想を上回るペースで核戦力を強化していると分析されている。

また、中国は核弾頭の数的増加だけでなく、精密攻撃能力を持つミサイルなど、核戦力の質的向上と多様化も進めているとされ、アメリカ政府高官は警戒感を示している。

これらの動きは、台湾をめぐる緊張とも関連している。台湾の国防部長は以前、中国軍が2025年までに本格的な台湾侵攻能力を持つ可能性があると指摘しており、今年2025年が中国の軍事的脅威を測る一つの指標となっている。

このような中国の軍事力増強は、アジア太平洋地域の安全保障環境に大きな影響を与えており、日本を含む周辺国やアメリカは警戒を強めている。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。
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