被災地の目撃者が語る チベット大地震の悲惨さ

2025/01/10 更新: 2025/01/10

1月7日早朝、チベット自治区のシガチェ市ティンリ県で大規模な地震が発生した。同日午後7時時点で公式発表によれば126人が死亡、188人が負傷した。その後、死傷者数の更新はない。アメリカ地質調査所(USGS)によれば、地震の規模はマグニチュード7.1である。日本気象庁も同様にM7.1と推定した。一方、中国当局はM6.8と発表している。

USGSは世界的に展開する観測ネットワークを通じて、約150か所の観測所がリアルタイムで地震波を検出している。地震多発国である日本は、世界最先端の地震観測システムを構築している。時事評論家の江峰氏は中国のデータは政治的要素によって操作されることがあると指摘した。

マグニチュードの差で何が違う

地震の規模を示すマグニチュードにおいて、M7.1とM6.8の差は一見小さいように思えるが、実際はエネルギーの規模には大きな違いがある。マグニチュードは対数スケールで表されており、1段階増加するとエネルギーは約32倍になる。そのため、M7.1の地震は、M6.8の地震の約2.82倍のエネルギーを放出している。

中国では、M7.1とM6.8の地震の対応はかなり異なっている。

M7.1の地震対応

応急対応レベル:一級応急対応(最高級)

  • 適用範囲:マグニチュード7以上の特に重大な地震。
  • 指揮体制:国務院(中共政府)が直接指導し、応急管理部門が国家地震救援指揮センターを発動。
  • 動員資源:軍や武警部隊が救援活動に参加。全国規模で医療チーム、物資、専門機器を迅速に動員。
  • 救援活動の規模:被災地全域にわたる包括的な支援。道路やインフラの迅速な復旧作業。
  • 特徴:被害規模が大きいため、国際的な救援協力が検討される場合もある。被災者の数や範囲に応じた大規模な物資供給が行われる。

M6.8の地震対応

応急対応レベル:二級応急対応

  • 適用範囲:マグニチュード6~7の重大な地震。
  • 指揮体制:地方政府が主導し、国家が支援を提供。
  • 動員資源:地域内の救援隊(消防隊、医療チーム)を動員。必要に応じて中央備蓄物資を調達。
  • 救援活動の規模:被害が集中している地域に限定した支援。被災地の周辺地域からの支援物資の輸送。
  • 特徴:主に地方自治体の資源で対応可能な範囲。被害が広範囲に及ばないため、国際支援は通常不要。

現地での逃走劇

地震を経験した市民が大紀元の記者に語った逃げる際の状況や、最も被害の大きかった地域の惨状を伝えた。

定日県で出張中の祁昊(き こう)さんは、7日午前9時5分にホテルで激しい揺れにより目を覚ました。状況を把握する間もなく、本能的に2階から逃げ出したという。

「(ホテル内のものが)全て落ちてきて、揺れが特に激しかった。恐怖で全身が震え、寒さと恐怖で手足が凍りつくようでした」と祁さんは語った。同僚2人と一緒に、服も着ず下着姿のまま、どうやって階段を降りたのかも分からない状態で外に飛び出した。

シガチェ市では午前9時でもまだ暗く、ほとんどの人が睡眠中だった。祁さんが避難したホテルは新築の2階建てだったため、大きな被害は免れた。しかし、気温は氷点下15度ほどで、服を着ていない住民が寒さに震えながら街中に立ち尽くしていたという。

被災地の状況と救援活動

祁さんによれば、最も強い揺れは3回あり、最初の揺れは約30秒、その後さらに10秒以上続いた。余震も頻繁に続いているという。

現在、ティンリ県内では救援車両と政府関係の車両のみが通行を許されており、地震による道路の寸断もあって、移動が制限されている。祁さんと同僚ら20人ほどのグループは、支援物資としてインスタントラーメンや乾麺を車に積み、7日正午には県中心部から15キロ離れた被災地・長所郷に到着。被災者に食事を提供する準備を始めた。

最も被害が大きいとされる措果郷、曲洛郷、長所郷の各郷では、約80世帯が暮らしており、総住民数は2千人以上にのぼる。祁さんは「道中、目にするのはほとんど崩れた建物ばかりで、90%の住宅が倒壊している。長所郷の政府庁舎前ではすでに18人が亡くなっていた」と語った。亡くなった人々は、チベットの伝統に従い、遺体を一つのテントに安置し、油灯を灯しているという。

祁さんによると、倒壊した建物の下には多くの人が閉じ込められている可能性が高い。地震発生時、村民の多くが家の中で眠っていたためだ。同氏は、「公式発表では死者は126人となっているが、実際にはさらに増えるだろう」と語った。

祁さんらは、移動中に被災者に食料を配り、長所郷の政府庁舎近くにテントを設置。午後8時まで支援活動を行い、用意した物資をすべて配り終えた。その後、県中心部に戻り、翌日も再び被災地を訪れる予定だという。

祁さんは「農村部の住宅はほとんどレンガ造りで鉄筋が使われていないため、揺れに耐えられず倒壊してしまう」と説明。救援物資が到着するのが遅れ、寒さの中で苦しむ被災者が多い状況を憂慮し、物資の迅速な到着を求めている。

また、彼自身も「今回の地震は命を失う寸前の経験だった。もし宿泊していたホテルが倒壊していたら、逃げることは不可能だった」と話した。
 

寧芯
清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。
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