中国発の生成AI「ディープシーク(DeepSeek)」を巡る国際的な懸念が深刻化している。平将明デジタル大臣は1日、沖縄県名護市での講演でディープシークへの懸念を表明した。同AIを巡ってはEU諸国がGDPR(一般データ保護規則)違反の可能性を指摘し、台湾が政府機関での利用禁止を即時発動するなど、国際社会が連鎖的な規制強化に動いている。
平デジタル大臣は、2025年2月1日、沖縄県名護市が主催するイベント「TSUNAGU CITY(つなぐシティ) 2025 in NAGO」で講演を行った。そのなかで、中国のスタートアップ企業「ディープシーク(DeepSeek)」が開発した生成AIについて、「個人情報の取り扱いに関する懸念が解消されない限り、各省庁での利用を控えるよう注意喚起を行う」との考えを示した。同大臣は「利用者の個人情報が適切に保護されるかが問題だ」と指摘し、必要に応じて個人情報保護委員会が対応すべきだと述べた。
ディープシークの生成AIは、数学的推論やコーディング能力で米OpenAIの最新モデルと同等性能を持つとされる一方、データ収集の透明性を巡り国際的な懸念が拡大している。欧州では「適切な保護措置が取られず個人情報が中国に送られる」として、イタリアが国内利用を規制し、フランスやオランダも調査を開始した。オーストラリアのヒュージック産業・科学相も「プライバシー管理に未解決の問題がある」と警鐘を鳴らしている。
同AIの利用規約によると、ユーザーはアカウント作成時にメールアドレスや電話番号を提供し、チャット履歴やデバイス情報(OS種別、IPアドレスなど)が収集される。データは中国のサーバーに保存され、セキュリティ向上を理由に「関連企業と共有される」と明記されている。
EUの消費者権利保護のために活動している団体「ユーロコンシューマーズ」は、このデータ処理がEU一般データ保護規則(GDPR)に違反すると指摘し、規制強化を求めている。
共同通信によれば世界数百の企業・政府機関が既に利用を制限。米調査機関ニュースガードが実施した精度検証では、同AIの回答正答率が17%に留まる事例も報告され、米格付け機関は「中国のプロパガンダツール化するリスクがある」と分析している。
台湾デジタル発展省は1月31日に公式声明を発表し、「ディープシークのAIサービスは中国製品であり、越境データ転送や情報漏えいなどのセキュリティー上の懸念がある」として、政府機関や重要インフラ施設での利用を禁止する方針を明らかにした。この措置は即日適用され、台湾メディア複数社が同日中に報じている。
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