台湾の対外投資2年連続で過去最高 進む中国依存からの脱却

2025/02/10 更新: 2025/02/10

台湾経済部投資審議司(Investment Review Committee of the Ministry of Economic Affairs, MOEA)が発表したデータによると、2024年の台湾の対外投資額は前年比82.6%増の485億8,621万ドルとなり、2年連続で過去最高額を更新した。特に中国大陸を除く地域への投資は90.6%増の449億3,196万ドルと大幅に伸びており、台湾企業の海外展開が加速していることがうかがえる。

一方で、中国大陸向けの投資額も前年比20.3%増の36億5,426万ドルと2桁増加を記録した。これは、台湾企業による多国籍企業の買収案件が多く含まれていることが要因とされており、実際の対中直接投資とは異なる性質を持つと説明されている。2021年以降減少傾向にあった対中投資が増加に転じたものの、全体に占める割合はわずか7.5%にとどまり、かつての主力市場としての地位は大きく後退している。

中国依存から脱却

1993年に対中直接投資が解禁されて以降、2022年まで30年間、中国向け投資は台湾の対外投資で首位を占めていた。しかし、ピーク時の2010年には83.8%を占めていたシェアは年々縮小し、2024年にはASEAN地域への投資額(84億9,417万ドル)が中国大陸向けを上回る状況となった。この動きは、台湾企業が中国依存から脱却し、多様な市場への進出を進めていることを示している。

台湾企業の対中投資割合が大幅に低下した背景には、複数の要因が絡み合っている。

まず、2018年以降の米中貿易摩擦の激化が挙げられる。米中対立の深刻化により、台湾企業は、中国一極集中のリスクを強く認識し、投資先の分散を図るようになった。同時に、中国における労働コストの上昇も台湾企業の投資判断に影響を与えている。かつては低コスト生産の魅力的な拠点だった中国だが、人件費の高騰により進出のメリットが薄れつつある。

さらに、政策面での変化も無視できない。台湾政府が推進する「新南向政策」は、東南アジアや南アジアへの投資を奨励しており、台湾企業の投資先多様化を後押ししている。一方で、アメリカをはじめとする各国による対中投資規制の強化も、台湾企業の対中投資を慎重にさせた要因となっている。

加えて、台湾の主要産業である半導体分野の動向も大きな影響を与えた。台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする台湾の半導体企業が、アメリカや日本など他国への大型投資を積極的に行っていることが、全体の対中投資割合を相対的に引き下げる結果となっている。これらの要因が複合的に作用し、台湾企業の投資戦略に大きな変化をもたらしたのである。

地域別ではアメリカが首位

地域別では、アメリカが141億2,649万ドルで全体の29.1%を占め首位となった。次いで英領中米(主にケイマン諸島やバージン諸島)が87億8,309万ドル(18.1%)、シンガポールが58億609万ドル(12.0%)、日本が54億9,021万ドル(11.3%)と続いた。これら主要国・地域への投資拡大には、台湾積体電路製造(TSMC)の大型プロジェクトが大きく寄与している。TSMCはアリゾナ州工場への約125億ドルの増資や、日本熊本県でのJASMプロジェクトへの約53億ドルの増資など、大規模な投資を行った。また、シンガポールでは鴻海精密工業(フォックスコン)が子会社に26億ドルを増資するなど、台湾企業による積極的な海外展開が目立つ。

このような動きについて、台湾経済部投資審議司は「台湾企業がグローバルサプライチェーン再編の中で、ビジネスチャンスをつかみ、国際的なキープレーヤーとしての役割を強化している」と分析している。特に半導体や電子機器分野での競争力強化が注目される中、台湾企業は世界市場でその存在感を高めている。

今後も台湾企業による海外投資は拡大すると見られ、多様な市場への進出や新たなビジネスチャンスの創出が期待される。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。
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