台湾の半導体大手TSMCが米国に1000億ドル(約15兆円)の追加投資を行う計画について、同社の魏哲家CEOが6日、台北で記者会見を開き、この投資決定は顧客の需要に基づくものであり、台湾や日本など他地域への投資計画には影響しないと説明した。
魏CEOは、「アメリカの顧客の需要が非常に大きかった」と述べ、米国の生産ラインはすでに今後3年間分が予約で埋まっていると明かした。この状況は、TSMCの米国顧客からの需要の高さを示しており、アップル、AMD、ブロードコム、エヌビディア、クアルコムなどの大手企業が、米国内での生産能力の増強を要請していることが背景にあったと言う。
この投資により、TSMCは、米国アリゾナ州に3つの新しい半導体工場と2つの先進パッケージング施設、さらに研究開発センターを建設する予定だ。
この発表は、3日にトランプ米大統領とTSMCの魏CEOが、ホワイトハウスで共同記者会見を行った際に明らかにされたものだ。トランプ大統領は、この投資により「世界で最も強力なAIチップがアメリカで製造される」と述べ、国内半導体製造の強化を目指す姿勢を示した。
一方、台湾国内では、TSMCの最先端技術が、米国に流出することへの懸念の声も上がっている。これに対し、台湾の頼清徳総統は6日の記者会見で、この投資を「米台関係の歴史的瞬間」と評価し、TSMCの競争力強化につながると強調した。
魏CEOは、台湾国内でも今年、11の新生産ラインを建設する計画があると述べ、米国投資が、台湾での事業展開に影響しないことを強調した。また、日本やドイツでの投資計画にも影響しないことを示す形となり、グローバルな事業展開を継続する方針を示した。
市場調査会社のTrendForceによると、TSMCの米国での生産能力は、2035年までに全体の6%に達する可能性があるが、台湾での生産能力は、80%以上を維持すると予測されている。
この巨額投資は、半導体産業における地政学的リスクの分散や、米国の通商政策への対応という側面も指摘されているが、TSMCは、一貫して顧客需要に基づく経営判断であることを強調している。
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