香港の公務員の間で中国大陸産の飲用水を拒否し、庁舎に香港や日本産の水を自費搬入する動きが広がっている。SNSでも共感の声が相次ぎ、政府調達をめぐる安全意識の差が浮き彫りになった。
香港政府部門の事務所で使用する飲用水の3年間契約は、今年3月に入札が行われ、6月に落札結果が発表された。その結果、一部庁舎では中国本土ブランド「鑫樂(しんらく)」の飲用水が採用された。
しかし、この「鑫樂」は過去に発がん性物質や微生物基準超過が報じられ、3年間で6度も中国官製メディアに名指しされた経歴がある“ブラックリスト常連”のブランドであり、公務員の間に強い不安を広げる要因となった。
香港メディア「香港01」によると、連日ネット通販業者が庁舎に大量の飲用水を搬入しており、香港や日本、タイ産のミネラルウォーターが人気だという。配送員によれば、注文の多くは公務員が自費で行い、同僚と費用を出し合うのが一般的だ。中には、安心と節約のため自宅で湯を沸かして持参する職員もいる。
この事態を受け、香港公務員労働組合連合会の梁籌庭(りょう・ちゅうてい)総幹事は「健康のためには仕方ない。大陸では供給元の飲用水から問題が検出された事例があり、正直みんな怖がっている」と説明した。
この動きは中国本土でも注目され、SNSの検索上位に入った。大陸のネットユーザーからは「杭州の水道水問題を見れば当然」「飲用水は健康に直結する、妥協できない」といった声が相次いだ。
この出来事は、安心して口にできる水は、自分で選ぶ時代になっていることを静かに物語っている。

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