台湾で中国スパイ急増 1年で5倍超

2025/11/20 更新: 2025/11/20

台湾で中国共産党(中共)による浸透・スパイ活動が急激に増えている。2022年には関連事件で起訴されたのは約28人だったが、2023年には168人と、およそ5倍以上に跳ね上がった。これは台湾の法務部(司法省に相当)のデータに基づく数字で、11月16日に台湾の大陸委員会が公表した。

こうした事態を受け、頼清徳(らい・せいとく)政権は中共の隠密活動を徹底的に摘発する姿勢を強めている。最新の事件として、11月17日に台湾高等検察署が発表した国家安全事件がある。中国国籍の男が中国軍の指示を受け、台湾内でスパイ網を構築していたとして起訴されたのだ。

中共はこれまで一度も台湾を統治したことはないが、台湾を自国の領土だと主張し、必要なら武力ででも奪うと公言している。

台北地方法院の許凱傑裁判官は、中共が台湾の2300万人の国民に影響を及ぼすために使っている主な手口を5つ挙げている。その主なものは以下の通りだ。

  • 軍関係者を主な標的にした情報収集活動
  • 同郷会や同窓会、中国へのツアーなどを利用した地域社会への浸透
  • 選挙への介入
  • 中国資本の企業と台湾企業との提携を通じて核心技術を盗む
  • 台湾の政党に工作員を送り込み、社会の分断を図る

最新のスパイ事件の詳細

11月18日、中国国籍の男(丁という姓のみ公表)と、台湾の現役・退役軍人6人が中共のためにスパイ行為を行ったとして起訴された。

検察によると、この丁という男は香港の居住権を持ち、ビジネスや観光を名目に何度も台湾を訪れ、防衛・軍事・政府の機密情報を収集するネットワークを築いていた。活動はすべて中国軍の直接の指示によるものだったという。

丁は最初に台湾人4人(うち退役軍人2人)を抱き込み、彼らを通じてさらに現役軍人4人を加えた。これによりスパイ網は計9人規模に拡大した。

特に悪質なのは、丁が現役将校に対して「将来、台湾海峡で有事になったら部下を率いて抵抗しないよう説得せよ」と指示していた点だ。これは実質的に「降伏を促す」工作である。

この事件では関係者9人のうち2人がすでに死亡しており、残る7人(丁を含む)は現在も拘束されている。捜査は7月24日に始まった。

丁ら7人は国家安全法、機密保護法、軍刑法違反で起訴されており、検察は重い刑を求刑する方針だ。さらに丁と王、陳の3人はマネーロンダリングと銀行法違反の別件でも起訴されている。

国防部の対応

台湾国防部によると、この事件は内部監察部門(政治作戦局)が楊という少校の不審な行動を察知したことがきっかけだった。関係者7人のうち2人は現役将校だったという。

国防部は声明で次のように述べている。

「中共は台湾への浸透と破壊活動を一度もやめたことがない。現在も島内で積極的に組織を構築している」

「ごく少数の将兵が忠誠の義務を裏切った売国行為を、断固として糾弾する」

今後、対諜報訓練を強化し、全軍人のセキュリティ意識を高めるとしている。

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