タイ当局は2月13日、藤沼登夢容疑者(29)を拘束した。同容疑者は、日本の高校生を騙してミャンマーに連れて行き、特殊詐欺に加担させた疑いが持たれている。
高校生を詐欺団地に誘拐か
タイ警察によれば、藤沼容疑者はオンラインゲームを通じて日本の高校生と接触し、タイ経由でミャンマーに渡航するよう誘導した。その後、ミャンマー東部のミャワディにある詐欺拠点で特殊詐欺を行わせていたとされる。藤沼容疑者には複数の容疑で逮捕状が出ており、今後、日本に強制送還される見通しである。高校生は先月、無事保護され、既に日本へ帰国している。
ミャワディと詐欺団地の実態
ミャワディはミャンマー東部に位置し、タイとの国境を川で隔てる地域である。ここには30を超える詐欺団地が集まり、恋愛詐欺や投資詐欺、違法賭博を行うオンライン詐欺の拠点として知られている。
目撃者によれば、これらの詐欺団地では、詐欺師として稼げない被害者が臓器摘出されるという。
先月、中国の若手俳優・王星氏がこの地域で誘拐され、詐欺団地で働かされていた事件が国際的に注目を集めた。同氏が監禁されていた「KK園区」には、日本人20人以上が監禁されている可能性も報じられている。
背後の中共の黒い手
国連の報告によれば、東南アジアではミャンマーで少なくとも12万人、カンボジアで約10万人が詐欺行為に強制的に従事させられている。また、ミャンマーの詐欺団地は中国系犯罪組織が関与しており、21か国から6千人以上が人身売買の被害者として監禁されているとされる。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、このような詐欺行為が世界中で数百億ドルの被害をもたらしていると指摘している。特に「豚の屠殺詐欺」と呼ばれる手法では、被害者との信頼関係を構築し、多額の資金を騙し取るケースが多い。
1月13日、ミャンマー在住の華僑である李騰衝氏はラジオ・フリー・アジアの取材に応じ、ミャワディーの詐欺団地の投資家の多くが中国国有企業であり、背後には中国共産党が関与していると指摘している。これらの詐欺団地の実質的なオーナーは、中国共産党の統一戦線工作部に属する商工会の会長たちであり、彼らが詐欺団地を支配しているため、摘発が進まない状況にあるという。
タイ政府と軍の対策
タイ政府は2月5日から、詐欺団地への対策としてタイ・ミャンマー国境地帯の一部地域で電力、インターネット、燃料の供給を停止した。対象地域にはミャワディやタチレクが含まれる。ただし、停止措置後、影響を受けた一部地域では隣国ラオスからの電力供給を受けて迅速に対応しているとの報告もある。
AP通信によると、タイ軍は13日、人身売買の被害者とみられる約260人をミャンマーから救出したと発表している。これらの被害者は本国へ送還される予定である。
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