中国共産党のトップである習近平が、大幅に権力を削がれ、政権運営が極めて困難な状況に陥っているとの観測が広がっている。昨年から、習の権力縮小や軍の統制喪失が取り沙汰されてきたが、時事評論家の蔡慎坤(さい・しんこん)氏によれば、すでに実質的に権力を失い、退任は公式発表を待つのみの状態であるという。現在、中国共産党(中共)の権力は「三人の長老」に移り、軍の実権は張又侠が掌握しているとの見方が浮上している。
昨年7月の中共第20回三中全会以降、習の健康問題、軍の実権喪失、党内での影響力低下といった報道が相次ぎ、北戴河会議では党の長老たちから厳しい叱責を受けたとの情報も広がった。これにより、習の求心力低下がますます露呈している。
蔡慎坤氏は2月23日、自身の番組で、これまでとは異なる見解を示した。蔡氏はこれまで「習近平は依然として実権を握っている」との立場を取っていたが、22日に国内の知人からの情報を得たことで認識を大きく改めたという。
蔡氏によると、この知人は中共の指導層や元指導層の家族と深い関係を持つ中国で影響力のある人物であり、1時間半にわたる電話で詳細な情報を提供したという。
知人の話によれば、習の権力は昨年の延安での「全軍政治工作会議」以降、急速に縮小し、現在は実質的に無力化している。
習近平の退任は公式発表を待つだけで、長くは引き延ばされないという。四中全会で発表される可能性が高く、遅くとも来年までには退任する。
蔡氏は、相手は上述の情報をかなり確信していると明かした。
また、軍の実権は完全に張又侠(ちょう・ゆうきょう)に移っており、習は「名ばかりの中央軍事委員会主席」に過ぎないと指摘。さらに、現在の党の実権は「1942年生まれの三人の長老」に戻っていると述べた。
蔡氏は具体的な人物名の言及は避けた。
習が権力を喪失した背景として、この知人は以下の点を挙げた。
「習近平は10年以上にわたり、あらゆる政治勢力と対立し、紅二代・紅三代(共産党初期幹部の子孫)や既得権益層の利益を脅かした。その結果、三中全会の際に党内で『習の独裁体制はこれ以上継続させてはいけない』との共通認識が形成された」。
さらに、「このままでは共産党全体が崩壊の危機に直面する」との危機感が党内で共有され、習を排除する方針が決定されたと説明した。
党内の安定化を図るため、三人の長老が暫定的に指導権を握ることになった。
また、党内では「習の後継政権が既得権益層に支配されることを懸念する声が強い」という。特に、改革開放以来、既得権益層が海外に持ち出した資産は約30兆ドル(約4500兆円)にも上った。近年、彼らはさまざまな手法を使って、特にウォール街の大手金融資本と密接に連携することで、資産総額は60兆ドルを超える規模に膨れ上がっている。
蔡氏は、これまで習の権力が維持されているとの立場を取っていたが、今回の情報提供を受け、「習の支配体制はすでに崩壊している可能性が高い」と考えを改めた。
ただし、蔡氏自身も「この情報を裏付ける明確な証拠はない」とし、慎重な姿勢を示している。
一方で、蔡慎坤氏は、「中共軍が最近発表した通知では、『引き続き習近平のもとに団結し、その軍事思想を実行する』と強調されているが、これをどう解釈すべきか?」と知人に問いかけた。相手は「そんな建前や宣伝に惑わされるな。そうした発表は何の意味も持たない」と答えた。
蔡氏自身と家族も、習に関する発言を続けていることで公安や国安当局から強い圧力を受けていると明かした。関係者からは「習近平に関する話題は、習近平の地位は非常に安定しているという内容であっても話すな」との伝言があったという。
習近平政権下で経済の低迷や党内対立が深刻化しており、過去2年間で習が登用した高官の失脚が相次いでいる。特に軍と外交部門では大規模な粛清が行われた。
・国防部長:李尚福(り・しょうふく)
・外交部長:秦剛(しん・ごう)
・中央軍事委員会政治工作部主任:苗華(びょう・か)
さらに、軍上層部の幹部も10人以上が更迭され、その中にはロケット軍や空軍の主要指導者も含まれる。
また、昨年9月30日に行われた中共建政75周年の招待式典では、李瑞環(り・ずいかん)や温家宝(おん・かほう)など15人の元政治局常委が出席。この場で習は「党の権威と団結を堅持する」と強調したが、これは党内の権力闘争を反映しているとの見方が強い。
政治評論家の杜政(と・せい)氏は台湾紙「上報」に寄稿し、共産党と習はすでに体制内外から攻撃の対象となっており、「反習・反共」が中国国内の主流民意となっていると述べた。
最近も、習近平は「親しい人物」の支援によって権力を固めてきたため、長期的な統治を支える制度的な保障がなく、むしろ独裁的な個人支配が強まってきたと指摘した。
また、「習の親しい人物は3年以内にほぼ一掃され、後任者との信頼関係を築けていない。彼の退陣カウントダウンが始まっている」と指摘されている。
杜氏は、「習の失脚と中国共産党政権の崩壊は同時に進行するとみており、その背景には「共産主義がすでに破綻したイデオロギーであり、政権交代は不可避である」と認識している。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。