米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の最新報告によると、中国企業「ファーウェイ(華為)」はペーパーカンパニーを駆使し、大量のTSMC製チップを調達していると言う。報告は、アメリカ政府に対し、ホワイトリスト企業(取引やアプローチを検討中の企業の情報を収集して作成するリストを指す)が代理役(白手套)となり、禁輸措置を巧妙に回避する動きに、警戒するよう警告している。専門家は、トランプ政権が今後、中共への圧力を一層強化する可能性があると見込んでいる。
昨年ファーウェイが発表したプロセッサーチップ「Ascend(昇騰)910B」は、中芯国際(SMIC)が製造したとされていたが、CSISの最新報告によると、実際にはファーウェイがペーパーカンパニーを通じてTSMCに発注し、米国の制裁を巧妙に回避していたと言う。
情報筋によると、ファーウェイは、現在200万個以上の910Bプロセッサー用ロジックダイ(裸晶)を保有しており、この数量は、次世代プロセッサー「Ascend 910C」の生産に十分な量だ。
智璞産業トレンド研究所の林偉智執行副総経理は、「これまでのチップ禁輸措置は、一定の効果を上げてきたものの、どんな網にも抜け穴は存在する」と指摘し、聚芯資本管理パートナーの陳慧明氏も、「その通りである。さらにファーウェイだけでなく、NVIDIA(エヌビディア)のAIチップも中国本土に流れており、その量は同社の売上高の2割以上に達すると推測される」と述べた。
ファーウェイはAIチップだけでなく、1年以上の生産に、十分な高帯域幅メモリ(HBM)を確保しており、その大部分は韓国のサムスン電子から調達してきたと言う。
さらに、業界ではNVIDIA製H100チップが、第三国を経由して、中国に流入しているとの情報が広がっており、これは過去の米国のAI半導体輸出規制に抜け穴があることを示した。
CSISの報告書は、ホワイトリスト企業が巨額の利益に誘惑され、ファーウェイ向けにTSMCに発注する代理役を務める可能性があると警告している。
また、ファーウェイは、同様の手法でサムスン電子やインテルからも調達する可能性があるとした。
林偉智氏は、「このため、TSMCに発注するホワイトリスト企業に対して、その資金源や企業構成を厳しく審査し、中国企業、特にファーウェイへの規制を一層強化する必要がある」と述べた。
CSISの報告によると、AI分野において、米国は、依然として中国に対して優位性を保っているが、その差は縮小しており、積極的な輸出規制を講じても、リード期間は1〜2年未満になる可能性があり、また、輸出規制が不十分に実施されていることやチップ密輸に対する容認姿勢から、「米国には、AI競争で浪費できる時間はもう残されていない」とCSISは警告している。
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