米モルガン・スタンレー 中国成長率 4%割れと予測  

2025/03/13 更新: 2025/03/13

中国共産党(中共)政府は2025年のGDP成長率目標を5%に設定したが、年初2か月の貿易や社会融資の指標は低迷。消費支援策も十分とは言えず、経済学者の間では「5%成長の目標は実現困難」との見方が広がっている。

モルガン・スタンレー 中国の第2四半期GDP成長率は4%以下に減速か

投資銀行大手のモルガン・スタンレーは最新の報告書で、中国経済の成長率が2025年第2四半期以降に再び鈍化すると予測。名目GDPの前年比成長率が4%を下回る可能性があると指摘した。その要因として、アメリカの対中関税の影響、不振が続く不動産市場、低インフレ環境を挙げた。

中共の李強首相は2025年の政府活動報告で、実質GDP成長率目標を5%、インフレ目標を2%と発表。これは名目GDP成長率7%を想定していることを意味する。

一方、中国共産党の機関紙・経済日報は12日、「外部環境はより複雑で厳しくなっており、国内の有効需要も不足している」とし、5%成長の達成は容易ではないと認めている。

中共の金融緩和策 技術革新を優先、消費支援は限定的

モルガン・スタンレーの中国チーフエコノミストである邢自強氏は報告書で、「中共政府の金融緩和策は依然として穏やかであり、供給側支援に重点を置いている」と指摘した。中共全国人民代表大会(全人代)で発表された2兆元規模の財政拡張策のうち、消費関連の支出は約4分の1にとどまり、政府は技術革新分野への支援を優先している。この政策の方向性について、邢氏は「限定的な景気刺激策、技術革新への重点支援」と評した。

李強の政府活動報告では、「消費の活性化」「内需拡大」が2025年の10大重点課題のトップに挙げられた。しかし、具体的な施策としては超長期特別国債3千億元(約6兆円)を用いた耐久消費財の買い替え支援のみであり、年金や医療・健康など民生関連の支出には実質的な新規対策が盛り込まれなかった。

また、人民元建て貸出も大幅に減少している。人民元貸出は、経済の活発度を示す重要な金融指標の一つとされている。

3月11日に財新傳媒が国内外の14機関を対象に行った調査によると、2025年2月の人民元新規貸出額の予測平均は1兆3400億元で、前年同月(1兆4500億元)から約7%減少する見込みとなっている。

技術革新を優先、消費支援は限定的

中国経済を支える柱の一つである貿易も、期待を下回る結果となった。中国税関総署の最新統計によると、2025年1~2月の輸出入総額は6兆5400億元で、前年同期比1.2%減少した。

  • 輸出額は3兆8800億元で3.4%増加したものの、専門家の予測(5%増)の半分以下にとどまった。
  • 輸入額は2兆6600億元で、前年同期比7.3%減となり、予想とは逆の結果となった。

また、主要な資源・原材料の輸入も軒並み減少しており、中国国内の消費および生産活動の低迷が顕著になっている。

  • 鉄鉱石 1.91億トン(8.4%減)
  • 原油 8385.4万トン(5%減)
  • 天然ガス 2031.1万トン(7.7%減)
  • 精製石油製品 634.3万トン(16.2%減)
  • 未加工銅および銅製品 83.7万トン(7.2%減)

特に銅は、景気の先行指標として世界の経済動向を反映する重要な金属とされる。公開データによれば、中国は世界の銅需要の50~60%を占めており、この輸入減少は経済活動の鈍化を示唆している。

米中関税リスクの高まり

米中貿易摩擦の激化で、中国の輸出に対する関税リスクがさらに高まっている。邢自強氏は、関税措置は予想より早く発動されるため、米中が第一段階の貿易協定のような合意に戻ることが一層難しくなっていると指摘した。

また、今後の重要な2つのタイミングについて言及した。

  1. 4月1日 米政府が「アメリカファースト貿易政策」に基づく調査結果を発表する日。
  2. 4月5日 アメリカが中国系動画共有アプリTikTokへの禁止措置を発動する期限。

また、アメリカは中国以外の貿易相手国にも対等な関税措置を適用する可能性があり、これが世界の貿易、企業信頼感、資本投資を通じて間接的に中国経済の成長に影響を及ぼすリスクも指摘されている。

専門家 5%のGDP成長目標は甘い見通し

経済学者のスティーブ・H・ハンケ氏とカレブ・ホフマン氏は、3月11日にフォーチュン誌に共同寄稿し、中国人民銀行の金融政策では、5%成長を実現するのは難しいとの見解を示した。

二人は貨幣数量説(QTM)の視点から、これまでの景気刺激策は、「実際には期待されたほどの効果を上げていない」と分析。その理由として、M2(広義貨幣供給量)の成長率が、政府の掲げる経済成長とインフレ目標に見合っていないことを挙げている。

彼らの試算によると、2025年にGDP成長率5%を達成するには、M2の成長率が10%に達する必要がある。しかし、現在のM2成長率は7.02%にとどまっており、このままでは目標達成は困難と見られる。

記事では、「2025年前半の数か月で急速に貨幣供給を増やさなければ、7%の名目GDP成長は甘い見通しだろう」と警告されている。

また、今の状況を「ガソリンが7.44マイル分しかないのに、10マイル先まで走ろうとするようなもの」と表現し、中国経済の成長余力が不足していることを強調した。

楊旭
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