トランプ政権は市場の変動より実体経済に注力=ベッセント財務長官

2025/03/15 更新: 2025/03/16

トランプ政権は、金融市場の短期的な変動よりも、実体経済の強化を重視していると、スコット・ベッセント財務長官が明らかにした。

3月13日、CNBCの経済番組「Squawk Box」に出演したベッセント氏は、トランプ氏とその経済チームは市場の動向を注視しているものの、政権の最優先課題はウォール街と米国民の双方にとって「長期的な経済成長を実現することである」と述べた。

「私たちは実体経済に注力している。市場の長期的な成長と、アメリカ国民にとっての持続的な利益を生み出せる環境を構築できるだろうか」と述べ、「3週間程度の小さな変動に過度に反応する必要はない」と強調した。

市場の動向とトランプ政権の経済政策

ベッセント氏は、長年ヘッジファンド業界で経験を積んだ金融の専門家であり、トランプ政権が「実質所得の増加、雇用創出、資産価値の向上を実現するための政策基盤の整備に取り組んでいる」と強調した。

アメリカの株式市場は今月に入って大幅な下落を記録し、時価総額で数兆ドルが消失している。

3月13日の取引では、主要株価指数がさらに下落し、ナスダック総合指数とダウ工業株30種平均はともに約1%下落した。

金融市場では、インフレ懸念の高まりや、関税措置による景気後退リスクへの不安が投資家心理を圧迫している。

それでも、トランプ大統領はこの市場の動揺に気にせず、3月11日の記者会見で「市場は上がることもあれば下がることもある。しかし、我々には国の再建という使命がある」と述べた。

財政の正常化が必要—景気後退の可能性は否定

先週、ベッセント氏は、米国はこれまで政府支出に依存してきたため、今後は財政の正常化が必要になると指摘した。

3月13日のインタビューでは、これは景気後退を意味するものではないと明言した。

「まったくそうではない。必ずしもそうなるわけではなく、どれだけ速くバトンが引き継がれるかにかかっている。我々の目標は、円滑な移行を実現することだ」と説明した。

また、現在の政府支出の水準は「持続不可能だ」と警鐘を鳴らした。

米財政赤字が過去最高—アメリカは歳入の問題ではなく、支出の問題を抱えている

財務省の報告書によると、米政府の2月の支出は6030億ドルに達し、一方の歳入は2960億ドルにとどまった。

主な歳出項目は以下の通り。

社会保障費 1290億ドル
所得保障 1050億ドル
医療関連(メディケア含む) 1520億ドル
国債の利払い 740億ドル

2024会計年度の10月〜2月の財政赤字は、過去最高の1兆1400億ドルに達した。

ベッセント氏はこの問題について、次のように指摘した。

「これには二つの側面がある。経済成長を促進し、歳入基盤を拡大しつつ、支出を抑制することだ。アメリカは歳入(不足)の問題を抱えているわけではない。(過剰な)支出の問題がある」

インフレ鈍化の兆し—市場の安定につながるか

ベッセント氏は、最近のインフレデータを受けて市場は安定する可能性があると考えている。

「おそらくインフレは抑制されつつあり、市場もそれに対して自信を持ち始めるだろう」

2月の消費者物価指数の前年同月比上昇率は2.8%と、1月の3.0%から減速。

また、生産者物価指数はゼロ%で横ばい、エネルギー食品を除いたコアPPIは前月比0.1%下落した。

インフレが落ち着けば、市場の信頼回復につながる可能性があると述べた。

トランプ政権の関税政策と欧州との対立

ホワイトハウス前でベッセント氏は記者団に対し、トランプ大統領の関税政策を擁護した。

「私たちはアメリカの労働者を守りたい。こうした貿易協定の多くは公平ではなかった」

この発言の直前、トランプ大統領はフランスを含むEU諸国のアルコール製品に対し、200%の関税を課すと警告した。

これは、EUが米国産ウイスキーを含む幅広い製品に輸入税を再導入したことに対する報復措置とみられる。

トランプ氏は、「これはアメリカのワインやシャンパン産業にとって追い風になる」と投稿し、関税措置の正当性を主張した。

政府閉鎖のリスク—民主党は混乱を招こうとしている

一方、ベッセント氏は、政府閉鎖はアメリカ経済に悪影響を及ぼすとして警告した。

下院では今週、連邦政府機関への資金提供を9月まで延長する予算延長案が217対213で可決されたが、上院では否決される可能性が高い。

「民主党の意図は不明だが、もし政府閉鎖が発生すれば、その責任は民主党にあるだろう」

民主党のチャックシューマー上院院内総務は3月12日、つなぎ予算案を拒否する意向を表明し、代わりに30日間の延長を提案。

シューマー氏は上院で、政府運営の資金確保は超党派の努力であるべきだが、共和党は民主党との協議なしに法案を作成したため、上院では可決に必要な票を確保できていないと述べた。

ベッセント氏は、今後数日間の米経済にとって最も重要な問題は政府閉鎖を回避するためのつなぎ予算案であり、関税ではないと指摘し、民主党は「意図的に政府閉鎖を引き起こそうとしている」と示唆した。

 

(その後13日、シューマー院内総務はトランプ政権が求める「つなぎ予算案」に賛成する意向を明らかにした)

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。