トランプ氏 医療貯蓄口座(HSA)改正を支持

2026/03/22 更新: 2026/03/22

医療貯蓄口座(HSA、Health Savings Account)は2003年から存在する制度だが、利用できるアメリカ人は約17%にとどまっている。現在、議会の一部では、この非課税口座が、高騰を続ける米国の医療費を抑制する鍵になるとの見方が出ている。医療費の上昇を受け、トランプ米大統領と数名の共和党議員は、選択肢の拡大、競争の促進、そして納税者の負担軽減を目的として、HSAの利用拡大を提案した。

以下に、これらの口座の概要と提案されている変更点についてまとめる。

医療費のための非課税措置

HSAは個人が所有するが、銀行や信用組合、保険会社によって管理される。個人または雇用主が拠出でき、その資金は適格な医療費に充当するために引き出すことが可能だ。

拠出限度額は、個人で年間最大4300ドル、家族で最大8550ドルとなっている。55歳以上であれば、さらに1000ドルの追加拠出が可能だ。

この資金には「3重の税制優遇」がある。つまり、口座への拠出金は非課税であり、預金中に発生した利息も課税されず、適格な医療費として引き出す際も税金がかからない。

また、残高は翌年以降に繰り越すことができ、資金を投資に回すことも可能だ。転職しても口座は個人に紐付いたまま維持される。

制限事項

HSAにはいくつかの欠点もある。一つは、HSAを利用するには、「免責金額(自己負担額)が高めに設定されている医療保険」に加入していることが条件となる。

2026年の基準では、個人で少なくとも1700ドル、家族で3400ドルの自己負担額(免責額)が設定されている必要がある。また、自己負担上限額は個人で8500ドル、家族で1万7千ドル以上でなければならない。

「One Big Beautiful Bill(ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル)」という法案によって、HSAを利用できる対象が広がった。具体的には、オバマケア(医療保険制度改革)の中でも、月々の保険料が最も安い「ブロンズプラン」や、大きな事故・病気のみをカバーする「カタストロフィック(激甚災害型)プラン」の加入者もHSAを持てるようになった。しかし、メディケイドやメディケアの利用者、および民間保険加入者の約70%は依然として利用できない。

また、HSAを保険料の支払いに充てることはできない。適格な医療費以外のために引き出した場合は、所得税に加えて20%の罰金が科せられる。

現在、オバマケア利用者のうち約1千万人がHSAの利用資格を持つ。民間保険加入者ではさらに4500万人が対象だ。2024年末時点で、約3900万の口座が存在している。

新たな用途の可能性

トランプ氏と多くの議員は、昨年12月31日に期限を迎えたオバマケアの補助金増額に関する議論の中で、HSAの新しい活用法を提案した。

これらの提案の多くは、オバマケアの補助金を保険会社に直接支払うのではなく、HSAやそれに類似した口座に振り込むというものだ。医療費支出に対するコントロール権を、より個人に持たせることが狙いである。

トランプ氏は自身の「グレート・ヘルスケア・プラン」の一環として、補助金を消費者に直接送ることを提案したが、HSAという名称を具体的に挙げることはしなかった。

ロジャー・マーシャル上院議員(共和党、カンザス州)も同様の案を提示している。マーシャル氏の案では、強姦、近親相姦、または母親の生命が危険な場合を除き、オバマケアの補助金を中絶サービスに使用することを禁じている。

リック・スコット上院議員は、さらに「自己負担軽減(CSR、Cost Sharing Reductions)」という仕組みをサポートするための補助金を盛り込んだ。

CSRとは、低所得の加入者が医療を受けやすくするために、窓口での支払い(免責額や自己負担上限)を安く抑えてあげる制度だ。

しかし、現在この「安くしてあげた分」のコストを、国は保険会社に払い戻していない。そのため、保険会社は自腹でその損失を埋める必要があり、結果として「シルバープラン」などの保険料を大幅に値上げして帳尻を合わせている。スコット氏の案は、このひずみを解消するためにHSAを活用しようというものだ。

マイク・クレイポ上院議員(共和党、アイダホ州)とビル・カシディ上院議員(共和党、ルイジアナ州)も、補助金を個人のHSAに振り向ける同様の提案を行っている。

他の議員らは、オバマケア以外の利用者に対するHSAの拡大を提案した。チップ・ロイ下院議員(共和党、テキサス州)とテッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州)は、メディケイドなどの政府プログラム利用者への対象拡大、年間拠出限度額の引き上げ、適格となる医療サービスの範囲拡大、および不適切利用に対する重いペナルティ(追加の税金)の軽減を提案している。

ランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州)らも、同様の資格拡大案を提出している。

賛否両論

HSAの利用拡大を支持する側は、競争の促進と事務費の削減により、主にコストが低下すると主張している。

しかし、これらの提案のより重要な目的は、医療費の管理権を連邦政府や保険会社から個人へと移すことにあるようだ。

スコット氏は11月25日の記者会見で、「アメリカ人は政府よりも、常に家族にとってより良い選択をするものだ」と述べた。

トランプ氏も1月15日に、自身のヘルスケアプランについて「大手保険会社に納税者から拠出された数十億ドルの追加補助金を送るのを止め、その金を対象となるアメリカ人に直接送るものだ」と記している。

クルーズ氏は2025年1月に、「私はコントロール権をワシントンの官僚から、患者と医師の手に取り戻すために戦っている」と表明した。

「ヘリテージ・アクション」や「税制改革を求めるアメリカ人(ATR)」などの保守団体も、HSAの拡大を支持している。

一方で、この分析に反対するアナリストや議員もいる。

リチャード・ニール下院議員(民主党、マサチューセッツ州)は2025年11月の声明で、HSAへの資金提供は保険を買いやすくする助けにはほとんどならず、「富裕層に対するさらなる減税に過ぎない」と批判した。

進歩主義的な政策研究所であるアメリカ進歩センター(CAP)は、HSAは富裕層に不釣り合いな利益をもたらすと指摘している。

同団体のウェブサイトに掲載された記事の中で、マデリン・シェパード氏らは「共和党の上院案は連邦のリソースをより豊かな層へと振り向けるものであり、保険を失うリスクが最も高い人々を、最も少ない支援で放置することになる」と述べている。

提案の現状

クレイポ・カシディ案は12月に上院で進展せず、他の提案も採決には至っていない。

トランプ氏は議会に対し、「グレート・ヘルスケア・プラン」の法制化を求めている。下院共和党の一部は、同プランのうち処方薬の価格を「世界で最も安い国と同等まで引き下げる」というルールの法案化に向けて、ホワイトハウスと協力している。

現時点では、資金を伴うHSAの拡充や、それに類する仕組みが本格的に検討されているという兆候はない。

エポックタイムズの政治記者
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