パブリックコメントの応募件数が急増 政策に国民の声が反映されているのか

2025/03/25 更新: 2025/03/25

政府が政策や規則の策定過程で国民から意見を募る「パブリックコメント」制度において、応募件数が急増し、職員の負担が深刻化している。特に最近では、一部の案件で1万件を超える意見が寄せられる事態となり、現場の対応能力を超える状況だ。総務省はAIを活用して対応する模様。NHKなどが伝えた。

パブリックコメント制度は、2005年に行政手続法に基づき正式に導入された。政策案や規制案を事前に公開し、国民の意見を広く募集することで政策決定の透明性や公正性を確保することを目的としている。

近年ではSNSなどが発達し、意見提出方法や文案が共有されるケースが増え、一部では組織的な動員も確認されている。これにより応募件数が急増し、本来の「民意を反映する」という目的がかすむ懸念も指摘されている。人員不足や業務量の偏りも問題視されており、特に若手職員への負担が顕著だという。

日本経済新聞によると、複数の省庁の担当者から「異常件数」になったパブコメについて「SNS上で見られる文案と明らかに関連する意見が多い」との声があがり「趣旨にそぐわない匿名・偽名による連続投稿や大量投稿が目立つ」という。 

しかし、多くの意見が寄せられることについては国民の関心の高さを示す側面もあり、国民の声を集めるという点では制度が機能しているといえる。ほぼ同じ内容の意見が大量に寄せられるケースも多いことから、意見を整理する際に、AIを活用することなどが検討されているという。

令和6年10月に調査された内閣府の社会意識に関する世論調査では、国の政策に国民の考えや意見がどの程度反映されていると思うかという質問に対して、「反映されていない」と「あまり反映されていない」と答えた人の割合が73.6%という高い数値を出している。一方で「反映されている」とする人の割合は24.1%という結果だった。

また国の政策に民意が「ある程度反映されている」「あまり反映されていない」「ほとんど反映されていない」と答えた人に、どうすればよりよく反映されるようになると思うか聞いたところ、「政治家が国民の声をよく聞く」と答えた人が29.0%「政府が世論をよく聞く」と答えた人が14.1%と、世論や国民の声を聞いてほしいという意見は43.1%と大きな割合を占めた。

こうした現状を改善する意味でも、パブリックコメント制度によって政策決定の透明性や公正性を確保することがより求められてきている。

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