東京や大阪などの都市部において、偽基地局を用いた携帯電話詐欺が急増している。フィッシングSMSや個人情報漏洩の被害も広がっており、早急な対策が必要な状況である。
4月には、東京・大阪・京都など全国の都市部で「偽の携帯電話基地局(偽基地局)」が出現し、社会問題として注目を集めている。偽基地局とは、正規の携帯電話基地局を偽装した装置であり、「IMSIキャッチャー(携帯電話の通信を傍受し、携帯電話ユーザーの位置情報を追跡するために使用される電話盗聴装置)」とも呼ばれる。これにより、周囲のスマートフォンや携帯電話が本物の基地局と誤認して接続し、さまざまな被害が発生している。
被害の代表例として、偽基地局を介してフィッシング詐欺目的のSMS(ショートメッセージ)が強制的に送信されるケースが多い。特に「クレジットカードが使えなくなった」といった偽の通知文と共に、特定のURLへのアクセスを促す内容が多く、アクセス後に個人情報を窃取される危険がある。
また、偽基地局は既に日本国内で商用利用が終了したGSM(2G)方式の強力な電波を発信し、正規の通信を妨害(ジャミング)することで端末を一時的に圏外状態に置き、再接続時に偽基地局へ誘導する手法が確認されている。
さらに、偽基地局は端末のIMSI(加入者識別番号)やIMEI(端末識別番号)などの機器情報を不正に取得しており、盗まれた機器情報が盗聴や位置情報の追跡などに悪用される恐れもある。特に、古い機種を使用している利用者にとっては、被害リスクが高まっている。
今回の事案では、中国の大手通信キャリア(China Mobile、China Telecom、China Unicom)を装ったネットワーク名が端末に表示されたケースや、簡体字中国語で書かれたフィッシングSMSの送信が確認されており、訪日外国人観光客を主な標的とする詐欺の可能性も浮上している。
X(旧Twitter)では、ユーザーが銀座・大阪・渋谷などの繁華街を歩いている際に、日本国内では通常使用されていないGSM(2G)方式の強力な電波を検出したとの報告が複数寄せられている。端末の画面にはNTTドコモのネットワークコード(PLMN 440/10)が表示されたものの、実際にはドコモの通信が圏外となり、異常に強い信号(-47dBm)が観測されたという。また、Band3(1.7GHz帯)以外のドコモ回線が妨害され、通信不能となる現象も報告されている。
具体的な動きとして、街中で基地局設備を搭載した車両の目撃情報があり、移動式の発信源が使用されている可能性が高い。加えて、強力な電波の検出が特定の場所や時間帯に限定されていることから、発信源は固定施設ではなく車両などの可搬型装置であると推測される。
総務省および携帯電話各社は、違法電波の発信や通信障害、個人情報窃取の危険性を重視し、調査と対策に乗り出している。しかしながら、スマートフォンは自動的に最も強い電波に接続する仕様となっているため、一般利用者が偽基地局への接続を事前に防ぐことは困難である。したがって、最新機種の利用や、不審なSMSに含まれるURLを不用意に開かないなど、自衛的な対策の徹底が求められる。
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