中国では、国家機関による大規模な監視と個人情報の収集が進む一方で、腐敗による情報漏洩が常態化し、今回の事件は、公安と闇市場が癒着し、国民のプライバシーが危機にさらされている実態を浮き彫りにした。
個人情報の保護が叫ばれる中、中国社会では、むしろ個人情報が金儲けの手段に成り果てている現実がある。
闇市場の実態
中国検索エンジン最大手の「百度(バイドゥ)」の副総裁・謝広軍氏の娘による「開盒(他人の個人情報の暴露)」騒動が大きな波紋を呼んでいる。
そうしたなか、同国官製メディア「南方都市報(3月19日付)」は「ネット上から個人情報を容易に買える」と、その闇を暴く調査報道を行い、メディア記者が、同僚の了承を得て、その同僚の個人情報(戸籍などを記載)を「業者」から300元(約6千円)で購入したのだ。
さらに、複数の「業者」への取材により、誰でも容易に個人情報を金で買えることや、個人情報の出所が、公安であることを突き止めたという。
以下がその「業者」から記者にあてたメッセージの一部邦訳となる。
「個人情報は、公安機構からもらうのさ。でも、いまは向こうからまだ返事がないからもう少し待っててくれ。うちは公安と協力関係にあるから、ほかとは違うんだ。情報はリアルタイムで入手しているし、情報の正確さを保障する。300元のうち、240元は公安の取り分で残りはうちがもらうことになっている」

SNS
小紅書や微博といった中国のSNSでは、「開盒」や「人肉」(いずれも個人情報暴露の意)といったキーワードで検索すると、情報売買の広告などが散見される。
広告には隠語が使われており、たとえば、「cx」は名前や携帯番号、身分証番号の3点セットのこと。「lm(獵魔の文字)」は戸籍や身分証、学歴、ホテルの宿泊記録、住所、銀行カード情報、ローンの記録、ナンバープレート、資産状況、よく使っているパスワードなど各種詳細な情報を示す。
情報売買の広告には「身分証、メールアドレス、名前、携帯番号、SNSアカウント、企業番号」のうちどれか1点でもわかれば、相手の個人情報を入手できると謡っている。
なかには「公安」「銀行」「刑事捜査機関」「IT企業」などに勤める内部関係者を募集する広告も見られる。「一緒に稼ごう」と呼び掛けている。
このように、中国では個人情報がことごとく闇市場に横流しされている。「金さえ出せばほしい情報が入る」、これではただでさえ監視社会で暮らす国民にとって、「安全」や「安心」はどこにあるというのか。
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