ホワイトハウスのレビット報道官は6月3日の記者会見で、米通商代表部(USTR)が各国に「友好的なリマインダー」を送付し、貿易交渉の締切が迫っていることを通知したと発表した。これはトランプ政権が導入した一律10%の基本関税の猶予期間が7月初旬に終了するのを前に、合意形成を急ぐ動きとみられる。
ロイターによると、アメリカは貿易交渉中の各国に対し、6月4日までに「最良の提案(best offer)」を提示するよう要求しており、交渉の加速を図っている。草案に基づくと、アメリカは非関税障壁の是正策の提示や、アメリカ製の工業製品・農産品の購入約束を求めている。
さらに、デジタル貿易と経済安全保障に関する合意も交渉の焦点となっている。
レビット氏は「トランプ大統領は良い取引を期待しており、その方向に進んでいる」と述べた。
この「最良案」提出の期限は、年初に発表した相互関税の90日間猶予措置が7月初旬に終了するのを前に設けられたもの。トランプ政権は当初、全ての輸入国に対して高関税を課す方針だったが、その後方針を変更。各国に一律10%の暫定関税を適用し、その間に個別の2国間交渉を進める猶予を設けていた。
主要な交渉相手である日本、インド、ベトナムなどと協議を進めているが、これまでに新たな合意が成立したのはイギリスとのみ。米英間では5月に新たな2国間通商協定が結ばれている。
レビット氏は、「ルトニック商務長官およびベッセント財務長官を中心に、アメリカの主要貿易相手国との協議が進行中」と説明した。
2025年1月の就任以来、新たな関税措置と貿易政策の見直しはトランプ政権第2期の象徴的な政策の一つとなっており、中国に対する高関税や、鉄鋼・アルミ・自動車・メキシコおよびカナダ製品への追加課税などがすでに導入されている。
5月には、中国との間で関税率を100%超から10%程度に引き下げる「初期合意」が発表され、長期的な2国間通商合意を視野に入れた交渉を続けている。
なお、こうした関税措置の合法性については、アメリカ内の裁判所で争いが続いている。国際貿易裁判所が5月28日に関税措置を一部無効とする判断を下したが、連邦巡回控訴裁判所が5月29日に執行停止命令(stay)を出し、判断の効力を一時的に停止している。
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