トランプ氏とマスク氏 予算法案めぐり決裂 SNS上で激しい応酬

2025/06/06 更新: 2025/06/06

6月5日、トランプ大統領とイーロン・マスク氏の間の政策をめぐる対立が、公開の衝突にエスカレートした。トランプ氏はホワイトハウスで、かつての盟友であるマスク氏を批判。マスク氏がトランプ氏の看板政策法案を非難したことを受け、「失望した」と述べ、EV税額控除の廃止がマスク氏の批判の背景にあると主張した。

マスク氏は即座に自身のXで反論。一連の投稿で共和党からの離脱や第三の政党設立の可能性を示唆した。トランプ氏は自身のプラットフォーム「Truth Social」で応酬し、マスク氏の企業との政府契約打ち切りを警告した。

両者の対立はオンライン上で急速に過熱し、互いに厳しい批判を繰り広げた。

この公開の対立は、マスク氏が政府効率化省(DOGE)の特別政府職員を退任した数日後に表面化した。両者は退任を記念するホワイトハウスでのイベントで互いを称賛していたが、2024年にトランプ氏がペンシルベニア州バトラーで暗殺未遂事件を生き延びて以来の緊密な関係は、最近の予算法案「One Big Beautiful Bill Act」をめぐる意見の相違で亀裂が入っていた。

法案は、トランプ氏の政策アジェンダを推進・資金提供するものだが、マスク氏や一部の共和党議員は、連邦赤字を増大させる可能性を理由に批判している。一方、トランプ氏と共和党指導部は、法案が経済成長を促し、最終的に赤字を削減すると主張している。

公の決裂

予算案をめぐる意見の相違がある中でも一致した姿勢を保とうとしていたトランプ大統領は、6月5日、ホワイトハウスで記者団に対し、自身の重要法案に対するイーロン・マスク氏の批判に失望の意を示した。「イーロンとは素晴らしい関係だったが、もうそうではないかもしれない」と語った。

マスク氏はXで即座に反論。ペンシルベニア州の激戦区での選挙戦支援がトランプ氏の勝利を決定づけたと主張した。

「私がいなければ、トランプ氏は選挙に敗れ、民主党が下院を支配し、共和党は上院で51対49の僅差にとどまっていただろう。なんという恩知らずだ」とマスク氏は述べた。

マスク氏は2024年の選挙戦でトランプ氏支援に3億ドルを投じたとされる。

トランプ氏は、マスク氏の法案反対が予想外だったと述べ、「彼はこの法案の詳細を誰よりも知っていた」と記者団に語った。

また、2022年のインフレ抑制法に盛り込まれるEV税額控除(7500ドル)の2026年12月廃止や、他のクリーンエネルギー税額控除の段階的廃止が、マスク氏の反対の動機の1つだと示唆した。

「EV補助金の削減を知った途端に反対し始めた」と述べた。

マスク氏はこの主張を否定。「EVや太陽光の補助金削減は問題ではない。石油・ガス業界の補助金が手つかずなのは不公平だが、法案の『山のような無駄な歳出』を削除すべきだ」とXで反論した。

トランプ氏はTruth Socialで、マスク氏が「我慢の限界だ」と述べ、政府効率化省(DOGE)の顧問職を辞めるよう求めたと主張した。マスク氏はこれを否定した。

トランプ氏 マスク氏の契約打ち切りを警告

トランプ氏はさらに、SpaceXの最高経営責任者(CEO)であるマスク氏の政府契約を打ち切る可能性を示唆し、これにより数十億ドルの予算を迅速に節約できると述べた。

「我々の予算で最も簡単に数十億ドルを節約する方法は、イーロンの政府補助金と契約を終了することだ」と投稿した

マスク氏はこれに対し、「SpaceXは直ちにドラゴン宇宙船の運用停止を開始する」とXで応じた。宇宙船「ドラゴン2」は現在、アメリカの宇宙飛行士や物資を国際宇宙ステーション(ISS)に輸送するために最も多く使われている宇宙船の一つであり、米政府はその運用に対してスペースXに報酬を支払っている。

スペースXは民間宇宙企業の先駆けであり、これまでにNASAや国防総省(ペンタゴン)から数百億ドル規模の契約を受けてきた。

法案の赤字影響をめぐる議論

対立の核心は、トランプ氏の法案が連邦赤字に与える影響に関する見解の相違にある。

議会予算局(CBO)は6月4日、この法案が10年間で2.4兆ドルの赤字増を招くと予測した。しかし、トランプ氏はこの予測が全体像を反映していないと主張している。

予算局のラス・ボート長官は6月4日、CBOの予測が「根本的に偏っている」と批判。マイク・ジョンソン下院議長も、CBOが「歴史的に低い成長率を前提にしている」と非難。ホワイトハウスは、トランプ氏の関税政策が10年間で2.8兆ドルの赤字削減をもたらすとのCBO予測を引用し、「法案と関税を合わせれば、10年間で5000億ドルの赤字削減が可能」と主張した。

トランプ氏は6月5日、この法案を擁護し、「これまで議会に提出された中で最も偉大な法案の一つだ」と称賛した。「これは記録的な歳出削減――1.6兆ドル、そして史上最大の減税だ」と投稿した。

一方、マスク氏はこの法案を「忌まわしい怪物」と非難し、「巨大で美しい法案などあり得ない」と批判した。法案廃案を求める支持者に議員への働きかけを呼びかけた。

今後の影響

この対立が上院での法案審議にどう影響するかは不透明だ。トランプ氏は7月初旬の法案可決を目指すが、上院では共和党から最大3票の造反しか許されない。ランド・ポール氏、ロン・ジョンソン氏、マイク・リー氏ら上院議員も、赤字への懸念を表明している。上院では法案の大幅な修正が予想される。

 

大紀元のワシントン特派員。 ワシントン政治を中心に、政治とスポーツ、スポーツと文化の交差点についても取材・報道を行っている。 過去には、Mediaiteのライターや、Jewish News Syndicateのワシントン特派員を務めた。 また、The Washington Examinerにも寄稿したことある。 ジョージ・ワシントン大学卒業。
エポックタイムズ記者。主に議会に関する報道を担当。