賃上げを成長の柱に 政府「新しい資本主義」実行計画2025年改訂案まとまる

2025/06/08 更新: 2025/06/08

政府は6月6日、首相官邸で第35回新しい資本主義実現会議を開き、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版案」を取りまとめた。今回の改訂案では、「賃上げこそが成長戦略の要」と明確に位置付け、2029年度までの5年間で実質賃金を年1パーセント程度引き上げることを、日本社会における新たな「社会通念(ノルム)」として定着させる方針を示した。

会議を取りまとめる石破首相(提供:首相官邸)

石破総理は会議後、「賃上げと投資がけん引する成長型経済を実現する」と強調。特に日本の雇用の約7割を占める中小企業・小規模事業者の賃金向上を重視し、「賃金向上推進5か年計画」に基づき、今後5年間で官民合わせて60兆円規模の生産性向上投資を実施する計画を明らかにした。加えて、全国の中小企業団体や地域金融機関など約2,000の支援組織によるきめ細かなサポートや、人手不足が深刻な12業種での省力化投資促進も進めるとしている。

また、官公需を含めた価格転嫁や取引適正化の徹底、スタートアップ育成、科学技術・イノベーション力の強化、労働市場改革や人材育成、資産運用立国の推進、地方経済の高度化など、幅広い政策分野で具体的な施策を盛り込んだ。政府は今月中旬の閣議決定に向け、与党や関係省庁と調整を加速させる方針だ。

今回の実行計画改訂案では、物価上昇を上回る賃金上昇を持続的に実現することが目標とされている。背景には、名目賃金が上昇しても物価高騰の影響で国民の実質的な生活が苦しくなっている現状がある。赤澤内閣府特命担当大臣は「物価に負けない賃上げを早急に実現・定着させるため、数値目標として実質賃金の年1パーセント上昇を掲げた」と説明している。

実質賃金の具体的な数値目標を政府が掲げるのは初めてであり、今後の政策実行の進捗や成果が注目される。政府は、これまでのデフレ経済からの脱却と成長型経済への転換を図る「歴史的なチャンス」と位置付けており、賃上げと投資の好循環を全国に広げることで、豊かさを実感できる社会の実現を目指すとしている。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。
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