ロサンゼルス暴動の真相 三つの黒い手と移民問題

2025/06/13 更新: 2025/06/13

ロサンゼルスで続く暴動の背後には、単なる移民問題を超えた「三つの黒い手」が存在する。資金供給者や政治的利害、そして市民の複雑な感情が交錯する現状を徹底解説する。

ロサンゼルスの街頭では今も炎と怒りが渦巻き、アメリカ政府は軍隊を動員して対応している。今回の事件の背景には、単なる移民問題では説明しきれない、三つの黒い手が関与している。

その中でも、上海に居住するアメリカ人の億万長者ネヴィル・ロイ・シンガム氏が特に注目を集めている。彼は現在、世界各地で巨額の資金を提供し、中国共産党(中共)の「成功物語」を積極的に広めている。

この「天使の都市」の混乱が収束するか否かは、アメリカの将来を左右する重大な分岐点となる。6月14日(土)には、さらに大規模な計画が動き出し、アメリカ国内1500以上の都市で「No Kings(王はいない)」運動が展開される予定である。核心となるのは、アメリカの地下社会における「本当の王」が誰であるかという問題である。

ロサンゼルスの炎の背後 綿密に準備された反抗行動

スペイン語の「Los Angeles」は天使を意味し、この都市は「天使の都市」として知られている。しかし現代のロサンゼルスは、ハリウッド、黒人の暴動、沿岸を焼く山火事、さらには街頭に蔓延するドラッグといったイメージが強く結びついている。そして先週末から続く暴動によって、再び世界的な注目を集める事態となった。

複数の見方が存在するが、その一つによれば、今回の騒乱はアメリカ移民・関税執行局(ICE)が6月6日に実施した大規模急襲に端を発している。この作戦では45人の不法移民を拘束した。

これが長年にわたり蓄積された民衆の不満に火をつけ、一気に爆発を引き起こした。ギャビン・ニューサムカリフォルニア州知事は沈静化を訴えたが、騒乱の勢いを抑えるには至らなかった。その後、6月7日の夜、トランプ大統領は緊急覚書に署名し、2千人の州兵の派遣を決定。さらに6月9日には、海兵隊員700人の追加動員を命じた。

しかし、この説明には重大な要素が欠落している。いくつかの決定的な場面が、より深い構図を示唆している。

インターネット上には、自動運転車「Waymo」が燃やされ、その上でメキシコ国旗を振る人物たちの映像が複数存在する。アメリカ国内で他国の国旗を掲げ、他人の財産を破壊する行動を平和的抗議と呼ぶことには無理がある。

また、高架下では複数の警察車両が破壊され、付近には共産主義を象徴する赤旗を身にまとった人物の姿も確認している。このような現場に平和的抗議という言葉はふさわしくない。さらに、メディアの記者たちは、無線機器で群衆を指揮する人物の姿を映像に収めている。こうした者たちはいったいどこから来たのか。

加えて、大量の防毒マスクを配布するトラックも記録されている。これらのマスクは一つあたり40〜60ドルと高価である。いったい誰がこれらを提供し、治安部隊への対抗を後押ししているのか。

さらには、大きなコンクリートブロックを街頭で運搬し、積み上げる集団の姿も目撃されている。覆面姿の者たちはそれらをハンマーで砕き、警察車両や法執行者に投げつけている。この行動にも明確なリーダーが存在すると考えるのが自然である。

同時期、ロサンゼルスでは「extremely tough, brave men(特にタフで勇敢な男性)」を募集する求人広告が出回っており、週給は6500〜1万2500ドルという高額に達している。背後で誰が資金を供給し、大規模な混乱を企てているのだろうか。

以上の事実から明らかなように、今回の事態は自然発生的な平和的抗議とは異なる。ICEによる執行への反発という名目の裏で、周到に設計された計画が進行していた。トランプ政権がこれを「組織的な暴力的反乱」「買収された反乱者」と定義したのは、極めて的を射た判断である。

では、誰がこの炎を煽っているのか。これまでに、三つの黒い手が徐々に輪郭を現し始めている。ロサンゼルスの街は、今やさまざまな勢力が衝突する舞台へと変貌しているのである。

第一の黒い手 上海に住むアメリカの億万長者

暴徒は夜間に姿を現す傾向がある。昼の抗議活動では、「強制送還の停止を呼びかける」「団結した人民が移民家族を守る」などのプラカードが並ぶが、「億万長者こそ真の敵であり、不法移民ではない」といった主張も見られる。

スローガンの下部には「社会主義解放党(PSL)」の名が添えられている。「CHIRLA:Californians for Humane Immigrant Rights Leadership(カリフォルニア人道移民権利連盟)」のエグゼクティブディレクター、アンヘリカ・サラス氏は、抗議者たちが「労働者であり、父であり、母である」と強調している。

ただし、抗議運動の構図は単純ではない。CHIRLAとPSLはいずれも左翼社会主義団体であり、帝国主義や警察による暴力、人種的抑圧に反対する姿勢を掲げている。さらに、「ANSWER Coalition(Act Now to Stop War and End Racism Coalition)」も関与し、この組織は「社会主義と解放党(PSL)」の前線組織として活動している。これらの団体は財政的に密接に関係し、その背後にある資金源は、上海に滞在するネヴィル・ロイ・シンガムという名のアメリカの億万長者だ。

シンガム氏は1954年生まれで、父親はスリランカ人、母親はキューバ人という出自を持つ。若年期には毛沢東主義団体で急進的な社会主義活動に取り組み、その後、ITコンサルティング会社を創業した。2017年には同社を7億8500万ドルで売却し、巨額の財産を築いた。2019年には中国・上海へ移住し、中共の宣伝部門と関係を築くパートナーと共にコンサルティング企業を設立。上海市政府と連携して貧困撲滅政策を推進している。

アメリカの主要メディアは、シンガム氏が非営利団体やペーパーカンパニーを利用して、世界中の左翼団体に資金を供給し、親中共的なプロパガンダ活動を後押ししていると報じている。たとえば、彼が資金提供する「ピープルズ・フォーラム(The People’s Forum)」は、2千万ドル以上を受け取り、今回のロサンゼルスにおける抗議活動において積極的な動員を行った。

シンガム氏の妻、ジョディ・エヴァンス氏は「コード・ピンク(Code Pink)」の創設者である。かつて彼女は中国の人権問題を批判していたが、2017年にシンガム氏と結婚して以降、「コード・ピンク」の主張は大きく変容し、公然と中共への支持を示すようになった。中共を非難するアメリカ議会の場では、「中共国は我々の敵ではない(China is Not Our Enemy)」と記されたプラカードを掲げて抗議活動を展開している。

PSLとANSWERは、より急進的な姿勢を取る。両者は「資本主義の打倒」を明確に主張し、北朝鮮や中共に対する支持を表明している。さらに、1989年の天安門事件についても否定的な立場を取っている。2023年10月には、PSLメンバーのユージーン・パリヤーがニューヨークで開かれた親パレスチナ集会に登壇し、ハマスによるイスラエル音楽祭襲撃を正当化する発言を行った。この行動は、彼らのイデオロギーがグローバルな反米運動に根差していることを象徴している。

得られた情報によれば、シンガム氏の資金は「Justice and Education Fund(正義と教育基金)」などの非営利組織を経由し、PSLやANSWERへ流れている。その資金は、スローガンの印刷費、バスのレンタル費、動員の組織費、さらには抗議者に対する警察対応訓練にも使われている。トランプ政権はすでに司法省に対して、この資金ネットワークの調査を指示しており、PSLを「国内テロ組織」として指定することも視野に入れている。

これらの資金の中に、中共からの直接的な資金が含まれているかどうかは明確でない。

シンガム氏のオフィスは、上海馬酷文化伝播有限会社と同じ場所に構えられている。同会社は上海市の宣伝部門が資金を提供しており、世界に向けて「中国の奇跡」を発信することを目的としている。ウェブサイトには、シンガム氏のオフィス内に「永遠に(中国共産)党に従う」と書かれた赤い横断幕が掲げられていることが明記されている。2023年7月には、シンガム氏自身が中共公式主催の「中国共産党国際形象伝播創新論壇(中共国際イメージ伝播イノベーションフォーラム)」に参加した。写真には姿を見せていないが、英語名が記された名札が彼の存在を示している。

加えて、Antifaなどの暴力的組織がロサンゼルスの混乱に加わっていた証拠も存在する。8日夜、ロサンゼルス市警の署長ジム・マクドナルド氏は、「夜間の暴力を引き起こしているのは昼間に見かける人々ではない」と述べ、「彼らは以前から同様の行動を繰り返してきた。これは組織的であり、目的はこの都市を破壊することである」と警告した。

第二の黒い手 政商の影  最も弱腰な州知事と政党 経済利益

共産主義組織が暴動の火種であるならば、政商利益集団はその炎を煽る強風である。

その代表例として、CHIRLAは2023年度に4487万ドルの収入を計上した。この金額の大半をカリフォルニア州政府の助成金が占める。カリフォルニアは民主党の牙城であり、不法移民とその支持者を重要な票田と見なしている。

ロサンゼルス市長カレン・バス氏は「私たちは急襲を止めなければならない。これはワシントンD.C.が引き起こした混乱だ」と発言した。不法移民が責められず、不法移民を取り締まる行為が非難される状況に、疑問を抱く者も多いだろう。

だが、アメリカ政治に通じている者にとって、これは単なる愚かさではない。カリフォルニアにはおよそ200万人の不法移民が存在しており、トランプ政権による追放強化は連邦下院で2〜4議席の行方を左右する可能性がある。ニューサム氏やバス氏の弱腰な態度は表面的なものであり、その根底には政治的利害が存在する。

カリフォルニア州知事ニューサム氏は、地方警察とICEの協力を制限する「カリフォルニア価値法(SB 54)」に署名し、不法移民にとって州を避難所とした。

ビジネス界の利益も暴動の推進力となっている。不法移民を支える産業チェーンはすでにカリフォルニアで一定の規模を持ち、人口密売、低賃金労働市場、地下経済にまで波及している。

建設業、農業、サービス業の経営者たちは賃金を抑えることで巨額の利益を得ており、地方の有力者はロビー活動や政治献金を通じて、緩い政策の継続を図っている。たとえば、ロサンゼルスの衣料工場では長年にわたり不法移民を雇い、劣悪な労働環境と最低賃金以下の給与が常態化しているが、地方政府はこれを黙認し続けてきた。

このように、地方政府が非営利組織へ資金を提供し、組織が抗議行動を動員し、連邦政府の執行に反対するという悪循環が形成されている。「組織的暴動」の背後には、政商利益集団の共謀が横たわっている。

トランプ政権の強硬な執行は、こうした利益ネットワークを断ち切る試みであり、それが街頭の反発を引き起こした。

第三の黒い手 一言では言い尽くせない「聖母心」 同情と困難の交錯

前述の二つの黒い手と比べ、三つ目の黒い手はさらに複雑である。これはあふれる同情心と、長年にわたって蓄積された移民問題の複雑性を背景に持つ。抗議に加わる者の中には一般市民も多く、彼らは共産主義者でも政商の代弁者でもなく、人道的な理念に基づいてICEの執行に異議を唱えている。

ある映像に、一人の女性は涙を浮かべながら、「誰か私がどう手助けできるか教えてください。人々が通りで拉致されている。私は抗議し、手紙を書き、電話をかけ、コンテンツを作っている。でも、どうすれば彼らを助けられるのか分からない」と訴えている。

カリフォルニアに住む不法移民の多くは、何十年もアメリカで生活し、事実上「アメリカ人」としての役割を果たしている。レストランや建設現場、清掃業などで労働に従事し、経済への貢献も大きいが、法的地位に問題を抱え、社会の影に追いやられている。彼らの子供たちはアメリカで生まれ、市民権を持ちながらも、家族の分断という苦しみに直面しており、こうした感情的共鳴が暴動に一定の民意の支持をもたらしている。

アメリカは多様な文化を受け入れる移民国家である。しかし、法を伴わない同情が広がることで、悪意ある勢力に利用されやすくなり、社会秩序の崩壊を招く危険性がある。アメリカ国内の不法移民は約2千万人にのぼり、深刻な社会・治安問題を引き起こしている。

たとえば、最近ネットで拡散された抗議参加者のインタビューでは、不法移民の一人が「我々は資本主義に反対する。社会主義は本当に有効であり、より人道的な制度だと信じている」と語っていた。

このような反米思想を持つ移民は、ニューヨークの街頭で中共の赤い旗を掲げ、革命歌を歌う中国系の人々と重なる。その存在は想像するだけで恐怖を覚えさせる。

さらに、カリフォルニアの公共資源はすでに限界を迎えている。2023年には、無許可移民への医療支出が70億ドルに達し、州の予算を圧迫している。加えて、犯罪件数も急増しており、社会不安の火種が各地に広がっている。

トランプは三つの黒い手を断ち切る決意か?

トランプ大統領は今回、権力を積極的に行使し、州兵や海兵隊の動員に踏み切った。この姿勢に対し、多くの人々が非難の声を上げている。しかし、こうした行動には歴史的な前例が存在する。1992年、ブッシュ大統領はロサンゼルス暴動の鎮圧を目的に連邦軍を派遣した。1968年には、リンドン・B・ジョンソン大統領が全国的な反戦騒乱に対応するため軍隊を投入した。さらに、レーガン氏がカリフォルニア州知事であった時期には、カリフォルニア大学バークレー校を占拠した左翼勢力の排除を狙い兵力を行使した。

現在、トランプ大統領は「三つの黒い手」を断ち切る構えを見せている。その一つである共産主義組織に対しては、資金源を絶つ戦略を打ち出した。司法省はすでにPSL、ANSWER、シンガムに関連する資金ネットワークの調査に着手し、「外国代理人登録法(FARA)」違反の可能性に注目している。

政商利益集団については、カリフォルニアの庇護政策を崩すことがトランプ大統領の主要な目標である。大統領令を通じて庇護都市への連邦資金を停止し、ニューサム州知事やバス市長に対し、ICEの執行活動への協力を求めている。さらに、財務省はCHIRLAなどの非営利組織が受ける政府契約の実態を調査中である。

移民問題と、それに対する同情心に関しては、より複雑な戦略を採用している。トランプ大統領は一方で法執行を強化しつつ、他方で広報を通じて不法移民への国民意識の転換を試みている。さらに、長期滞在する無許可移民に対して限定的な合法化の道を提示することで、穏健派の理解を得ることも視野に入れている。ただし、その前提として、不法移民のうち犯罪者の排除と国境管理の強化を条件に据えている。これによって、抗議運動の支持層に分裂を生じさせ、保守・中道派の支持を固める狙いがある。

こうした方針は賛否が分かれている。6月9日に行われた世論調査では、全体の53%が不法移民への強硬姿勢を支持し、2024年から10ポイント上昇した。中産階級や保守派有権者の間では、その支持率が70%に達している。一方で、カリフォルニアでは60%以上の有権者がICEによる大規模な強制措置に反対し、地域社会の安定を脅かすものと捉えている。

課題はなお山積している。シンガム氏の資金ネットワークは国際的かつ巧妙であり、完全に遮断することは容易でない。政商利益集団はカリフォルニアの行政機構に深く浸透しており、地方官僚からの抵抗も継続する見通しだ。青い州(民主党支持基盤)に根付く不法移民への同情も根強い。また、左派系の反トランプメディアも依然として影響力を保持しており、機を見て世論を煽動する構えを崩していない。

今、差し迫った新たな脅威が浮上している。6月14日(土曜日)には、全国規模の反トランプ抗議行動が予定されており、1500以上の都市で数百万人規模の参加が見込まれている。その際、どれほどの組織や個人が暴動を引き起こすのかは不透明である。スティーブン・バノン氏が司会を務める番組「ウォールーム」では、ゲストが「今回もロサンゼルスのような混乱が発生する可能性が高い」と警鐘を鳴らした。

今回の抗議行動のスローガンは「No Kings(王はいない)」である。しかし、問い直すべきは「誰がアメリカの地下世界の本当の王なのか?」という点である。トランプ大統領の反撃は、この地下の支配者の魔の手をいつ断ち切るのか、その時期に注目が集まっている。

この大勝負の行き着くところは、アメリカの未来だけでなく、世界の安定にまで関わっている。アメリカが安定すれば、世界もまた安定する。

秦鵬
時事評論家。自身の動画番組「秦鵬政経観察」で国際情勢、米中の政治・経済分野を解説。中国清華大学MBA取得。長年、企業コンサルタントを務めた。米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)、新唐人テレビ(NTD)などにも評論家として出演。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。
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