2025年6月27日に、コンゴ民主共和国とルワンダ共和国の両国は、ワシントンで和平協定に署名し、長引く国境紛争の終結を目指す意思を明確にした。アメリカのトランプ大統領は、この合意を「重大な突破口」と位置付け、ワシントンがアフリカの安全保障と鉱物資源戦略に、深く関与している事実を示すものであると述べた。
両国外相は、ワシントンでの署名式において、今年すでに数千人の命を奪った武力衝突を終わらせるとの決意を表明した。署名式は、ルビオ米国務長官の主導で行われた。
この協定により、トランプ政権は国際平和構築における主導的立場を誇示し、アメリカ政府は自国を国際社会の和平推進者として明確に位置づけた。
協定は、コンゴ東部で数十年続いた武力衝突に、終止符を打つものと期待され、今年に入ってから数千人が死亡し、数十万人が住居を失った現実が、この合意の緊急性を裏付けていた。
トランプ大統領は、署名式前の発言で「彼らは何年も戦い続けてきた。しかも鉈で斬り合うような悲惨な戦争であった。私はこの問題を解決できる適任者を見出した」と語った。
署名後、トランプ大統領は、両国外相をホワイトハウスに迎え、「暴力と破壊は今日で終わりを迎え、この地域全体が希望と好機に満ちた新たな時代に入る。本当に素晴らしい一日だ」と述べた。
ルビオ国務長官は今回の協定を「30年戦争後の転機」と位置づけ、歴史的意義を強調した。
コンゴ東部では、ルワンダの支援を受けたとされるM23反乱軍が活動を展開し、年初には急襲を実施して主要都市2つと複数の鉱山地帯を掌握した。Rubaya鉱山を含む北キブ州は、この衝突の中心地となっており、政府軍と反乱軍が交互に支配する混乱状態が続き、累計700万人以上が避難を強いられ、世界最大級の人道危機を形成した。
協定内容と今後のスケジュール
協定に基づき、ルワンダ政府は、90日以内にコンゴ東部から軍を撤収することを明記し、コンゴと協力して地域経済統合を推進する方針を示した。
また、双方は、30日以内に安全保障調整メカニズムを構築し、3か月以内に過去の協定に準拠した部隊撤収の監督と検証計画を実行することを取り決めた。
さらにこの協定は、アメリカ企業に対し重要鉱物資源開発への参入機会を開放し、タンタル、金、コバルト、銅、リチウムなど豊富な鉱物資源を背景に、数十億ドル規模の西側投資を誘致することを目的とする。
米企業が鉱物資源開発に参入
和平協定の一環として、アメリカ企業は、コンゴ国内における重要鉱物資源の開発計画に参加する見通しで、アメリカ政府のアフリカ問題上級顧問マサッド・ブロス氏は、アメリカ側がコンゴおよびルワンダと鉱物協定について協議を進めており、内容には採掘のみならず、中流・下流の加工工程も含まれると説明した。すでに多くのアメリカ企業が投資意欲を示したという。
『フィナンシャル・タイムズ』によれば、アメリカの投資会社「America First Global」とスイスの商社Mercuriaが、コンゴのRubayaニオブ・タンタル鉱山開発について交渉を進め、投資額は5億ドル(約723億円)を超える見込みで、鉱石はルワンダを経由して輸出され、キガリに設置される製錬所で加工される計画である。
Rubaya鉱山は世界有数のコルタン(ニオブ・タンタル鉱石)産出地であり、そこから抽出されるタンタルおよびニオブは、電子機器、航空機器、軍需品など幅広い分野に不可欠な戦略資源として用いられる。
ルワンダはまた、タングステンの主要輸出国として知られ、この金属は金属加工や建設資材に広く使用されていた。

トランプ「協定違反には厳格な制裁」
和平協議が署名された後、トランプ大統領は、ホワイトハウスのオーバルオフィスで両国の外相と会談し、彼らに手紙を渡した。その手紙では、コンゴのフェリックス・チセケディ大統領とルワンダのポール・カガメ大統領をアメリカに招待し、「ワシントン協定」と呼ばれる一連の文書に署名するよう促した。
ルビオ国務長官は「両国首脳が数週間以内にワシントンに到着し、正式協定および後続の議定書に署名する予定である」と述べた。
両国外相はアメリカの継続的関与に期待を寄せ、協定の実効性を確保するよう要請した。コンゴのワグナー外相は「アメリカの関与を引き続き求める。ともにこの協定を履行し、平和の定着に責任を果たしてほしい」とトランプ大統領に語った。
ルワンダのンドゥホンギレヘ外相も、アメリカの関与が地域経済統合の推進に不可欠であると訴えた。「これまでも多くの協定が結ばれてきたが、実行に至らなかった。今回、我々の準備は整っている。アメリカが履行をともに監視していく必要がある」と述べた。
トランプ大統領は「どちらかが協定に違反した場合には、非常に厳格な制裁を科す」と警告し、「財政面を含む制裁措置をすでに用意しており、もし違反があれば大きな代償を支払うことになる」と断言した。
和平の課題と可能性
カナダ・サイモンフレーザー大学の国際問題専門家ジェイソン・スターンズ氏は、「課題や不備は多いものの、現時点で最良の和平の機会である」との見解を示した。
スターンズ氏はさらに、過去にも同様の協定が存在していたが、今回、アメリカが「ゴッドファーザー」として関与している点が成功の鍵になると指摘した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。