【プレミアムレポート】中国共産党による越境弾圧の実態 手段を問わない法輪功攻撃

2025/07/05 更新: 2025/07/06

ここ数年間、中国共産党(中共)はアメリカで全面的で戦略的な弾圧キャンペーンを展開し、異論分子への攻撃をエスカレートさせてきた。

その手法は、中共がいかにしてアメリカ国内に浸透し、影響力を拡大してきたかを表している。彼らは、作戦が一度成功すればそれを他のターゲットにも仕掛け、キャンペーンを拡大してきた。

キャンペーンが本格化したのは2022年、中共党首の習近平が法輪功学習者への不満をこぼしたことに端を発する。法輪功学習者はその信仰を理由に中共から迫害を受けており、海外でその真相を伝え続けてきた。中共の犯罪行為が海外で暴露されることを食い止めたい習近平は、海外法輪功学習者への弾圧を強化するよう高官に指示した。昨年、中共体制内部の情報筋複数人が明らかにした。

中国共産党による越境弾圧をビジュアル化(英字版エポックタイムズ)

 

内部情報によれば、習近平は高官に対し、それまでの海外法輪功学習者に対する抑圧が不十分だったと指摘。法輪功学習者が創設した主要なメディアや団体をターゲットに新たな弾圧キャンペーンを展開するよう命令した。

標的となったのは、「共産主義以前の中国」の伝統文化の復興を目指し中国伝統舞踊と音楽を舞台で表現する「神韻芸術団(神韻)」、およびエポックタイムズ(大紀元)、NTD(新唐人テレビ)を中心とするメディアグループだ。

神韻は、西側メディアやインフルエンサーによる根拠のない批判にさらされ、ソーシャルメディアのbot(自動プログラム)やトロールの攻撃を受け、法律戦、爆破・殺害予告の被害を受けてきた。

1999年以降、法輪功学習者は中国で不当な投獄、拷問、さらには臓器収奪(強制的な臓器摘出)を含む残酷な迫害に直面してきた。中共工作員による絶え間ない嫌がらせ行為は、今やアメリカにも進出している。専門家によれば、中共は神韻が国内の思想統制および中共の対外的なイメージを損なっており、それが中共の権力掌握と海外支配の野望を脅かすと考えている。

米国務省は2月7日、中共による神韻への攻撃を非難し、「我々はそのような脅迫行為を到底受け入れず、表現の自由が守られることを強く求める」とエポックタイムズに語った。

「中国共産党に対して、25年にわたる法輪功弾圧をやめるよう要求する」

国務省の広報担当はさらに、2023年に発行した「信仰の自由に関する年次国際報告書」で「複数の国において法輪功学習者および神韻芸術団に対する妨害行為が記録されている」と述べた。

中共の神韻に対する破壊行為は年々エスカレートし、法律訴訟、ソーシャルメディアでの誹謗中傷および嫌がらせ行為、爆破予告、殺害予告を受けている。写真は2009年:神韻ステージの一幕(提供:神韻芸術団)

昨年、中共の内部告発者複数人が法輪功弾圧キャンペーンに関する新たな動きを暴露した。中国政府とのつながりを察知されづらいインフルエンサーや西側の主流メディアを通じて、「情報洗浄(一見して信頼できる情報源から発信されているように思わせる手法)」を行い、それと並行してアメリカの司法制度および法執行機関を利用し、法輪功学習者の設立した各団体、特に神韻に攻撃を仕掛けるというものだ。

情報提供者によれば、中国国家安全部・部長の陳一新がこの度の弾圧キャンペーンを統括しているという。その他、公安部を含む複数の政府機関が関与しているとみられる。

以前、中国政府系ハッカー集団「ソルト・タイフーン」によるアメリカの通信ネットワークおよび政府高官を狙ったサイバー攻撃が起きた際には、背後で国家安全部が関与していたとされる。

同事件は、中国公安部がアメリカ国内に潜り込ませたスパイが関与しており、極めて悪質だ。内部告発者は、「一度工作員が動員されれば、脅威は大きく増大する」と警告する。

マスメディア

昨年、ニューヨーク・タイムズ紙(以下、NYタイムズ)を筆頭とする複数の西側主流メディアが、異常な数の法輪功攻撃記事を掲載した。

2024年8月から関連記事を掲載し始めたNYタイムズは、ごく一部の元神韻団員の主張に基づき記事を執筆した。取材対象者には、中共と関係を持つ者もいた。

米ニューヨーク・マンハッタン地区にあるニューヨーク・タイムズ・ビルディング(1月、Samira Bouaou/The Epoch Times)

 

同記事は、2つの論点を軸にしている。1つ目は、法輪功学習者が米国で設立した会社の成功はどういうわけか邪悪なもので、2つ目は、法輪功は、学習者が病院で治療を受けることを禁止しているという主張だ。

後者は、中共がかつて法輪功弾圧を正当化するために用いたプロパガンダであり、全くのデマだ。この主張はすでに、必要時には治療を受けることもあるという法輪功学習者自身の証言、および学習者の治療を担当した医師たちの証言によって誤りが証明されている。

神韻の現役メンバーのほぼ全員を含む、現・元ダンサーおよび制作スタッフ800名以上が、メディアによる神韻への攻撃を非難する請願書に署名した。

請願書では、メディアによる「不快なまでの歪曲と誤った言説」、法律戦、そして「米政府に対する悪意を持った捜査依頼」が神韻芸術団を脅かしており、それらは北京当局の米国における影響工作と支配力を示している、と述べられている。神韻は3月、リンカーンセンターでの公演を数時間後に控える中、同会場で記者会見を開き請願書を公開した。

ソーシャルメディア

アメリカのソーシャルメディアは、反法輪功コンテンツを推し出すよう操作されてきた。X(旧Twitter)上でエポックタイムズが調査したところ、数千の偽アカウントがNYタイムズによる神韻攻撃報道および反法輪功プロパガンダをシェアしていた。指摘を受けた運営側はこれまでに大量の偽アカウントを削除してきたが、新たな偽アカウントが作られ続けている。

偽アカウントの手口は洗練されている。最初は自然や食べ物、動物、旅行写真といった投稿を通じて、数ヶ月あるいは数年の時間をかけてフォロワーを集めた後、ある時突然法輪功に反対的なコンテンツを混ぜ入れるようになる。

ニューヨーク・タイムズの反神韻記事を投稿・共有する偽アカウント(X/Screenshots via The Epoch Times)

 

動画プラットフォームYouTubeでは、近年法輪功に否定的な英語コンテンツが頻出している。中には、中共のプロパガンダを繰り返し主張するインフルエンサーもいる。

内部告発者の話によれば、中国公安部の職員らは、法輪功や神韻を否定的な観点から発信するYouTuberを支援するよう命令されているという。

特に名前が上がったのは、「NYタイムズに取材対象者を紹介したのは自分だ」と主張する1人の男性YouTuberだ。

神韻関係者に脅迫的な発言を続けていたその男は、2023年、ニューヨーク北部の神韻キャンパス付近で目撃され、米連邦捜査局(FBI)はこの男性が「武装しており危険な可能性がある」として法執行機関に警告を出していた。その後、男は逮捕され、違法な銃器所持の罪で告発された。

内部告発者は、彼らYouTuber自身が中共の工作員というわけではないが、国家安全部に「完全に利用されている」と指摘する。

「インフルエンサーは、提供元がどこであろうと、受け取った情報全てを発信する。情報提供者が(インフルエンサーに)身分を伝えることはない。こうして、インフルエンサーは中共の駒となる」

YouTubeアプリを開く女性(Oleksii Pydsosonnii/The Epoch)

 

法律戦

ここ数年、長く中国とビジネス関係をもつ1人の男性が、ニューヨーク州オレンジ郡の神韻キャンパスに対し、立て続けに欠陥のある環境訴訟を申し立てていた。直近では、2024年9月に連邦裁判所が男性の申し立てを棄却した。

2024年7月、2人の中国系アメリカ人ジョン・チェンとリン・フェンが中共の代理人として違法に活動し、神韻に対する偽りの捜査を行うよう米内国歳入庁(日本の国税庁に相当)の捜査官に賄賂を渡した罪を認めた。

裁判書類によると、2人はオレンジ郡の法輪功コミュニティに張り込んで情報収集も行っていた。環境訴訟を起こして法輪功コミュニティに妨害行為を仕掛けるつもりだった、と供述している。

2024年11月以降、神韻はさらに2つの訴訟を受けた。原告である複数の元神韻団員は、NYタイムズに批判的な主張を提供した者と同一人物で、中には中国当局との関係を持つ者も確認されている。訴訟文の一部は、NYタイムズの記事からそのまま転用されたような形になっている。

自身が開催した親中共イベントに出席するジョン・チェン(2016年10月、Liu Fei/The Epoch Times)

 

殺害予告

過去数年間にわたって、神韻は公演予定の劇場およびトレーニング施設に対する数十の爆破・殺害予告に遭遇してきた。また、神韻や法輪功を支持する米国議員も脅迫の標的になっている。

脅迫メールの中には、台湾法務部の公式メールアドレスが使用されたものもあった。エポックタイムズが電子メールのメタデータを調べた結果、電子メールが法務部のメールサーバーを通じて処理されていたことがわかった。何者かがメールアカウントを乗っ取り、送信したとみられる。

サイバーセキュリティの専門家によれば、メールのメタデータは偽装されている可能性がある。とはいえ、もし犯人がただ神韻を妨害したいだけの個人だとすれば、台湾法務部の複数のメールサーバーの詳細な“電子的指紋”を偽装する必要はないはずだ、と指摘する専門家もいる。

脅迫の内容も、爆破手段や場所、対象などを含むようになり、より残虐で具体的なものになってきている。1月、ガラス瓶にアルコールを詰めた「大量の焼夷弾」で神韻の訓練スタジオを燃え上がらせる、と脅す電子メールが神韻に届いた。犯人は、施設および車両を燃やし、それを阻もうとする者は全員切りつける、また「法輪功を支持する議員も攻撃対象だ」と脅迫した。

さらにその1週間前には、別の脅迫メールが2通届いていた。

「法輪功を支持する議員を攻撃対象から除外しない」「議員の自宅もしくは車両に爆弾を設置し、爆破する!」

神韻の舞台司会者を務めるリーシャイ・レミッシュ(Leeshai Lemish)氏。リンカーンセンターでの記者会見で、神韻、法輪功、および支持者に対する脅迫メールの数の推移を示したグラフを掲げる(3月、Samira Bouaou/The Epoch Times)

 

米国議会警察およびFBIは、脅迫メールに関する報告を受けている。

メールの送信者には、反中共の立場を主張し、さらには台湾の蕭美琴副総統を含む政府高官を騙る者もいた。

台湾法務部調査局(MJIB)は複数機関による追跡調査の結果、脅迫メールの一部は中国陝西省の省都・西安に端を発すると報告した。また、覇権を狙う中国ハイテク産業のキープレイヤー、華為(ファーウェイ)の西安研究センター付近から発信されたことも確認した。

4月20日、ニューヨーク市内の複数の図書館が、地元の法輪功学習者によるイベントを標的とする脅迫メールを受け取った。そのうちの1つは、4月25日に開かれるであろう1999年4月25日の平和的陳情から26周年を記念するパレードで隊列に車を突っ込むという脅しだった。幸いにもパレードは4月19日にすでに開催していたが、脅しを受けた地元図書館は4月21日に数時間営業を中断し、避難を行った。

ニューヨークを拠点として法輪功学習者が運営する「全世界脱党支援センター」にも、4月20日〜28日にかけて同様の脅迫メールが届いた。合計6通のメールは、それぞれ法輪功学習者およびその支持者を標的とした爆破予告、銃撃予告、車両衝突、強姦、児童誘拐、その他テロ行為に関する脅しだった。

ニューヨーク市警察109分署の警官は、全世界脱党支援センターの受け取った脅迫メールが図書館に届いたものと同様のもので、送信者のIPアドレスが中国にあることを確認した。

ニューヨーク市クイーンズ地区フラッシングにあるクイーンズ公共図書館を取り囲む警察車両(The Epoch Times)

 

買収される協力者たち

中共は長らく、海外在住の中国人を買収して協力者を増やし、中共の要人が他国を訪問する際に抗議デモを起こさせ、人権活動家たちを排除しようとしてきた。近頃は、外国人に報酬を渡して法輪功を攻撃させるという新たな手法もとりこんでいる。

抗議デモの参加者は通常6人前後で、そのほとんどは黒人もしくはヒスパニックだ。抗議者の持つプラカードやバナーには、中共が国内で発信するような反法輪功プロパガンダが英語で書かれている。

5月9日、少数の抗議者たちがマンハッタンで開催された法輪功パレードの横に現れた。人数は10人に満たず、そのほとんどは黒人だった。パレードの進行に合わせて歩きながら叫んだり、時々ライムグリーンのジャケットを着た撮影担当の中国人男性のところへ群がったりしていた。

パレードの終了間際、抗議者の1人が警官に「あなたたちは誰かに雇われているのか」と質問されているところを、エポックタイムズのフリーランス記者が目撃した。

警官に尋ねられた男性はうなずき、「200ドルだ」と答えた。警官はその金額に驚いた様子を見せ、同僚の警官に「私の予想通りだ」と話した。

別の抗議活動では、2人の中国人と1人の黒人が「お金のために参加した」と語り、別のヒスパニック男性は、抗議活動を「仕事」と表現した。

法輪功パレードを妨害するために、親中共の個人によって組織された抗議デモ(プラカードのプロパガンダ文にはモザイクをかけています)(5月9日、Edwin Huang/The Epoch Times)
Liu Ningxiang(右)とパレードを妨害しようとする抗議者たち(5月9日、Edwin Huang/The Epoch Times)

 

この他にも、法輪功学習者は以前見られなかった妨害行為を目撃するようになったと語る。

4月29日、ニューヨークで1人の男が複数の法輪功ブースへ荒らしに入った。傍観者の中には、中国音楽を大音量で流し、法輪功や法輪功学習者を侮辱する発言をする者もいた。目撃者のChen Yikui氏は、彼を含めた複数の法輪功学習者も、4月30日〜5月2日にかけてキッセナ公園での朝の煉功中に嫌がらせを受けた、と語った。

Chen氏は、この種の嫌がらせはこれまで見られなかったもので、中共による越境弾圧の一環ではないかと考えている。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。
Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。