中国人問題の起源 尖閣 靖国参拝問題から土地買収まで 

2025/08/07 更新: 2025/08/07

近年、日本各地で中国人による土地買収、不動産投資、観光地の混乱、さらには治安上の懸念が相次いで報告されている。経済的には「爆買い」や「インバウンド」と歓迎される一方で、その背後にある国家的意図や、中国共産党との結びつきへの警戒も強まりつつある。だが、このような「中国人問題」は突然始まったものではない。

米国で広がる「中国共産党と中国は違う」という見方

アメリカでは、特に近年「中国共産党(中共)と中国は別」という考え方が広まっている。中国人のマナー違反は国際的に中国人が嫌われる要因の一つだが、もともと中国は儒教が生まれた国であり、マナーや政治体制はもちろん日本や朝鮮など古代のアジア諸国はこぞって中国文化を取り入れた。しかし、中国共産党は文化大革命などを通じて徹底的に中国文化を破壊してきた。その過程で中国共産党が殺害した中国人は8千万人ともいわれる。戦争も起こっていないのに日中戦争で死んだ中国人の数より、はるかに多い罪のない中国人を殺害してきた。

民主活動家や人権団体は「中国共産党によって抑圧されている中国人こそ、最大の被害者だ」と訴える。日本でもこの視点は重要だ。中国人問題の本質は、国家としての中国ではなく、その統治を担う中国共産党の独裁体制に起因する可能性が高いのだ。

「靖国」「尖閣」問題は江沢民時代から先鋭化

1990年代以降、日本と中国の間で突発的に生じたナショナリズム的衝突──靖国神社参拝への抗議、尖閣諸島の領有権主張、反日デモの過激化──は、中国国民の「自発的な感情」として語られることが多い。しかし、これらの動きが本格化したのは江沢民政権下からである。

江沢民は1998年、訪日時、公式の晩餐会で歴史問題に言及し、日本政府に「過去への謝罪」を繰り返し求めた。彼の下で教科書やメディアにおける反日教育が強化され、都市部では「愛国主義教育基地」が続々と設立された。若者を中心に「歴史の恨み」を持つ国民感情が形成され、それが対日感情の悪化へとつながっていく。

天安門事件で弾圧主導した江沢民がトップに

江沢民の台頭は、1989年の天安門事件なしには語れない。民主化を求めて蜂起した学生や市民に対し、人民解放軍が武力弾圧を敢行。この事件で国際社会の批判を浴びた鄧小平は、上海で徹底した情報統制と治安維持を行っていた江沢民を評価し、彼を総書記に抜擢した。こうして江沢民は、民主化を拒否する体制の象徴的な存在となった。

天安門事件での弾圧は中国国内に深い不信と怨嗟を生んだ。江沢民政権はそれを鎮めるために、「外に敵を作る」という古典的な手法に打って出た。つまり、民主化運動への不満を「反日」に転嫁することで、国民の怒りの矛先を変えた。日本は、共産党による統治の正統性を再構築するための「都合の良い敵」となり、今に至っている。

江沢民時代のもう一つの特徴は、「金儲けが先、政治は後」という実利主義である。鄧小平の改革開放路線を引き継ぎながらも、江沢民政権下では共産党幹部やその親族による腐敗が蔓延。国有企業の私物化、不正蓄財、地方政府による土地強制収用などが横行した。一方で言論の自由や民主主義は徹底的に封殺されていった。

法輪功が人気博す 法輪功弾圧が開始

こうした社会の腐敗や精神的空洞を背景に、1990年代後半から急速に広まったのが法輪功だった。法輪功は気功をベースとした修煉法で、精神的な充足と健康への効果が口コミで広まり、わずか数年で1億人とも言われる信者を得、多くの共産党員や軍関係者さえも、こっそり修練していたとされる。

だが、巨大な信者数とその組織力は、江沢民の眼に「体制転覆の脅威」と映った。1999年、江沢民は独断で法輪功の全面弾圧を指示。以降、法輪功への拷問、強制労働、臓器収奪などの人権侵害が世界中で問題視されるようになった。これは江沢民が自ら築いた恐怖政治の一端であり、その影響はいまも続いている。

中国共産党による迫害の根本原因は、イデオロギーの対立にある。法輪功が掲げる「真・善・忍」は、嘘と闘争で政権を維持する共産党の哲学と根本的に対立する。江沢民もそうしたイデオロギーから生まれた産物だった。また、共産党は恐怖で民衆を支配するが、信仰を持つ学習者はそれを克服するため、党の統治手段が効かなくなる。法輪功の高い道徳性は腐敗した共産党にとって耐え難く、法輪功学習者の数が共産党員の数を追い超す勢いで急増したことは、党の絶対的支配への脅威とみなされた。さらに、法輪功がもつ「有神論的価値観」は党の正当性の基盤である「無神論」を揺るがした。

最後に

現在、私たちが直面している「中国人問題」は、単なる民族や国籍の違いから生まれた摩擦ではない。その背景には、江沢民という一人の政治指導者が築いた、反日ナショナリズムと人権弾圧、腐敗政治の構造が深く根付いている。中国人全体を責めるのではなく、その背後にある体制の問題を冷静に見つめる視点が、今こそ日本に求められている。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。
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