「報道しない自由」と「真実を報じる勇気」 旧統一教会問題で問われるメディアの役割

2025/08/17 更新: 2025/08/19

日本政府の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令に対して日本のキリスト者が8月11日東京御茶ノ水で集会を開き、信教の自由という民主主義国家において保障されるべき権利をめぐって宗派を超えた議論がなされた。

集会では、政府の旧統一教会への解散命令請求の是非だけでなく、この一連の出来事を国民に伝えてきたメディアの報道のあり方について意見が交わされた。

3年前の2022年7月8日、奈良市で安倍元総理大臣が暗殺され、山上徹也被告(44)が殺人などの罪で起訴された。

調べの中で山上被告は、母親が多額の献金をしていた旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたなどと供述した。

その他、山上被告は最初は教団の最高幹部を襲撃しようとしたが接触が難しく、統一教会と関係が深いと考えた安倍晋三元首相を狙ったと供述。他にも安倍氏が「統一教会を日本に招き入れた岸信介元首相の孫」という点も銃撃の理由に挙げた。

また事件前の手紙には「母の入信からの金銭浪費、家庭崩壊、破産で自分の10代が歪められた」と記しており、恨みがあったことを示唆している。山上被告は銃撃した動機は政治的信条ではなく、個人的な家庭の被害に基づくものだと述べた。

こうした山上被告に対して、マスコミの報道は、山上被告の母親の統一教会への多額献金を事件の直接的動機とし、その部分だけに焦点を当てた報道がなされた。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は8月6日に出したプレスリリース「具体的証拠に基づかない文科省主張に対して反論書面を提出しました」で以下のように述べている。

「メディアが偏った報道フレームを設定し、信者や教団を不当に悪者扱いした。報道が世論を扇動し、解散命令請求に影響を与えた。これら事実をデータ解析結果に基づき主張した」

集会後の取材に応じた弁護士の中山達樹氏は日本社会が特定の方向に流されてしまう「同調圧力」の危険性を指摘。この「同調圧力」を醸成した元凶として、メディアの責任を追及した。

また安倍晋三元首相の暗殺事件をきっかけに、メディア主導で統一教会を批判する「世論」が急激に形成され、テロリストの動機に社会が迎合するという異常事態を生んだと、パネリストの西岡力氏は警鐘を鳴らした。

その他、牧師の中川晴久氏はキリスト教牧師らによる信者の「拉致監禁問題」について触れ、日本の大手メディアは「報道しない自由」を盾に、完全にタブー視し、その存在すら報じようとしないと訴えた。中川晴久氏はこの意図的な沈黙が、問題の解決を妨げ、被害者の声をかき消していると疑義を呈した。

中山弁護士はメディアは世論に迎合するのではなく、時にはそれに逆らってでも社会を良い方向に導く「社会の木鐸(ぼくたく)」であるべきだと主張。戦前の言論人、石橋湛山のように気骨のあるジャーナリズムの登場を求めた。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。
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