台湾の現在の政治情勢は不安定だ。専門家は、武力統一にせよ、スパイや賄賂といった手段(統一戦線工作)にせよ、中共が中華民国を滅ぼそうとする歴史が再び台湾で繰り返されていると指摘する。約70年前、中共はまさに同じ手法で大陸を乗っ取り、共産陣営の本陣として中華民族、人類に大きな災難をもたらした。
今や、中共は台湾収奪のための5つのステップを準備している。すでにインフルエンサーの中にも、台湾で革命の旗を掲げ、「台湾人を中国人(ここでは中共国民の意)に変える」と大胆な発言をした者がいる。
共産主義が台湾を飲み込まないことを願うばかりだ。中共による浸透工作を防ぐには、中共の本性を暴き、多くの人に中共が普通の政権ではなく国家の顔をした裏社会の組織であることを知ってもらうほかない。
台湾の人々は勤勉かつ聡明で、常にビジネス環境に敏感だ。しかし、中共には「法治」という概念が存在せず、法律や契約はただの紙切れと化す。これから、人々が直面している現実を実例とともにお話しする。
財産とともに海外へ亡命した中国の企業家
シンガポールを拠点とするニュースサイト「端伝媒(Initium Media)」の取材を受けた徐旭昇氏は、中国から日本へ逃れた企業家の1人だ。徐旭昇氏は北京にいた頃、青少年向けアウトドアスポーツの企画・運営事業を手がける会社を経営していた。
会社は北京中心部の「城中村」と呼ばれる場所にあり、元々農村による集団所有地だった。これらの土地は政府による国有化の後、都市用地へと土地の性質が変更されることで、商業開発が可能となる仕組みだ。
10年前、北京市朝陽区政府と国営企業がタッグを組んで共同開発したその土地は、国有化手続きが完了していなかった。徐旭昇氏の会社を含め多くの民間企業が土地の分譲を受け、政府は後から国有化および関連する諸問題の解決を行うと約束した。
しかし、問題が解決されることはなく、政府の約束は事実上白紙になった。徐旭昇氏は、「土地の問題は何年も放置されたままだった。私が思うに、これは政府と国営企業による精巧な罠のようだった」と述べた。
2022年、地方政府の出先機関が掲示した張り紙にはこのように記載されていた。
「徐旭昇氏の会社を含む民間企業による商業行為は違法であり、農村の集合所有地を無断で強制的に占領した疑いがある」
土地開発を担った政府当局と国営企業は姿をくらませ、当時の担当者の異動を理由に徐旭昇氏ら経営者との接触を拒否した。
民間企業による訴訟の結果、裁判所は、屋外スポーツを企画・運営する会社を一律違法とみなし、各会社の建物は強制的に解体され、賠償金および利益の一部追納を求められた。
260万元(約5200万円)の支払いを命じられた徐旭昇氏は、これは「明らかな略奪だ」として怒りを顕にし、真っ先に控訴を行うと宣告した。しかし、とある著名投資家が徐旭昇氏に接触し、「中共当局に抵抗しない方がいい、今できる最善の選択は支払いを受け入れ、さっさと中国から脱出することだ」と忠告した。
「彼(投資家)が言うには、今の中国(中共)の司法界では道徳が軽視され、今の社会秩序に『悪』をバランスさせる力はない。我々のような一市民にとって最も重要なのは、財産と命を守ることだ」、と徐旭昇氏は語った。
徐旭昇氏から見れば、過去の中国企業の成功は「時代の恩恵にあずかったもの」だった。徐旭昇氏は、「商業の自由とビジネス環境の構築は、政府にとってみれば『与えたり奪ったりできる』恩賜だった。今は、その恩恵を回収する時に至った」と嘆いた。
最近、日本の永住権を獲得した実業家・王慶東氏は、申請に至るまでの苦労を語った。過去1年間、王慶東氏の日本での納税額は20億円を上回り、実に収入の45%を占めた。日本の課税制度においては最大値クラスだ。
しかし王慶東氏は、この納税額は「命を守るため」であり、「背に腹は変えられない」とした。
王慶東氏の妻も「中国にいる頃は恐怖と怒りに苛まれる日々で、あの環境下で潰れない人はいない。海外へ出て心も体も愉悦感を覚え、投獄される懸念もなく寿命が伸びた気分だ」と賛同していた。
台湾出身の証券アナリストが投獄される
陳雨農氏(現在は陳玠儒)は台湾の著名なエコノミストで、2014〜2018年の間はトップクラスのメディア露出率を記録した。
2018年、陳雨農氏は中国市場の好景気を受けて中国大陸に進出、著名証券投資家・廖英強氏が上海で設立した証券取引スクール・上海仟和億教育培訓有限公司に講師として勤務していた。
陳雨農氏の上海での暮らしは高度なストレスとプレッシャーに晒されていた。朝8時から夜の12時まで働き、カリキュラム作成やライブ配信の他、定時後は接待も行った。1週間の間に休みはほとんどなく、働き続けた。
しかし、労働量に見合う収入を得ているとは言い難かった。2017年、中国の上海・深セン両市場で株価が大暴落、陳雨農氏の仕事もダメージを受けた。
陳雨農氏は、上海での収入が台湾より少ないことに気づき、勤務先の社風にも溶け込めないことから、1年契約の満了とともに家族がいる台湾へ帰ることを決意した。
ところがまさに台湾へ帰る準備をしていた2019年の7月、スクールを経営していた廖英強氏が株価操縦を行い、投資家を騙した疑いで逮捕された。
陳雨農氏は会社の潔白を信じ、「上海教育局が発行した金融教育資格証明書は入り口に貼ってあるし、会社は新華社(中国国営メディア)とも協力関係にあった。台湾での経験を踏まえれば、会社が問題に巻き込まれるとは思えなかった」と話した。
陳雨農氏は当初自分は無罪だと思い、聞き取り調査を終えれば帰宅するつもりだった。しかし、結局彼も身柄を拘束された。
「一番辛かったのは、刑務所に入って自分が何の罪を犯したのかわからなかったことだ。上海に来てからおよそ1年間、私は毎日懸命にカリキュラム作りや授業に励み、詐欺も盗みも強盗もせず、1銭たりとも納税を怠らなかった。私にとって刑務所は、殺人や放火、詐欺行為で社会に損失を与えた人が罰と矯正を受けるところだった。しかし私はそこへ送り込まれた」、と当時を振り返った。
中共当局は、身柄の自由という市民の最も重要な権利を蔑ろにする。中共は都合良く法執行をし、刑事訴訟における司法プロセスを完全に無視して身柄を拘束する。
「刑務所に入っても、いつ出ていけるかわからない。はじめ公安の人が3日で解放すると言っていたのに、30日、3か月、そして新型コロナ感染拡大後も1年、2年と月日が過ぎて行った。世の中から取り残されたように、いつになるかわからない出所の日を待った」
希望が見えない中、陳雨農氏の仕事も家庭も崩壊し、自殺すら頭によぎった。しかし、最後は愛おしい子供のことを思い、なんとかして刑務所生活を耐え抜いたという。
終わりに
外国に暮らす人々は、信じられない話だと思うかもしれない。しかし、こと中国の司法環境について言えば、それは残忍極まりない。その根本原因は、法律に縛られることなく欲しいままに権力を支配しようとする、中国共産党という全体主義政権にある。毛沢東は言った、「自分はやりたい放題、好き勝手やってきた男だ」と。
近年、中国共産党は国を挙げて法輪功を迫害しており、それに伴って中国国内の裁判所では多くの「名言」が生まれた。例えば、遼寧省撫順市の地方裁判所で裁判官が弁護士に対し、「この場で法律を持ち出すな」と言い放ち、弁護士は「法律を持ち出すなとは、冗談でも言うつもりか?」と訝った。
江蘇省蘇州市の裁判所では裁判長が、「私に法律の話をしてどうする、ここでは政治が全てだ」と威圧し、四川省西昌市の政法委員会副書記は公然と弁護士に対し「私に法律を説くな。法律など何物でもない」と言い返した。
こうした「法律を無視する」裁判所が標的にするのは決して法輪功だけではない。中国の裁判所は中共の統治機関であり、彼らの任務はあくまで「政治的」なものだ。それゆえ、昨今大陸で起きている様々な事件(四川省江油市で起きた女子生徒いじめ事件、広西省防城港市で起きた職権濫用事件、内モンゴル自治区で国営企業の工場見学中に大学生6人が死亡した事件、杭州で起きた汚水道事件、甘粛省天水市の幼稚園で児童が鉛中毒に遭う事件など)が法的手段を通じて解決されることはほとんどありえない。
中国の学習支援サービス大手、新東方教育科技集団の創設者・兪敏洪氏が中国最大のSNS・微博(ウェイボー)で次のように語った。
「中国社会は不和の空気で充満している。我々は問題の根源を突き止める必要がある。公平さ、公正さが失われ、問題を解決する正規のプロセスがなく、政府当局が擁護し合い、人間が持つべき尊厳がほとんど消え去った社会では、善人もみな悪人となってしまう」
本当にこの言葉の通りだ。
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