スティーブン・ミラン氏がFRB理事に就任 米上院が承認し利下げ観測強まる

2025/09/16 更新: 2025/09/16

米国上院は9月15日、トランプ大統領が指名したスティーブン・ミラン氏のFRB理事就任を、48対47の僅差で承認した。これによりミラン氏は、16日から17日にかけて開催される連邦公開市場委員会(FOMC)前に職務に就くこととなった。

同日、ワシントン控訴裁判所は、訴訟が続く間はトランプ大統領がFRB理事のリサ・クック氏を解任できないと裁定した。クック氏は職務を継続し、FOMCに出席して投票に加わる見通しである。市場やアナリストは、今回のFOMCで2024年12月以来となる利下げを予想しており、0.25%(25ベーシスポイント)の利下げが大方の見方である。

ミラン氏、ホワイトハウス職も維持

ミラン氏はホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)委員長の地位を維持したまま、FRB理事として勤務するために無給休職を取る方針を示した。この姿勢に対し、民主党は金融当局の独立性に疑念を呈している。

上院銀行委員会の民主党筆頭議員エリザベス・ウォーレン氏は、「大統領の主席経済学者と独立機関であるFRB理事を兼任するのは、一日であっても過剰である」と批判した。

また、上院民主党院内総務チャック・シューマー氏も採決前に「ミラン氏には独立性がなく、トランプ政権のFRBでは単なる代弁者にすぎない」と述べた。

ミラン氏は9月4日の承認公聴会で「承認されれば、私は独立して行動し、経済データの分析に基づいて判断する」と語った。

今回の任命は、アドリアナ・クグラー氏が8月1日に退任したことに伴う補充である。任期は来年1月で終了する予定だが、ミラン氏は「長期任期に指名されればホワイトハウス職を辞任する」と表明している。

トランプ大統領は来年2月以降、ミラン氏を14年の正式任期で再指名する可能性があるが、別の候補を選ぶ選択肢も残している。再指名がなければ、ミラン氏は暫定的に職務を続ける可能性がある。ミラン氏は「私の任期は約4か月半にすぎないが、再指名され承認された場合は必ずホワイトハウスを辞職する」と述べた。

市場は0.25%利下げを予想 トランプ氏は大幅利下げを主張

今回のFOMCは特に注目を集めている。市場は2024年12月以来となる利下げを見込むが、具体的な幅は確定していない。

ブルームバーグの投資家・エコノミスト調査によれば、0.25%(25ベーシスポイント)の利下げを予想する声が大半である。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatchツールでも、9月の0.25%利下げの確率は95.9%、2回分の利下げ確率は4.1%と分析されている。

一方、トランプ大統領はより大幅な利下げを求めている。9月14日、ワシントンD.C.に戻る途中で記者団に対し「大きな利下げが実施されると思う」と語り、「今こそが利下げの最適な時期だ」と強調した。

政策シグナルとしては、FRBのパウエル議長が雇用市場の下振れリスクを指摘しており、これが今回の利下げ正当化の理由となる可能性を示唆していた。

控訴裁、クック理事の解任を阻止

ワシントン控訴裁判所は、訴訟が決着するまでトランプ大統領がリサ・クック理事を解任できないと裁定した。裁判所はクック氏の現職継続を認め、同氏は9月16〜17日の会合に出席し、利下げ決定の投票に加わる見通しである。

先月、連邦住宅金融庁が司法省に刑事告発を行い、数年前の住宅購入に関連する行為を「住宅ローン詐欺」と認定してクック氏を告発した。司法省はすでに調査を開始している。

トランプ大統領は当初、クック氏に辞任を求めたが、同氏が拒否したため、8月25日に解任を決定した。クック氏は3日後に連邦地裁に訴訟を起こし、容疑を否認した。

9月9日、連邦地裁のジア・コッブ判事は、訴訟が続く間はクック氏の職務継続を認める裁定を下した。トランプ政権は14日に控訴裁判所に対し、クック氏の解任許可を求めたが、控訴裁判所は15日夜にホワイトハウスの要請を退けた。

陳霆