中共「戦狼外交」欧州で挫折 台湾代表の排除要求を日本が拒絶

2025/09/18 更新: 2025/09/18

中華民国(台湾)駐デンマーク代表の鄭栄俊氏夫妻は2月、日本大使館が主催した徳仁陛下の誕生日レセプションに招かれて出席した。ところが中国共産党(中共)の駐デンマーク大使王雪峰が、台湾代表を退場させるよう日本側に要求。拒否されると憤慨しながら途中離席した。専門家は、日本とデンマークが中共大使の横暴な要求を突っぱねたことは「戦狼外交」への国際的反発を示し、習近平の国際情勢に対する判断力にも疑問を投げかけていると指摘している。

時事評論家の陳怡伸弁護士は、王雪峰大使はレセプションの場で「台湾代表を直ちに退出させなければ抗議する」と言い放った。この出来事はデンマーク紙ベアリングスケ・ティーズネの報道で初めて明らかになったが、中共の戦狼外交の姿勢はすでにデンマーク外交界で知られていたという。

陳氏は、王の行為は外交儀礼に著しく反し、主催国である日本のみならず開催国のデンマークに対しても無礼だと批判。「国際規範や外交慣習を顧みない中共の態度が表れた」と語った。

戦狼外交と習近平の誤算

習近平は政権についた後、「中華民族の偉大な復興を使命とする中共特色大国外交」を掲げ、その中核に「敢えて剣を抜く(強硬姿勢を取る)」という方針を据えた。以降、中共外交官は強硬な発言や積極的な介入を繰り返し、各国の内政にまで踏み込むようになった。これが「戦狼外交」と呼ばれる所以である。

習近平は「東昇西降(東が台頭し西が衰える)」との情勢判断に基づき、アメリカに取って代わり中共を唯一の強国にしようとしている。

「しかし今回、日本もデンマークも一歩も引かず、王大使は台湾代表を指差して威嚇するような仕草を見せた末、結局は居心地悪そうに退場せざるを得なかった」

陳氏は「この出来事は日本とデンマークが中共の本性を見抜いた証拠であり、戦狼外交は国際社会の怒りを買っただけだった。習近平の国際情勢認識の誤りが浮き彫りになった」と指摘した。

忠誠を示すためのパフォーマンスか

王大使は2024年に着任したばかりであり、今回の行動は習近平への忠誠を誇示するためのパフォーマンスだった可能性があると陳氏は分析している。

近年、中共内部では国防相や軍幹部の失脚が相次ぎ政局が不安定化している。王は外交イメージを損なってでも、習近平に忠誠を示さざるを得なかったのではないかという。

台湾外交部の反応

台湾外交部は15日、「台湾と各国の正常な交流を妨害する中共外交官の粗暴で卑劣な行為」を強く非難する声明を発表した。「主催国をまったく尊重せず、国際的な場での基本的礼儀を踏みにじる戦狼外交の横暴な態度は、民主社会の価値観に反する」と批判した。

外交部はさらに「こうした露骨で無礼な行為は国際社会の強い反感を招き、文明国には受け入れられない」として、国際社会に一致して中共の「いじめ外交」を拒絶し、厳しく非難するよう呼びかけた。

中共の「台湾排除」の本質

陳氏は、中共が外交上あらゆる場面で台湾を抑え込もうとする真の理由は、国際社会が「中華民国」を承認する動きに転じることを避けるためだと説明した。

台湾の正式な国名は「中華民国」であり、清朝の宣統帝が退位した後、そのすべての権利と義務を継承した。これは「国家承継」と呼ばれる。一方、中共は武装蜂起によって中華民国政府を転覆し、1949年に「中華人民共和国」を自称して、中華民国政府に取って代わり「中国」という国家を代表すると主張した。

陳氏によると、中共が恐れているのは、国際社会が「中華民国」を承認し「二つの中国」が形成される事態であり、さらには「中華民国が中国の唯一合法政府」と認められる可能性である。これは中共にとって最も不都合な局面だ。そのため、中共が台湾と他国の交流を常に抑え込んでいるのは、実際に自らの正統性に対する不安が露呈しているのだという。

鍾元
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