李克強元中共首相が憲法改正を批判したとされる直筆の原稿が公開され、彼の突然の死因や権力闘争の背後に新たな疑念が浮上している。習近平による憲法改正以降、中国共産党内の緊張が高まり、李克強の抵抗の痕跡について解説する。
中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が間近に迫る中、中国共産党(中共)内の権力闘争は極限まで激化している。このような情勢下、上海の企業経営者でありインフルエンサーの胡力任氏は10月4日、自身のネット番組「真実の中国」において、前中共首相の李克強が2018年、習近平による憲法改正後に記した直筆原稿を公開した。
李克強直筆原稿の内容とその意味
その原稿において李克強は次のように記している――「いかなる国家においても、憲法を恣意的に改正することは建国の基盤を揺るがすことに等しい。権力が制約を失えば社会の信頼は必然的に崩壊し、制度もまた形骸化する」文化大革命期には中共の元党首毛沢東の個人的な意思が制度の上位に置かれ、民族全体が甚大な代償を払った。習近平による憲法改正は、社会を混乱と恐怖に陥れることになる――と述べたのである。
記事によれば、李克強はこの危険性を理解していたがゆえに反対票を投じたという。その一票の意味を十分に理解した上で、すでに覚悟を決めていたとされる。
李克強が言及した投票は、2018年3月11日に開催された第13回全国人民代表大会(全人代)第1回会議において行われたものである。この会議では「中華人民共和国憲法修正案」が採決され、賛成2958票、反対2票、棄権3票、無効1票、賛成率99.7%超で可決した。憲法改正により国家主席の任期制限は撤廃され、習近平が無期限で再任可能となり、独裁的支配を長期化するための憲法的根拠が与えられた。
李克強は原稿の中で、自身の懸念と個人的な抵抗の思いを記している。また、習近平との非公式会談において憲法改正に反対したことで習近平の怒りを買い、警告を受けたと述べている。さらに、憲法改正に異議を唱えることが自らに不利益な結果をもたらすと確信していたとも語っている。
胡力任氏は番組内で次のように主張した。憲法改正を強行して以降、習近平は権力を極端に集中させ、制度よりも個人崇拝を優先するようになった。その結果、中国経済は全面的に衰退し、国民生活は困窮に陥った。習近平は「強軍」や「大規模の軍事パレード」といった名目で人民や世界を威嚇し、中国を戦争の瀬戸際へと追いやっているという。また、ロシア、北朝鮮、イランなどの体制と連携し、文明社会に対抗する「暗黒同盟」を築こうとしていると指摘した。
李克強の死因を巡る
さらに胡力任氏は、李克強の突然の死についても言及した。それは表向きには「事故」とされ「謎」に包まれているが、人々はその真相を理解していると述べた。中共の冷酷な権力闘争において、いわゆる「事故」はしばしば冷たい偽装に過ぎず、中共の集権体制下では正義や良心を持つ者が生き延びる余地はない。李克強は権力に呑み込まれた最初の犠牲者ではなく、最後の犠牲者にもならぬ運命にあると語った。
前首相の李克強は2023年10月27日、上海市内で68歳で急逝した。死因は心筋梗塞による心臓発作で、滞在先であった上海東郊賓館で泳いでいる最中に発作が発生した。救急搬送の末、約10時間にわたる救命措置が施されたが効果はなく、翌日午前0時10分に死亡が確認された。
胡力任氏は今年7月時点で、李克強の死因について言及しており、水中での感電「水中電撃」により命を落とした可能性があるとしている。李克強は生前、多くの個人的ノートや講演記録、書簡、原稿を残しており、その数は500点を超える。一部は親しい友人によって密かに保管されているとされ、胡氏は今後これらの資料を順次公開していく予定である。

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