「中共内紛が米中交渉に波紋」米財務長官が警告

2025/10/15 更新: 2025/10/15

アメリカのベッセント財務長官は、中国共産党内の部門間対立が米中交渉を複雑化させていると明かした。中国がレアアース輸出規制を強化したことで米中関係に緊張が走り、トランプ大統領は100%関税で応戦の構えを見せる。

中国共産党(中共)当局が突如、レアアースおよび関連技術の輸出規制を強化すると発表したことを受け、ドナルド・トランプ米大統領は即座に対抗措置として中国製品への関税を100%に引き上げる方針を示した。これに対し、中国商務部は「輸出規制は輸出禁止を意味しない」と釈明し、関係緩和を意図した譲歩の動きとの見方が広がった。

ベッセント財務長官はインタビューで「中共政府内の部門間対立が米中交渉に影響を及ぼしている」と指摘。

対米姿勢の急転換 内紛の影

中共は10月9日、国家安全上の理由を挙げ、5種類のレアアース元素と関連材料・技術の輸出規制を大幅に拡大すると発表した。さらに12月1日からは、中国のレアアース技術を使用する外国企業に対しても厳格な審査を実施するとしている。

これに対しトランプ大統領は即座に報復措置を発表。11月1日以降、中国製品への関税を100%に引き上げるとともに、重要ソフトウェアの対中輸出も規制対象に加える方針を明らかにした。米中関係は一時的に強い緊張をはらむ展開となった。

米国が100%関税方針を打ち出した後も、中共側は報復措置を控え、国営メディアも沈黙を続けた。2日後の10月12日、中国商務部は書面声明を発表し、「輸出規制は輸出禁止ではない」と強調。そのうえで「産業供給網への影響は十分に評価しており、影響は極めて限定的である」と説明した。また報道官は「関税戦争を望まないが、恐れもしない」と述べた。

一方、ベッセント米財務長官は同日、「習近平はレアアース規制の発表を事前に把握していなかった可能性がある」と発言し、中共官僚機構の内部対立に言及した。

「中国の財務部門と商務部門の間には明確な矛盾が存在する。特に李成鋼を中心とする商務部は、より挑発的な姿勢を取っている」とベッセント氏は英紙『フィナンシャル・タイムズ』に語った。さらに「商務部と国家安全部が強硬派であり、特に国家安全部が経済面でより大きな影響力を持っている」と述べた。

米政府関係者によると、中共副首相・何立峰の直属部下で主任貿易交渉官の李成鋼は、今夏の米中協議の場で「思い通りに進まなければ、米国は“地獄の炎”に直面する」と発言し、威圧的な姿勢を示したとされる。ただし当時の発言にはレアアース規制への具体的言及はなかったという。

会談実現は不透明 中共内部で権力闘争

中共がレアアース輸出制限を拡大したことにトランプ氏は強く反発し、10月末に韓国で予定されているAPEC首脳会議での習近平との会談中止を示唆した。

しかしベッセント氏は「直前の週末に米中両国間で集中的な協議が行われた」と述べ、「首脳会談は予定どおり実施される見通しだ」との見方を示した。

トランプ大統領は10月12日、自身のSNS「Truth Social」で「習近平は非常に困難な局面にある」と投稿したが、その具体的な内容には触れなかった。

中国共産党第20期四中全会は10月20日に開幕する予定である。党内では指導部の派閥抗争が激化し、中央委員や軍事委員会メンバーの複数が失脚したとの観測もある。これを受け、同会議で人事刷新が行われる可能性が指摘されている。習近平が首脳会議に予定通り出席できるかどうかもなお不透明である。

米中関係の先行きに不安 「停戦協定」期限迫る

米中双方が今年上半期に結んだ関税戦争の一時停戦協定は、11月10日に期限を迎える見通しである。両国は次の交渉ラウンドに向けた準備を進めており、これまで中国は対米レアアース規制を一部緩和、米国も一部の対中技術制限を緩めてきた。トランプ大統領はこれまで「レアアース問題はすでに解決済みだ」と繰り返し強調していた。

しかし米政府は今回のレアアース規制強化を「合意違反」かつ「信頼を損なう行為」とみなしている。

英『フィナンシャル・タイムズ』(10月14日付)は、ベッセント財務長官が13日の発言で「今回の措置は中国経済の脆弱さを如実に示している。中国は全世界を巻き込もうとしている」と述べたと報じた。

また同長官は「中国経済は景気後退局面にあり、輸出によって難局を打開しようとしているが、それは国際的地位をさらに損なう結果を招くだろう」と警告した。

米政府高官によると、トランプ大統領が追加関税を決断したのは、中国側が交渉再開を拒否したことが主因だったという。

「レアアース輸出規制が公表された後、我々は36時間にわたり交渉の意向を伝えたが、彼らは応じなかった。そのため我々が追加関税の声明を発出すると、突如『交渉したい』と申し出てきた」と述べた。

関係筋によれば、米国は交渉決裂に備えて複数の対抗措置案をすでに策定済みである。さらに、米政府は今後、中国向けにソフトウェアを輸出する企業すべてに対し事前許可の取得を義務づける方針を検討しており、中国産業界に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

寧海鐘
中国語大紀元の記者。
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