トランプ大統領は10月15日、中央情報局(CIA)に対し、ベネズエラで秘密作戦を実施する権限を与えたことを明らかにした。さらに、同国での地上作戦の可能性についても検討していることを示した。
トランプ大統領はホワイトハウスのオーバルオフィス(大統領執務室)で記者団に対し、「機密指令をすでに下した」と述べた。CIAへの指令は、アメリカがニコラス・マドゥロ政権への圧力を一段と強める動きとみられる。
トランプ大統領は許可を出した理由について、「主に二つある。第一は、彼らが刑務所の囚人をアメリカに送り込んできたこと。もう一つは麻薬問題であり、大量の麻薬がベネズエラからアメリカへ流入している。多くは海上ルートによる密輸だ」と説明した。
トランプ大統領によると、米政府はベネズエラに対してさらなる軍事行動を検討中であり、「地上作戦の可能性も探っている」と述べた。ただし、CIAがマドゥロ大統領本人に対して直接行動を取る権限を得ているかどうかについては言及を避けた。
麻薬密輸対策で軍事行動強化
米軍はここ数週間、カリブ海で麻薬密輸に関与しているとみられる船舶に対し、複数の急襲作戦を実施している。9月初め以降、少なくとも5隻を撃沈し、27人が死亡した。そのうち4隻はベネズエラから出航したものだという。
トランプ大統領は「過去30年にわたる従来の拿捕方法は、密輸阻止にまったく効果がなかった。我々は30年も試みてきたが無意味だった。彼らの船は非常に高速で、世界でも有数のスピード艇だ。しかし、ミサイルの速度には到底かなわない」と語り、より強硬な手段の必要性を強調した。
米司法省はマドゥロ氏を「世界最大級の麻薬王の一人」として訴追しており、麻薬組織と結託して大量のフェンタニル混入コカインをアメリカに密輸したと非難している。米政府はマドゥロ氏の逮捕・有罪立証に繋がる情報提供者に対し、5千万ドルの懸賞金を懸けている。
マドゥロ氏「政権転覆望まず」
一方、マドゥロ大統領は同日、トランプ大統領の決定について直接的な反応は示さなかったものの、アメリカに対しベネズエラへの戦争行為を行わないよう呼びかけ、平和的解決を求めた。
マドゥロ氏はテレビ演説で「我々は政権転覆を望んでいない。それはアフガニスタン、イラク、リビアなどで起きた、終わりのない失敗の戦争を思い起こさせる」と述べた。さらに「CIAによるクーデターには断固反対する」と強調し、アルゼンチンの軍事独裁時代に約3万人が行方不明になった事件や、1973年のチリでのクーデターを引き合いに出した。
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