マドゥロ氏拘束で激変する世界秩序 米国の強硬戦略が招く中国の孤立

2026/01/14 更新: 2026/01/14

ベネズエラの元指導者ニコラス・マドゥロ氏の拘束は世界中に衝撃を与え、中国と同盟関係にある権威主義体制に新たな圧力をかけている。

中国の長年のパートナーであるイランでは、状況が特に緊迫している。同国は活動家たちが「ここ数十年間で最も脆弱な時期」と呼ぶ事態に直面している。米国に拠点を置く監視団体「イラン人権活動家通信(HRANA)」によると、1月11日時点で、イラン全31州の580カ所以上で抗議デモが発生した。

1月2日、トランプ米大統領はSNS「トゥルース・ソーシャル」上でテヘランに対し、イラン当局が「平和的なデモ参加者を暴力的に殺害」すれば、米国は強力に報復するという厳しい警告を発した。この声明は、マドゥロ氏拘束作戦のわずか一日前になされたものである。

中国が見せる明らかな動揺

中国の国営メディアは、イランとベネズエラの比較を避けようと努めており、テヘランは「カラカスではない」こと、そしてワシントンがベネズエラでの作戦を他で再現することは不可能であると主張している。しかし、中国共産党(中共)政権の反応は異なる実態を物語っている。

マドゥロ氏拘束後、中国外交部は「深い衝撃」を受けたとの声明を出した。この表現は中共政権が滅多に使うものではなく、これまでは主に重大なテロ攻撃に対する反応として使われてきた。

1月5日の記者会見では、外交部の林剣報道官が、ベネズエラに配備された中国製レーダー防衛システムの不具合について問われ、明らかに狼狽した様子を見せた。数秒間沈黙した後、質問とは無関係な回答を行った。また、当時ベネズエラを訪問していた中国特使について問われた際も、回答までに50秒近く沈黙した。

米国在住の中国分析家、横河(Heng He)氏は、ベネズエラでの急激な情勢変化により、中共政権は「完全に自失状態にある」と記している。

2025年11月18日、北京の外務省の建物の外を警備する準軍事警察官(Pedro Pardo/AFP via Getty Images)

ワシントンの読み誤り

軍事技術アナリストであり、YouTubeチャンネル「マーク・スペース」の司会者でもあるマーク・カオ氏は、中共がトランプ政権を根本的に見誤ったと指摘する。

「中共は、トランプ氏がベネズエラに対して軍事作戦を敢行する勇気はないと信じていた。マドゥロ氏の拘束は、彼らの顔をひっぱたくようなものだ」と同氏は語る。

カオ氏によれば、ラテンアメリカにおける中国の影響力はその大半が経済的なテコ入れに依存しており、実行可能な軍事的・外交的手段をほとんど持っていない。

「彼らには(その地域で)パワーを投影する能力がない。そのため、トランプ氏は動かないだろうと決め込んでいたが、実際には動いた。それが中共を狼狽させているのだ」

この余波はすでに地域の勢力関係を変えつつある。例えば、コロンビアの大統領はトランプ氏に積極的に連絡を取り、ワシントン訪問に意欲を示している。一方でキューバは、体制の安定を脅かしかねない深刻な経済危機に直面している。

ベネズエラ、イラン、キューバという中国のパートナー諸国が政治的不透明感に直面する一方で、中共自体も経済難に喘いでおり、彼らを支える資源が乏しくなっている。

「彼らは弟分たちが次々と倒れていくのを傍観するしかない。これは中共のグローバルな影響力を著しく弱める可能性がある」とカオ氏は述べた。

また、マドゥロ氏拘束の影響はラテンアメリカに留まらない。西半球が安定すれば、米国はインド太平洋地域により多くの関心と資源を再配分できるようになる。これは中共政権が最も恐れる事態である。

ゲームのルールの変更

中国の不安をさらに煽っているのは、米国の戦略が根本的に転換したことだ。トランプ政権の最近の動きは、中国に支えられた権威主義体制に対抗するには、制裁や外交だけでは不十分であるとの結論をワシントンが出したことを示唆している。

トランプ政権が掲げる基本原則には、外交を巡る他国への謝罪拒否、グローバリズムによる国際協調路線の排斥、軍備の抜本的再建、「力による平和」の追求、そして現代版「モンロー主義(米国第一主義による近隣外交)」の復活が含まれる。

1月10日のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、トランプ氏は大国間競争の結果を最終的に決めるのは、国際法や条約ではなく「国家の力」であると明言した。

1月7日、トランプ氏は「もはや米国の利益に資さない」とする66の国際機関から米国を脱退させる覚書に署名した。その半数近くが国連関連の組織である。専門家は、この動きは国際機関を利用して世界の規範を形成し、他国に影響を与えようとする中国の試みを無効化するものだと分析している。

トランプ大統領(右から2番目)は、1月3日、フロリダ州パームビーチのマー・ア・ラゴで、ベネズエラにおける米軍の行動後、ダン・ケイン統合参謀本部議長(左から2番目)が記者会見するのを見守っている(Jim Watson/AFP via Getty Images)

抑止力としての「武力」

カオ氏は、マドゥロ氏拘束作戦こそが、なぜ制裁や外交だけでは権威主義体制を抑止できないのかを証明していると語る。

「トランプは『斬首作戦』を用いることで、瞬時に現実を塗り替えた。ワシントンは今後、こうした戦術への依存度を高めていくだろう」

台湾の国防安全研究院の沈明室(Shen Ming-shih)研究員も、この評価に同意する。同氏は、トランプ氏が「民主主義の推進や外交だけでは深刻な紛争を解決できない」と長年考えてきたと指摘する。

「トランプ氏は、核開発を巡るイランや北朝鮮への制裁、あるいはクリミア占領を巡るロシアへの制裁が、結局のところ意図した効果を上げられなかったことを熟知している。制裁下にあっても、ロシアはウクライナに侵攻する能力を保持し続けていたからだ」

沈氏によれば、トランプ氏はマドゥロ氏に対して行動を起こすまで、数カ月間にわたり適切なタイミングを待っていたという。

「もしイランの混乱がさらに拡大するか、宗教指導者層に亀裂が入れば、米国はそこでも行動を起こす可能性がある」

「東昇西降」の物語への挑戦

中国共産党の党首である習近平と体制側の宣伝メディアは、長らく「東昇西降(東が昇り、西が衰退する)」というスローガンを掲げてきた。しかし、マドゥロ氏拘束後、この物語は説得力を失っている。

カオ氏は、アメリカ衰退の物語は過去の政策ミスに起因するものであり、構造的な弱さではないと指摘する。1970年代以降、ワシントンは中共政権と妥協して市場を開放し、その過程でアメリカの製造業を空洞化させてしまったに過ぎないという。

「習近平は情勢を見誤った。彼は権力の集中が西洋を圧倒できると考えたが、真の軍事的・技術的優位がどこにあるのかを理解していなかったのだ」

沈氏は、バイデン政権下において中共政権は「米国は衰退している」との結論を出していたが、トランプの再登板によって経済と軍事の両面を強化する方向へシフトしたと述べた。

「国が弱いときは軍事行動を避けるものだ。トランプが行動を厭わない姿勢を見せていることは、米国が依然として世界最高の軍事大国であるという自信の表れであり、中国はそれよりも15年から20年遅れている」

ドミノ倒しの始まりか?

マドゥロ政権の崩壊後、トランプ氏はカリブ海のもう一つの共産主義の拠点であるキューバに警告を発し、さらに全国的な抗議デモに直面している主要な産油国イランに対し、二次的制裁を課した。

このような状況下で、中国は守勢に回らざるを得ない。崩れゆく親中派諸国との連携を立て直す力も、世界経済の激動を制御する手段も、今の中国には残されていないからだ。

沈氏は、ワシントンの「西半球第一主義」戦略、あるいはトランプ氏が呼ぶところの「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」が、中国を追い出すように設計されていることを中共政権は理解していると指摘した。

「ベネズエラの次はキューバだ。同島には米国を標的にした中国の諜報施設がある。もしキューバ問題が解決されれば、ラテンアメリカにおける中国の影響力は劇的に縮小するだろう」

「そして、もしイランも中国の軌道から外れれば、中国はさらに孤立を深めて経済的な困窮に陥り、軍事的な脆弱(ぜいじゃく)さを露呈することになるだろう。その結果、グローバルサウス諸国からの支持を取り付けることも困難になるはずだ。次の焦点は、米国がどこまで踏み込むかだ。ワシントンは、インド太平洋においても、世界的にも、中国共産党が脅威であり続けることを許さないだろう」。

中国関連の話題に焦点を当てる大紀元の寄稿者です。
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