高市早苗氏は今年4月、現代の国際社会において自国のみで安全保障を完結できる国は存在せず、日本、台湾、ヨーロッパ、オーストラリア、インドなどの自由民主主義国家が連携し、準軍事同盟の形成を視野に共同防衛体制を構築することが不可欠だと強調した。
高市氏は4月28日に台湾で開催されたインド太平洋戦略シンクタンクの「2025国際政経フォーラム」に出席し、前経済安全保障担当大臣として、台湾の立法委員である王定宇氏やマクロ経済学者の呉嘉隆氏らと意見交換を行った。
高市氏は、多くの日本国民は日米安全保障条約について、日本が攻撃を受けた場合に米軍が前面で戦い、日本は後方支援を行うとの認識を持っていると指摘。その上で、条約第5条は日本を防衛の主体と位置づけており、まず日本が自ら防衛行動を取り、その後に米軍が支援する仕組みであると説明した。攻撃への対応も同様に、日本が主導し米軍が協力することを前提としていると明らかにした。
さらに、アメリカのトランプ大統領が近年、場面によって異なる発言を繰り返しており、日本国内では「アメリカは本当に日本を防衛するのか」との不安や疑念が広がっていることに言及した。
そして、自身が1980年代にワシントンで勤務していた当時から、アメリカ議会では「アメリカは日本防衛の責任を負うべきか」を巡って意見が分かれていたと振り返り、その状況は現在と大きく変わっていないと指摘。したがって、日本は自ら防衛力を強化し、自力で国土を守る体制を構築する必要があると訴えた。同盟国であっても、経済状況や世論、国際情勢の変化によって方針が左右されることを念頭に置くべきだと述べた。
高市氏は、台湾と日本の安全保障環境は極めて類似しており、現代の国際社会では単独で国家安全を確保することは不可能であり、国際連携こそが唯一の選択肢だと強調した。その上で、トランプ氏の発言が日々変化する状況を踏まえつつも、日本、台湾、ヨーロッパ、オーストラリア、インドなどの自由民主主義国家は準軍事同盟の構築を視野に防衛協力を進め、相互の安全を確保すべきだとの考えを示した。
また高市氏は、軍事分野に加えて経済安全保障も極めて重要だと指摘し、情報共有や人的交流を通じた協力の深化が不可欠であると述べた。特に台湾の半導体産業は世界をリードしており、先端半導体を大量生産できるのは台湾のTSMCと韓国のサムスンのみであるとし、今後は日米韓台の協力を一層強化し、経済安全保障の基盤を固めるべきとの見解を示した。
最後に高市氏は、日本と台湾は半導体、AI、宇宙開発などの分野で世界最先端の技術力を有し、国際社会に不可欠な存在であると位置づけたうえで、これらの技術力は安全保障の強化に資するとともに、国際的な発言力の向上にもつながると指摘。国防と科学技術の両面で、日本と台湾は世界から尊敬される国となるべく努力する必要があると訴えた。
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