トランプ米大統領は東京で、高市早苗首相と初の首脳会談を行い、両国が「日米同盟の新たな黄金時代」に入ると宣言した。両首脳は、重要鉱物の供給網強化や安全保障分野に加え、AI、量子科学、核融合エネルギー、宇宙など最先端技術を中心とした戦略協力を定めた「技術繁栄協定(Technology Prosperity Deal)」の覚書に署名した。
この覚書は、ホワイトハウスのクラツィオス科学技術政策局長と小野田紀美科学技術相が共同署名したもので、アメリカと日本が「自由で開かれたインド太平洋」と国際秩序を維持するために、技術覇権の分野で連携を深めることを明確にしている。
覚書は、「先端技術は両国の将来の繁栄にとって戦略的に極めて重要であり、信頼できるパートナーとの技術協力は、インド太平洋地域の安定を支える鍵となる」と強調している。
今回の協定の柱となるのは、以下の7分野。
AI
両国は、基礎研究から産業応用に至るまでの全分野(フルスタック)における協力を推進し、高性能計算(HPC)、先端半導体、量子計算基盤といった重要技術の分野で連携を強化する。また、日米主導によるAI政策枠組みおよび技術輸出管理を推進し、安全で信頼できるAIエコシステムの構築を目指す。
アメリカ国家科学財団や日本の理研・JSTなどが連携し、AI政策や産業標準の共同策定を進める。また、子供のデジタルウェルビーイングや将来の労働市場に対応する教育にも焦点を当て、人材育成と倫理的AI活用の促進を図る。
科学技術リーダーシップの実現
両国は重要かつ新興技術の研究開発において、研究セキュリティに関する共通の目標が極めて重要だと認識し、自国の技術と人材を保護するための協力を一層深化させる意向だ。
研究セキュリティ分野での連携を進め、大学、研究機関、産業界における能力構築の支援を通じて、研究活動に対する脅威を特定・軽減するとともに、同様に厳格な実務を共有する同盟国やパートナー国との協働を通じて、信頼できるイノベーションのエコシステムの形成を促進する。
通信・6G
日米は、Open RANやAI-RANなどの先端技術を活用し、信頼性の高い通信サプライチェーンの構築で連携を強化する。米国NTIAと日本の総務省を中心に、Beyond 5G/6G、オールフォトニクス・ネットワーク、量子ネットワークの共同研究開発を推進し、両国の優先事項を反映した国際通信標準の形成と、信頼できる技術ソリューションの迅速な市場導入を後押しする。また、日本の地理的優位性を踏まえ、インド太平洋地域の海底ケーブル分野での協力も拡大する方針だ。
医薬品・バイオ技術のサプライチェーン
日米は脆弱性の特定と対策の加速に取り組む方針だ。両国は、研究開発の全段階にわたり、大学、政府、産業界に加え、受託研究機関や受託製造機関も含めた関係者との協力を強化し、強靭で健全な経済の実現に資するサプライチェーンの安全保障を推進する。
量子技術
日米は、量子性能の評価、量子アルゴリズムの開発、実環境における技術課題の克服、科学的発見の促進に向けた協力を強化する。次世代の科学者・技術者の育成も支援し、信頼できるエコシステム構築に向け、技術およびサプライチェーンの安全保障に関する取組を連携させる方針だ。
核融合エネルギー
核融合の商業化に向け、日米は核融合材料や燃料サイクル、高磁場マグネットなどで連携し、JT-60SA試験装置を含む研究開発を推進することで、世界をリードする核融合産業基盤の確立を図る。
宇宙
日米は、宇宙および航空分野における協力を継続・強化し、国際宇宙ステーション(ISS)、アルテミス計画による月面探査、商業宇宙活動の拡大などで連携する方針だ。また、宇宙ゴミの低減や除去、宇宙状況把握(SSA)の国際的な協調強化に向けた協力も推進する。
「国家の繁栄の鍵は技術」―新たな同盟の形
覚書には資金拠出の義務は含まれず、協力は各国の国内法に基づき実施されるが、それでもなお、日米が「信頼できる技術のリーダーシップ」という共通の理念を共有していることを明確に示すものとなっている。
両国は、標準化、産業協力、国際連携を通じて自国の繁栄を追求するのみならず、グローバルな技術ルールの形成を主導し、次世代に向けて安全・革新・持続可能な未来の基盤を築くことを目指している。
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