トランプ米大統領 シリア大統領と会談 「シリアの成功に全力を尽くす」

2025/11/11 更新: 2025/11/11

トランプ米大統領は11月10日、ホワイトハウスでシリアのアフマド・シャラア大統領と会談した。1946年にシリアがフランスから独立して以来、同国の首脳がホワイトハウスを公式訪問するのは初めて。

通常と異なり、ホワイトハウスは今回の訪問を極めて控えめに扱った。歓迎式典は行われず、シャラア氏は側面の入口から入館した。報道陣はその姿を一瞬しか確認できなかった。

一般的に、外国首脳の訪問時には記者団が大統領執務室(オーバルオフィス)に入ることが許されるが、今回は取材が全面的に制限された。

制裁解除と関係改善が主要議題

シャラア氏の主な訪米目的の一つは、アメリカによる対シリア制裁の全面解除を求めることだった。
両首脳の会談中、米財務省は新たな命令を発表し、5月23日に公布された「シーザー法(Caesar Act)」の制裁免除措置を改定。新命令により、従来の免除期間がさらに180日延長された。

会談後、トランプ氏は記者団に対し、「私は彼と合意した。彼は非常に力強いリーダーであり、困難な環境から来たタフな人物だ。私は彼を尊敬している」と述べた。

さらに、「新しいシリア大統領とは良好な関係を築いている。シリアは中東の重要な一部であり、その成功のためにできる限りの支援を行う」と語った。

また、「シリアは中東で大きな役割を果たす国であり、かつては多くの医師や法律家、知識人を輩出した偉大な国だ。彼ならこの国を立て直せると確信している」と強調した。

シリア側も関係強化に意欲

シリア大統領府は声明で、会談では二国間関係の強化や地域情勢について協議したと発表した。また、両国の外相も同席していたという。

トランプ氏は政策の詳細には触れなかったが、「近くシリアに関する発表があるだろう」と述べ、「我々はシリアが成功することを望んでいる。彼(シャラア大統領)はそれを実現できる人物だ」と語った。さらに、「彼には波乱の過去があると言われるが、誰にでも過去はある。むしろ困難を経験してこそ成功できる」とも述べた。

シャラア氏は、かつてアルカイダ系組織の一派を率い、長年にわたりイスラム国(ISIS)と敵対してきた。

2016年にアルカイダと決別し、2024年12月には率いる武装勢力によってバッシャール・アサド前政権を潰した。アサド家による50年以上の支配を終わらせた。

政権掌握後、シャラア氏は内戦で荒廃した国の再建に向けて国際支援を求めており、自らを「穏健派指導者」として印象づけようとしている。

米国とシリア、協力関係を拡大へ

トランプ氏とシャラア氏は今年5月、サウジアラビアで初会談を行った。

6月30日には、トランプ氏が大統領令に署名し、アサド政権時代に導入していた対シリア制裁を正式に終了。新政府の和平と再建を支援する姿勢を明確にした。

ブルームバーグによると、アメリカ政府関係者は、シリアがアメリカ主導の「対イスラム国(ISIS)連合」に参加する方針を示したと明らかにした。

この決定は、両国の関係改善が一段と進むことを意味している。

一方で、トランプ氏はシリアや中東諸国に対し、イスラエルとの関係正常化を進める「アブラハム合意」への参加も促している。
これらの取り組みは、トランプ政権の外交政策の優先課題の一つとなっている。

ブルームバーグは、アメリカのシリア問題担当特使トム・バラック氏の発言として、
「アメリカによるシャラア政権への支持は、イランのシリアへの影響力を抑え、ISISの再興を防ぐうえで極めて重要だ」と伝えた。

ISIS対策連合への参加は、シャラア氏が9月の国連総会で掲げた構想「シリアを『危機の発信源』から『地域の平和の担い手』へと転換する」という目標を後押しするものとなる。シリアは今、国際社会の中で信頼を回復し、地域の安定に貢献する国家を目指している。

張婷
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