中国共産党(中共)が日本への経済的圧力を強めている中、アメリカは日本を明確に支持する姿勢を示した。北京が日本産海産物の輸入を再び禁止したと報じられたことについて、ジョージ・グラス駐日米国大使は11月20日、X(旧ツイッター)で次のように述べた。
「北京にとって、強制的な手段は簡単にはやめられない悪癖だ。しかし、前回の中共が理不尽に日本産海産物の輸入を禁じたときも、アメリカは日本をしっかりと支えた。今回も同盟国である日本を、変わらず強力に支援する」
複数の日本メディア(NHKなど)が18日に報じたところによると、中国側は福島第一原発の処理水放出に関する評価を理由に、日本産海産物の輸入禁止を日本政府に通告したという。中国外務省の毛寧報道官は同日の定例会見で「日本側が約束した技術資料を提出していない」と主張し、さらに高市早苗首相の台湾に関する発言を挙げて「たとえ輸入できたとしても、中国市場では売れない」と牽制した。
一方、日本政府の木原稔官房長官は19日の会見で「中国側から禁輸に関する正式な通知は一切受けていない」と否定している。
中国はかつて日本最大の海産物市場だった
2022年の財務省データによると、香港を除く中国本土は日本産海産物の最大の輸出先で、輸出総額の5分の1以上を占めていた。しかし2023年8月、日本が福島第一原発の処理水を海洋放出開始した直後に中国は全面禁輸に踏み切った。中国税関は「放射能汚染のリスクがある」と主張したが、科学的根拠は示していない。
日本政府と国際原子力機関(IAEA)は一貫して「処理水は安全基準を満たしている」と説明している。約1年にわたる交渉の末、2024年9月に両国は処理水放出に関する合意に達し、中国は一部禁輸を解除。6月末には10都道府県を除く地域からの輸出が再開された。
それでも実際の状況は厳しい。農林水産省によると、中国向け輸出再開を申請した約700の日本国内施設のうち、承認されたのはわずか3施設だけだ。2025年現在、中国本土への海産物輸出額は2022年比で94%も激減している。

アメリカが新たな最大市場に
中国の禁輸が続く一方で、アメリカが日本産農林水産物の重要な受け皿となっている。2024年の公式データでは、米国向け輸出額は前年比18%増の2429億円(約16億ドル)に達し、20年ぶりに米国が日本にとって最大の輸出先となった。
高市首相の発言が引き金に
今回の禁輸再開の背景には、高市早苗首相の台湾に関する発言がある。首相は今月上旬の国会で「台湾への武力攻撃は日本の存立危機事態に該当し得る」と述べた。これは日本が長年維持してきた立場と何ら変わらないものだが、中国側は強く反発している。
18日、北京で行われた日中局長級協議で、日本外務省の金井正彰アジア大洋州局長は中国側に「政府の立場に変更はない」と伝え、あらためて抗議した。
さらに、在大阪中国総領事の薛剣がXに投稿した「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」という暴力的な表現も問題となっている(投稿は既に削除)。日本国内では自民党の小林鷹之政務調査会長らが「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)宣言をして追放すべきだ」と強く求めている。

観光・映画にも波及する圧力
中国外交部は先週、日本への渡航注意を呼びかける「安全提醒」を発出し、中国国民に日本旅行の再考を促した。日本側は「根拠のない主張」と反発しているが、10月の訪日外国人客のうち中国本土・香港からの観光客は23%以上を占めており、観光業界への打撃が懸念されている。
さらに中国当局は「日本の映画に対する中国観客の感情」を理由に、『クレヨンしんちゃん』最新映画や『はたらく細胞』実写版などの上映を延期したと国営CCTVが報じている。
「経済的に依存するのは危険」 日本政府も警鐘
こうした一連の報復措置は、2010年の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後に稀土類輸出を停止された事例を想起させる。当時も中国は経済カードを切って日本を圧迫した。
小野田紀美経済安全保障担当相は18日の会見で、気に入らないことがあればすぐに経済的威圧に出る国に過度に依存すれば、サプライチェーンだけでなく観光にもリスクが生じる。そういうリスクを抱える国への経済的依存は危険だと認識する必要があると述べた。
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