アメリカ中小企業庁 4300社に支援制度不正で財務記録提出命令

2025/12/08 更新: 2025/12/08

アメリカ中小企業庁(The U.S. Small Business Administration:SBA)は12月5日に声明を発表し、8(a)ビジネス開発プログラムの全参加企業に対し、同プログラムが不正と乱用にまみれているとの懸念を踏まえ、財務記録の提出を命じたと明らかにした。

8(a)ビジネス開発プログラム(以下、8(a)プログラム)は、アメリカ中小企業法の第8条(a)項に基づき設けられた制度であり、社会的・経済的に不利な立場にある小規模企業が、研修やワークショップ、指導を通じて事業を発展させることを支援する制度である。参加企業は連邦政府調達市場での契約機会にもアクセスできる。

声明によれば、「納税者と真正な中小企業を守るため、不正・浪費・乱用を根絶する包括的取り組み」の一環として、4300社以上の参加企業に対し、過去3年分の財務書類の提出が義務付けられた。

監査に含まれる資料は、銀行取引明細、財務諸表、総勘定元帳、給与台帳、契約書および下請け契約書、雇用記録などである。

SBA長官ケリー・レフラー氏は次のように述べた。「社会的・経済的に不利な立場の事業者を支援するために設けられた8(a)プログラムが、本来の目的から外れ、不正や濫用の“通り道”として利用されている兆候が増えている。特にバイデン政権下では、連邦調達で企業の実力よりも多様性・公平性・包摂(DEI)を過度に優先したことが、こうした問題を助長した」。

ここでいう通り道とは、法人そのものに課税せず、利益がそのまま所有者に“素通り”して個人に課税される企業形態を指す。

小規模企業が1月5日までに要求に応じなかった場合、8(a)プログラム参加資格を喪失する危険がある。また、さらなる調査や是正措置がとられる可能性もある。

「政府全体で進めている監査が続くなか、我々は連邦契約、契約担当官、そして契約業者を徹底的に見直すことに努めている。連邦法執行機関および他の政府機関と連携し、納税者に対する説明責任を果たす」とローラー氏は述べた。

SBAは、司法省(DOJ)が前連邦契約担当官と8(a)契約企業が関与した数年にわたる不正・贈収賄事件を摘発したことを受け、8(a)プログラムの全面監査を開始した。

司法省は6月12日の声明で、米国国際開発庁(USAID)の契約担当官と、企業のオーナー・社長3名が、少なくとも14件・総額5億5千万ドル超の連邦契約に関わる「10年にわたる贈収賄スキーム」に関与した罪で有罪を認めたと発表した。

関与した3社のうち2社は、8(a)プログラムで認定された小規模企業であった。

SBAが6月27日に発表した声明によると、関与企業の一つは、USAIDから「誠実性や信頼性が欠如している」と正式に警告されていたにもかかわらず、さらに8億ドルの連邦契約を獲得していた。

10月21日、ジャーナリストのジェームズ・オキーフ氏(O’Keefe Media Group)はXに投稿し、8(a)関連の連邦契約詐欺を暴露したとする動画を公開した。同氏によれば、その企業は「少数派企業」の資格を“隠れ蓑”にして連邦契約を取得し、業務の80%を外部に丸投げしていたという。

10月22日、ローラー氏はXで、オキーフ氏が暴露した企業をSBAが正式に停止処分としたと発表した。同社および3名のオーナーは、連邦政府との新規取引を禁じられた。

「彼らは連邦契約、下請け契約、セットアサイド(特定企業向け契約)に入札することは認められず、いかなる連邦支援も受けられない」とSBAは述べた。

SBAによれば、今回の取り組みは、過去15年に遡る高額かつ競争制限型の契約を対象に開始され、複数の連邦機関と連携して進められる。

「調査結果はSBA監察総監室および司法省に送付され、執行が行われる。SBAは不正に使用された資金の回収に向け、利用可能なすべての措置を取る。詐欺、浪費、管理不備、不正行為に関する情報はSBA監察総監室に報告してほしい」と声明は述べている。

11月6日、米財務省は「優遇措置ベース」で付与された契約を対象とする省全体の監査を発表した。監査対象の契約総額は約90億ドルに上る。

「今回の監査では、SBAの8(a)ビジネス開発プログラムの濫用や、特定企業に連邦調達上の優遇措置を提供する他の制度の不正利用について精査する」と財務省は述べた。

英語大紀元記者。担当は経済と国際。