米国と日本は中国共産党に謝罪しない

2025/12/18 更新: 2025/12/18

論評

中国共産党(中共)は第二次世界大戦をめぐって、さらに多くの謝罪を求めている。しかしその一方で、12月10日、日本海上空では米国のB-52爆撃機が日本の戦闘機と共同飛行を行った。これらの飛行は、中国の政権に対し、日米両同盟国が強固で結束していることを示す戦略的シグナルである。両国は日本の離島、そしておそらく台湾を防衛する意思を示している。

高市早苗首相は11月7日、中国が台湾に侵攻した場合、日本にとって「存立を脅かす事態」となり得ると公に述べた。これは、台湾を緩衝地帯として機能させてきた状況を中国共産党が排除しようとしていることを踏まえた評価であり、日本が台湾防衛に踏み切る法的根拠となり得る。そうした防衛行動は、国際的な同盟国による連合の一環として、アメリカから要請される可能性が高い。

一方、中国共産党を率いる独裁者・習近平は、台湾侵攻に対して次第に焦りを強めているように見える。台湾を制圧すれば、中国における唯一の民主主義の例を消し去ることになり、人工知能分野で重要な台湾の半導体製造能力の一部を掌握することにもつながる。人民解放軍(中国共産党軍)が台湾に侵攻すれば戦争に発展し、イギリス、オーストラリア、フランス、イタリア、ドイツなどが関与する可能性が高い。さらにロシアは、その機会にポーランド、リトアニア、エストニアといったNATO諸国に対して軍事的圧力を強める恐れもある。

これらの国々、そして他の多くの国々には、中国共産党の領土的野心を抑止する共通の利害がある。核兵器を伴う新たな世界大戦の危険だけでなく、北京が自由主義に反する世界的覇権を押し付けるリスクも存在するからだ。中国共産党が唱える「多国間主義」や「自由貿易」は、北京に有利な間だけの戦術的なものであり、用済みになれば「歴史のごみ箱」に放り込まれる。ロシアでさえ、ウクライナ戦争のために極東の部隊を大幅に移動させた結果、現在では中国に対して脆弱な立場に置かれている。

最近の人民解放軍による日本への威圧行動としては、12月8日に日本近海で中国空母から約100回の発着艦が行われたほか、12月9日には中露の爆撃機が日本周辺を共同飛行した。さらに中国のレーダーが日本の航空機を照射する事案も発生しており、操縦士は撃墜準備と受け取らざるを得ない状況に置かれている。こうした事態を受け、日本の航空自衛隊は過去1年間で約700回もの緊急発進(スクランブル)をする事となった。

これらの人民解放軍の航空・海上行動は、日本と台湾の軍事的即応態勢を試す狙いがある。これに対し同様の飛行などで応じなければ、日米による抑止力が崩れつつあるという危険なメッセージを送ることになりかねない。もし中国共産党政府が、アメリカと日本は人民解放軍の侵攻を阻止しない、あるいは大きなリスクを伴わないと判断すれば、侵攻より大規模な戦争が現実味を帯びる。日米防衛同盟の力、意図、結束を示し、そうした強硬論を未然に摘み取ることは不可欠である。

2025年6月8日、太平洋上空を飛行する中国のJ-15戦闘機(防衛省)

 

日米の共同飛行は、中国共産党政府による外交的・経済的威圧の文脈の中で行われている。その一例として、日本駐在の中国・大阪総領事が高市首相に対して発した殺害を示唆する脅迫的発言がある。大阪総領事は11月8日、「自ら突っ込んできた汚い首は、一瞬の躊躇もなく切り落とさなければならない。覚悟ができているのか」と述べた。

こうした発言は、日本のGDPの最大1%に相当する損失を招きかねない最近の経済的圧力と軌を一にしている。これらの発言と貿易報復は、在日アメリカ大使を含め、広く非難された。

中国共産党は、日本に対する攻撃的姿勢を正当化するため、繰り返し戦時中の「被害」を持ち出してきた。1970年代には、中国共産党政府と日本政府の間で一定の友好関係を築くため、さらなる謝罪要求をいったん棚上げにしたが、今となってみれば、それは誠実なものではなかったことが分かる。

この「友好」の時代に、中国は日本から広範な技術的知見を得た。中国共産党政権は現在、それらの技術や、アメリカや欧州諸国から盗用した技術を用いて、アメリカに対抗する兵器を開発している。また、民主主義諸国を世界市場で打ち負かすためにも活用しようとしている。そこに感謝の念は一切なく、アメリカやイギリスに対する被害意識を煽る姿勢が際立っている。

しかし、中国で最も多くの死者を生み出した責任者として広く認識されているのは、中国共産党の初代指導者・毛沢東である。彼の破滅的な経済政策は、1959年から1961年にかけての「大躍進」期の大飢饉を引き起こし、最大で5千万人が死亡したとされる。

現在、習近平は台湾奪取という誤った目標のために、さらに多くの人命を犠牲にする覚悟を示している。中国が世界から警戒されているのは、日本のせいではない。中国共産党が選び続けてきた強硬路線の結果である。日本にさらなる謝罪を求めるのは、政権による単なるプロパガンダにすぎない。1940年代、戦後間もなく昭和帝はすでに誠意ある謝罪の意思を示しており、その後も現在に至るまで、日本は数多くの謝罪を重ねてきた。

中国共産党が本当に求めているのは、さらなる謝罪ではない。ほぼ1世紀後になって、日本の選挙で選ばれた指導者が、地面にひれ伏すほどの屈辱を受け、中国共産党の独裁的要求に従う姿を見せることだ。その要求は、回を追うごとに卑屈で侮辱的なものになっている。

仮に日本政府が再び謝罪したとしても、中国共産党はそれを弱さと受け取り、新たな要求を突き付けるだけだろう。民主主義国家としてアメリカの同盟国である日本の立場、そして中国共産党の下で中国人民が長年被ってきた苦難の歴史を踏まえれば、これは到底受け入れられない。日本は徹底的に改革を遂げた。いま中国人民に対して謝罪すべきなのは、日本政府ではなく、中国共産党の政権なのである。

時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。
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