X制裁で米EU対立激化 米政府が対抗措置示唆

2025/12/18 更新: 2025/12/18

EUがXに対し、約1億4千万ドルの制裁金を科したことを受け、アメリカ政府が強く反発している。米通商代表部は12月16日、EUおよび一部加盟国が、アメリカのサービス企業に対して差別的な訴訟を相次いで起こし、罰金や各種規制を課していると批判し、必要に応じて包括的な対抗措置を取る考えを示した。

通商代表部は同日、X上で声明を発表し、こうした問題についてアメリカは長年にわたりEU側に懸念を伝えてきたものの、十分な対応を得ていないと指摘した。

米通商代表部は、米企業はEU市民に多くの無料サービスを提供しているだけでなく、ヨーロッパ企業に対しても安定したビジネスサービスを提供し、ヨーロッパで数百万人分の雇用や、1千億ドルを超える直接投資を支えていると説明した。

米通商代表部は、その一方ではヨーロッパ企業は数十年にわたりアメリカ市場で自由かつ公正な競争環境のもと事業を展開してきたと指摘した。アクセンチュア、アマデウス、キャップジェミニ、DHL、ミストラル、ピュブリシス、SAP、シーメンス、スポティファイなどのヨーロッパ企業が、長年にわたりアメリカ市場の恩恵を受けてきたとした。

通商代表部は、EUおよび加盟国が今後も差別的な対応によってアメリカ企業の競争力を損なうのであれば、「利用可能なあらゆる手段を講じざるを得ない」と警告した。アメリカの法律に基づき、対抗措置として外国のサービスに対する課徴金や規制措置などを検討する可能性があるほか、同様の手法を採る他国に対しても同じ対応を取る考えを示している。

EU Xがデジタルサービス法に違反と判断

EUの執行機関である欧州委員会は12月5日、実業家イーロン・マスク氏が所有するXについて、EUのデジタルサービス法(DSA)で定められた複数の透明性義務に違反していると発表した。

欧州委員会によると、約2年間にわたる調査の結果、Xには「ブルーチェック認証の分かりにくい設計」や「広告ライブラリの透明性不足」、「研究者に対する公共データ提供の不十分さ」といった問題を確認したという。

また、Xの広告データベースは、DSAが求めるアクセス性や情報の網羅性の基準を満たしておらず、重要な情報が欠けているため、組織的な偽情報の拡散や選挙介入、違法行為を追跡することが難しくなっていると指摘した。

欧州委員会のヴィルックネン上級副委員長(技術主権・安全保障・民主主義担当)は声明で、今回の判断は、DSA施行後に示された初の違反認定であり、Xが利用者の権利を軽視し、責任を十分に果たしてこなかった点を問題視したものだと述べた。

これに対し、マスク氏はX上で、「EUはXだけでなく、私個人にもこの狂った罰金を科した。本当に理解不能だ」と反発し、EUに加え、措置に関与した個人も対応の対象になるとの考えを示した。
 

米欧で続くテック大手規制を巡る対立

EUは近年、米テック大手企業に対する規制や制裁を相次いで打ち出しており、Xもその流れの中にある。これまでに、グーグル、メタ、アップル、アマゾン、マイクロソフト、クアルコムなどが、競争法違反やデジタル規制違反を理由に処分を受けてきた。

今年9月には、EUが競争法違反を理由にグーグルへ約35億ドルの制裁金を科しており、巨大IT企業を巡る米欧間の対立は、さらに深まりを見せている。

王君宜
王君宜
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