中国で、博物館の閉館が相次いでいる。12月下旬、年末年始の観光シーズンを前に、全国で約30か所の博物館が一斉に休館を発表した。「改修工事」や「展示替え」が理由とされているが、異例の同時閉館として注目を集めている。
背景にあるのが、南京博物院をめぐる騒動だ。南京博物院は、中国でも最上位クラスに位置づけられる博物館で、国宝級の文化財を数多く所蔵する「国の顔」とも言える存在である。
問題の発端は、60年以上前に寄贈されたとされる明代の名画『江南春』が、2025年5月に突如オークションに出品され、高額で落札されたことだ。博物院は「当時は偽物と鑑定し処分した」と説明したが、寄贈者の遺族はこれを否定し、内部から流出したのではないかとの疑念が広がった。さらに、元院長が文化財の盗難や不正な持ち出しを告発され、公安が自宅を包囲して連行したと中国メディアが隣人の証言として報じたことで、不信は一気に拡大した。
この騒動を受け、中国のネット上では「全国の博物館も調べるべきだ」との声が高まり、今回の閉館ラッシュについても「内部点検や調査の影響ではないか」と見る向きが出ている。一方で、以前から予定されていた工事も含まれているとの指摘もあり、すべてが関連しているかは不明だ。
ただ、中国を代表する博物館で起きた名画消失疑惑が、文化財管理への不信を全国に広げたことは確かであり、各地で続く博物館の閉館は、その不安が表面化した動きとして受け止められている。
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