「助けたのに訴えられた」 フェイクだった人助けの物語 なぜ世界中でバズったのか

2026/01/21 更新: 2026/01/21

2025年後半から、ある短い動画とストーリーが、世界中のソーシャルメディアで広く共有された。InstagramやTikTok、YouTube、X(旧Twitter)などで拡散され、数百万回再生された投稿もある。動画とともに語られていた内容は、次のようなものだ。

スマホに夢中になり車道に出てしまった女性が、走ってくる車にひかれそうになった。そこへ通りかかった男性が、女性の体に飛びかかって間一髪助けた。しかしその後、女性は「同意のない不適切な身体接触だった」として、男性を訴えた。

動画では、男性は「ダニエル」、女性は「ジェシカ」と紹介され、警察や裁判が関わったかのような説明も添えられていた。ニュース番組のような編集がされており、実際に起きた事件のように見える内容だった。

この話を動画を見た中には、男性の行動を強く支持する声が多く見られた。

 

緊急事態では、命を守る行動が最優先されるべきであり、同意を確認する時間はなかったはずだ、という考え方である。

「助けただけなのに訴えられるのはおかしい」「こんなことが起きたら、誰も人助けをしなくなる」といった意見が、コメント欄に多く書き込まれた。

一方で、女性の訴えに理解を示す声もあった。

たとえ命を救う場面であっても、同意のない身体接触は問題になるという考え方である。突然体に触れられたこと自体が、恐怖やトラウマにつながる可能性があるという指摘もあった。「助けたからといって、すべてが許されるわけではない」という意見である。

このストーリーは、善意と不安がぶつかり合う形で、強い感情を生んでいった。

しかし、この話について事実確認が進むと、ストーリー自体が実在しないことが明らかになった「ダニエル」や「ジェシカ」という人物、訴訟、警察や裁判の記録は確認されておらず、動画に使われていた救出映像は、2020年にアメリカ・オハイオ州で起きた別の事故の映像だったという。

この話は本当の事件ではなかったが、多くの人が怒り、共感し、コメントを書いた。このストーリーは作られたものだったが、広まった反応は現実のものだった。

人は映像を見ると、それが本当かどうかを深く考える前に、感情を動かされることがある。今回の出来事は、情報をどう受け取り、どう広めるのかを考えるきっかけになったと言える。あなたはどう考えるだろうか。

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