トランプ氏の4月訪中を前に検討すべき重要要因

2026/02/06 更新: 2026/02/06

ドナルド・トランプ米大統領は4月に北京を訪問する計画だと述べた。しかし、中国共産党(中共)上層部での内紛激化、習近平党首による苛烈な軍粛清、極度の政治的不確実性、中共政府が守らない約束、そして広範な国民の変革要求を踏まえると、4月の訪中は時期尚早であり、利益よりも害が大きい可能性がある。

指導部の衝突が中国政治を臨界点へ

1月24日、習近平政権は政治局委員で中央軍事委員会副主席の張又侠、ならびに中央軍事委員で統合参謀部長の劉振立を「重大な規律・法令違反」の疑いで調査すると突然発表した。これは中共が高官の汚職や政治調査を公表する際の定型表現である。

2022年の第20回党大会終了以降、中共上層部の内紛としては最も異例かつ衝撃的な局面といえる。1971年に毛沢東が後継者に指名した林彪副主席がモンゴルで墜落死した事件にたとえる向きもある。当時、林彪と家族は1971年9月13日に英国製トライデント機でモンゴル上空を飛行中に墜落したとされるが、経緯は中国共産党からは公表されておらず、不透明なままだ。

類似点は、張又侠と林彪がいずれも最高指導部に近い副最高司令官級だった点である。ただし相違も大きい。毛沢東は党・軍・国家の創設者として当時も威信を保っていた。一方、習近平は内外政策の悪化を招いた人物と広く認識されており、張又侠の拘束以降、評価は地に落ちている。

毛沢東は文化大革命期に多数の高官を粛清したが、自らと共に戦った古参将軍の一部は意図的に残した。習近平には実戦経験がなく、軍を事実上空洞化させ、異論を唱えられない側近で固めたと筆者は指摘する。

習近平は2012年に最高指導者となって以降、反腐敗運動を通じて対抗勢力を排除してきた。現在、反習感情は高官から一般市民まで広がり、辞任を求める声もあるとされる。

張又侠は数少ない実戦経験を持つ軍事専門家で、軍と体制の安定化に重要な役割を果たした。中国共産党軍で最も影響力のある将軍の一人であり、両者の家族は数十年来の関係があったとされる。習近平が張又侠すら排除するのであれば、誰を守るのか、誰を信頼できるのかという疑問が広がる。

2024年4月22日、青島での第19回西太平洋海軍シンポジウム開会式前に記念撮影に臨む張又侠中央軍事委員会副主席(Wang Zhao/AFP via Getty Images)

 

習近平は軍を掌握できていない

習近平の軍統制が極度に低下していることを示す四つの兆候がある。

第一に、最高軍指揮体制の崩壊である。2022年の第20回党大会で習近平は7人の中央軍事委員会を構成した。主席の習近平、副主席の張又侠と何衛東、委員の李尚福、劉振立、苗華、張升民となっている。このうち2026年1月までに7人中5人が「軍委主席責任制を損なった」として解任された。残るのは習近平と張升民のみで、張升民は政治将校で軍事専門家ではない。主要戦略について助言できる人物がほとんどいない状況である。

第二に、ロケット軍の腐敗事件である。ロケット軍は核ミサイルや弾道ミサイルを管轄する部隊であるが、2023年4月、習近平は大規模粛清を開始した。習近平が自ら任命した魏鳳和、周亜寧、李玉超、王厚斌の4人全員が汚職容疑で解任された。ロケット軍司令官の選任は軍委主席の最重要職責の一つであり、4度連続の誤任は判断力と統治能力の深刻な問題を示すと筆者は指摘する。

第三に、昇進させた将官の多くが粛清された点である。筆者の内部資料分析によれば、習近平は14年間で約400人の将官を粛清した。

1927年の中共軍創設以降、内戦・対外戦争・文化大革命で失われた将官数を上回る。現在の中共軍で上将は中央戦区韓勝延 司令官、東部戦区の楊志斌 司令官、董軍 国防相の3人のみで、他は中将である。

習近平の軍粛清は悪循環に陥っている。恐怖が増すほど粛清が進み、粛清が進むほど恐怖が拡大する。筆者は粛清対象とその人脈は強い反習勢力となり、機会をうかがっていると考える。
 

政策失敗の累積

2012年以降、習近平は内外で混乱をもたらし、国民の不満が蓄積している。

中国広東省大理鎮羅村の数百人の抗議者が、20日間以上続いた都市封鎖の解除を要求している(提供 エポックタイムズのインタビュー対象者)

新型コロナを巡っては、武漢発の感染拡大後、3年間の極端なゼロコロナ政策が経済に打撃を与え、2022年末には予告なく解除され大量感染と多数の死者を招いたとする。

出生、雇用、医療、住宅、老後など多くの分野で生活は悪化し、不満は広がっている。
 

中共政府がトランプ政権一期目にもたらした影響

中国共産党は約束を守らない。

2020年、武漢発の新型コロナが米国を襲い、ミズーリ州は250億ドルの損害賠償を求め中国資産差し押さえを進めているとされる。

当時のトム・ビルサック農務長官は2020年1月の米中第1段階貿易合意で中国は2020~2021年に2千億ドルの追加購入を約束したが、農産物だけでも約130億ドル不足したと述べた。

中国はフェンタニル前駆体の流出を十分に取り締まっておらず、知的財産窃取や経済スパイ活動も続いている。

結論

張又侠と劉振立の粛清は中共の政治を爆発寸前に押し上げた。支持をほぼ失った状況でトランプ氏が北京を訪問すれば、習近平に延命策を与える戦略的誤りとなり、世界と中国国民に誤ったシグナルを送る可能性があるとする。適切な時機や条件、支持が整っていない訪中は裏目に出る恐れがあると結論づけた。

王友群
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