中国外相「日本は自滅する」発言の真意 仕掛けられた3つの罠

2026/02/15 更新: 2026/02/15

ミュンヘン安全保障会議に出席している中国の王毅外交部長(外相)がドイツ滞在中に発した対日批判声明は、単なる外交的な牽制の域を超え、日本国家の根幹を揺さぶる極めて計算された「複合戦」の様相を呈している。

王毅外交部長による対日批判声明の概要

2026年2月15日、中国の駐日大使館は王毅外交部長の声明を公表した。その舞台はドイツ(ミュンヘン安全保障会議)である。

王毅は、日本の現職首相が台湾有事を「存立危機事態」とし、集団的自衛権の行使対象となり得ると明言したことに対し、「戦後80年で初めて公然と発せられた狂言」であると激しく非難した。彼はこの発言を、中国の国家主権への直接的挑戦であり、戦後の国際秩序(台湾の中国返還)への挑戦であると断じた。

さらに王毅氏、ドイツと日本を対比させ、ナラティブの強化を図った。ドイツがナチズムを全面的に清算したのに対し、日本は依然としてA級戦犯を靖国神社に奉り、指導者が参拝していると指摘。「この現象は欧州では想像できない」と述べ、日本の歴史認識を攻撃の起点とした。

その上で、「日本の侵略・植民地支配の野心は未だ消えておらず、軍国主義の亡霊が彷徨っている」と述べ、かつて日本が「存亡の危機」を口実に中国侵略や真珠湾攻撃を行ったと主張した。王毅は日本国民に対し「極右勢力に騙されるな」と呼びかけるとともに、日本が再びその道を歩むならば「自取滅亡(自ら滅びを招く)」であると強い言葉で警告を発した。

複合法律戦としての「三戦」

今回の王毅発言も、たまたま単発に批判を行ったわけではなく、世論戦・心理戦・法律戦を組み合わせた高度な「複合法律戦」の一環である。その戦略的意図は以下の三点に集約される。

1. 防衛行動の「正当性」剥奪と国際的孤立化

最大の狙いは、台湾有事における日本の集団的自衛権行使を「侵略戦争の再開」と再定義することにある。中国は、日本の防衛行動を「中国の主権侵害」かつ「戦後国際秩序への挑戦」と位置づけることで、日本から国際法上の正当性を剥奪しようとしている。 特にドイツの地で靖国問題を持ち出した点は巧妙である。これは日本の歴史認識を焦点化し、欧州諸国と日本の連携を分断することで、日本の外交的信頼性を低下させる狙いがある。日本を「歴史を清算しない危険な国」として孤立させ、日米同盟の機能不全を誘う意図が透けて見える。

2. 沖縄の分断と「管轄権」の無力化

この声明は、日本の安全保障、特に沖縄の統治に対する核心的な警告を含んでいる。中国は「台湾有事=日本の侵略」という図式を作ることで、沖縄の米軍基地や自衛隊を「戦争を招く元凶」として再定義し、沖縄県民に恐怖と不信を植え付けようとしている。 「自取滅亡」という脅迫は、沖縄が戦場になるリスクを強調し、基地反対運動を激化させ、日本政府の沖縄に対する管轄権を内側から形骸化させることを目的としている。これは、有事の際に沖縄の防衛機能が麻痺することを狙った心理戦である。

3. 国内世論の攪乱と政府への不信感醸成

「極右勢力に騙されるな」という日本国民への呼びかけは、政府と国民の離間を狙った典型的な世論戦である。日本の指導層を「軍国主義の復活を企む狂人」としてレッテル貼りし、防衛力強化に対する国内の反対世論を煽ることで、日本の政策決定を遅延させようとしている。

日本が発すべきカウンターナラティブ

中国の仕掛ける「三戦」に対し、日本は沈黙するのではなく、明確かつ論理的なカウンターナラティブ(対抗言説)を発信し、主導権を取り戻す必要がある。その骨子となるのは次の3点だ。

1.法の支配

第一に、安全保障政策の正当性を主張する「法の支配」のナラティブである。 「日本の安全保障政策は、国際法に基づき、専守防衛の原則を堅持している。台湾海峡の平和と安定は、日本の生存のみならず国際社会の繁栄に不可欠な『国際公共財』である。日本の対応は主権の行使ではなく、地域の安定化への責任遂行である。平和を脅かしているのは、威圧的な現状変更を試みる側である」。

2.平和国家

第二に、歴史カードを無効化する「平和国家」のナラティブである。 「日本は戦後、一貫して民主主義国家として平和の道を歩んできた。歴史認識には真摯に向き合っているが、それを特定国の政治的道具として利用することは認めない。国際社会が注視すべきは、過去の歴史ではなく、現在進行形で国際法を無視し、力による現状変更を試みている勢力の行動である」。

3.抑止と平和

第三に、脅迫を拒絶し、沖縄の価値を再定義する「抑止と平和」のナラティブである。 「脅迫外交は国際社会では通用しない。日本はいかなる威圧にも屈せず、自由で開かれたインド太平洋を守り抜く。沖縄は日本の防衛の最前線であると同時に、平和を守るための『ゲートウェイ』である。防衛力の強化こそが戦争を防ぐ最大の投資であり、日本は断固として抑止力を維持する」。

日本は王毅の発言を単なる「批判」として看過せず、日本の主権と安全保障を無力化しようとする「攻撃」と認識し、戦略的な反論を展開することが今、求められている。

▶大紀元EPOCH TIMES JAPAN編集長 ▶「日本の思想リーダーズ」番組ナビゲーター 、「大紀元ライブ」番組ホスト。
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