2006年に米ニューヨークで設立された神韻芸術団は、「共産主義以前の中国」伝統文化の復興を使命に掲げ、中国古典舞踊や、東西の楽器が融合したオーケストラの生演奏、最先端のデジタル背景幕など洗練された演出を披露する舞台芸術を世界各国に発信してきた。20年にわたり5大陸・200以上の都市を巡回し、累計観客数は1千万人を超える。昨年は年間約800公演を実施し、観客数は100万人を突破した。
演目では「天人合一」「善悪の報い」「仁愛と慈悲」など伝統的な美徳や価値観をテーマとしているのが特徴だ。観客からは、高度な芸術性のみならず、古き良き価値観に感銘を受けたとの声が上がっている。
一方、中国共産党政権は神韻の公演に神経をとがらせている。伝統文化に見られる天への畏敬、道徳的自律、普遍的価値は、無神論と闘争哲学を掲げる共産党の思想体系とは根本的に対立するためだ。中共は長年、法輪功やキリスト教、仏教など宗教・信仰団体を抑圧してきた。
法輪大法情報センターの統計によれば、2006年以降、神韻に対する中国共産党(中共)の妨害行為は、38か国で数百件以上が確認されている。多くの事案で在外中国大使館関係者の関与が指摘され、上層指導部の統制下にある越境的な圧力行為とみられる。
2024年以降は暴力的な脅迫が急増。2024年3月以降、殺害をほのめかす脅迫は132件に達し、昨年末から今年初頭にかけては神韻アーティストや各国要人を標的とする脅迫が相次いだ。
各国での主な事例
1.デンマーク(2026年)
1月8日、在デンマーク中国大使館は神韻と法輪功を中傷する声明を発表。3月30日から4月2日までコペンハーゲンの「王立アリーナ」で予定されていた5公演の中止を求める動きがみられた。
さらに2月10日には、「公演を強行すればデンマーク首相に危害が及ぶ」との匿名の脅迫状が主催者側に届いた。これに対し、与野党の複数の政治家が「芸術の自由への干渉行為は容認できない」と非難。情報機関による調査を求める声も上がった。
専門家は、外交ルートによる公的圧力と匿名の脅迫を組み合わせる手法は心理的な圧迫を狙ったものと見なしている。
2.欧州諸国(2025~26年)
今年の欧州ツアーの期間中、イギリスを含む複数国の劇場が爆破や銃撃、放火をほのめかす脅迫を受けた。イギリスでは、首相の暗殺をほのめかす偽装メールも確認したという。
イギリス政府は「外国勢力による威嚇は容認しない」と公式に表明。類似の事案はカナダ、フランス、ポーランド、イタリア、スペイン、豪州、アメリカなどでも報告された。
3.アメリカ国内での妨害
神韻の本拠地があるアメリカでも、過去にバス車両のタイヤ損壊、爆破予告、サイバー攻撃、関連施設への侵入事件などが発生。さらに、中共側の代理人がアメリカの当局者に賄賂を渡し、神韻の非営利資格の取り消しを図ったとして有罪判決を受けた事例もある。
4.韓国・香港での過去事例
2016年には在韓中国大使館が経済的圧力を示唆し、ソウルの劇場が公演を中止。2010年には香港当局が神韻アーティストへの査証発給を拒否し、公演が実現しなかった。
「文明は最終的に悪に打ち勝つ」との声
一連の事例は、単なる個別事件ではなく、伝統文化や普遍的価値観への嫌悪を背景とする動きとの見方もある。
各国の政界・市民社会からは、芸術の自由、言論の自由、宗教の自由を守るべきだとの声が相次いでいる。デンマークやイギリスの対応は、越境的圧力に対する主権国家の姿勢を示す象徴的事例といえる。
神韻側は引き続き巡回ツアーを継続する方針を示している。関係者は「真理や美徳、人間性は恒久的に抑圧できない」と強調する。
国際社会にとって、今回の問題は単なる一芸術団体への妨害を超え、価値観と主権、自由をめぐる試金石となっている。文明の力が専制を上回るかどうか、各国の対応が今後も注目される。

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