中共はなぜ米・イラン停戦への介入を急いだのか

2026/04/10 更新: 2026/04/10

米東部時間4月7日夜、最後通牒まで1時間余りとなる中、アメリカとイランは2週間の停戦に合意した。複数のメディアは、中国共産党(中共)政権が今回の停戦仲介を積極的に後押ししたと報じている。

中共がなぜ積極的に仲介に動いたのか

ホワイトハウスは、北京が停戦成立に果たした役割について、米中「最高レベル」での働きかけの結果だと説明した。トランプ氏も、中共がイランを停戦協議に参加させるうえで一定の役割を果たしたとの認識を示している。

これまでとは異なり、中国共産党(中共)の今回の仲介は、2023年に北京でサウジアラビアとイランの国交正常化を大々的に演出した時のような、いわゆる大国としての名声を得るための姿勢が比較的薄いように見える。むしろ、今回の仲介からはかなり強い切迫感がうかがえる。

外務省の毛寧報道官は8日、米・イラン停戦について問われ、イランで戦闘が始まって以降、王毅外相は関係各国外相と延べ26回にわたり電話会談を行ったと述べた。中共中東担当特使も中東各地を訪問した。さらに中共は、パキスタンと共同で『5項目の提案』も打ち出したという。

台湾淡江大学外交・国際関係学科の鄭欽模准教授は大紀元に対し、トランプ氏の最後通牒は中共を極めて厳しい立場に追い込んだと語った。中共はイランに巨額の投資を行っているうえ、イランを中東進出の戦略的拠点とも位置づけている。しかし、その両面で事態に対抗できる力を持っていないという。

鄭氏は、中共が停戦実現に強い焦りを見せたのは事実だと指摘する。3月31日には王毅がパキスタンとともに、いわゆる5項目の計画を打ち出したが、その中で最も重要なのがホルムズ海峡の開放だったという。中共としては、イランができるだけ長く持ちこたえることを望んでいたものの、戦争が長引けばイランがアメリカに耐えきれない可能性がある一方、中共側が先に大きな被害を受ける。特に、中国経済がデフレ圧力に直面する中で、石油や天然ガス、石油化学原料などの戦略物資の安定供給が必要だからだと分析した。

さらに鄭氏は、今後の戦争の行方がどうなろうと、アメリカはイラン、ホルムズ海峡、ペルシャ湾への関与を一段と深め、世界のエネルギー支配力を強めるとみている。そうなれば、中共の対外的な侵略の野心は大きく制約され、将来の発展や経済見通しにも影響が及ぶと述べた。

ベテラン軍事評論家の馬克氏も大紀元に対し、中共が米・イラン停戦の仲介を急いだ背景には、多くの利害が絡んでいると指摘した。実際、イラン産原油は現在も中国へ流れ続けているが、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラク、カタールといった他の供給国からの原油や天然ガスは、ほぼ途絶えているという。

馬克氏はまた、中共はイラン国内で、中国・イラン鉄道、半導体工場や関連施設などに巨額の投資を行っていると説明した。これらが米・イスラエル連合軍の空爆で破壊されれば、中国企業の投資は水泡に帰す。さらに、イランがなおも抗戦を続ければ、生活インフラが米・イスラエルによる全面的な空爆にさらされる可能性があり、中共の投資は失われ、割安なイラン産原油も手に入らなくなると述べた。

馬克氏は、イランは中共にとって中東におけるてことなり、拠点でもあると位置づける。このてこが破壊され、あるいは大きく弱体化すれば、中共の中東での影響力は事実上失われる。そのため、中共は停戦を望み、イラン政権をかろうじて延命させることで、中東を引き続き不安定化させ、アメリカをけん制する役割を果たさせたいのだと語った。

米・イラン停戦 トランプ氏が主導権

先月末に始まった米・イラン戦争から1か月の間に、アメリカとイスラエルはイラン上層部を次々と排除し、弾道ミサイル戦力や海軍を破壊した。イランはテロ支援国家としての役割と核能力の両面で大きな打撃を受けた。こうした目標が達成されるにつれ、弱体化したイラン政権の下で、イラン国民が自らの政治的将来を決定する余地は一段と広がっていくとみられる。

同時にアメリカは、中共の中東における戦略的拠点にも打撃を与え、世界の構図は再び一極化へ向かいつつある。

これは、トランプ氏が地上部隊を投入しなくとも、すでに当初の目標を達成したことを意味する。

この過程で、トランプ大統領は中東への増派を続け、2003年のイラク戦争以来最大規模となる海空戦力の集結を実現した。圧倒的な軍事圧力を背景にイランに譲歩を迫り、交渉と和平の主導権を握った形だ。

4月7日、トランプ氏は「今夜、イランの文明全体が消滅する」と述べた。一方、イランが停戦に同意したことを受け、4月8日には「イランは再建を始め、黄金時代を開くことができる」と投稿した。

分析筋は、こうした発言は矛盾ではなく、記録に残る中で最も古典的な交渉手法の一つだと指摘する。まず相手の交渉材料を破壊し、その後に再建を持ちかけるというやり方だ。著書『The Art of the Deal』で知られるトランプ氏は、現代地政学の最大の舞台で、まさにこの手法を実行に移したことになる。

4月8日、トランプ大統領は同時に、各国に対してイランの軍事力再建を支援しないよう警告した。

「いかなる国であれ、イランに軍事兵器を供給した場合、その国からアメリカへ輸出されるすべての商品に対し、直ちに50%の関税を課す。即時発効だ」
「例外は一切ない」

現在、イランに武器を供給しているロシアと北朝鮮はすでに制裁対象となっているため、この関税措置の条件に当てはまるのは中共だけだとの見方がある。つまり、トランプ氏は中共に対する新たな制裁の材料を手にしたことになる。

鄭欽模氏は、米中による世界的な地政学的争いという大きな構図の中で、イランをめぐる今回の局面は極めて重要だと述べた。アメリカはより多くの資源を握り、主導的な立場にある。イランが再建を開始し、ホルムズ海峡の通行料などについても協議が進めば、それを再建資金に充てることも可能になり、中共は一層受け身に回る。イランがアメリカの描く筋書きに沿って動けば、アメリカの交渉材料はさらに増えていくという。

また、イランはかつて中共にとって一つの交渉材料であり、戦略的拠点でもあった。しかし現在、イラン内部では中共への不信感が強まっている。イランが攻撃を受けた後、中国が売却した兵器は十分な効果を発揮せず、イランが期待した軍事支援に対しても、中共は消極的だった。さらに、イラン国民の間では、中共が独裁体制向けの監視設備を提供してきたことへの反発も強いという。

鄭氏は、極限までの圧力と経済的利益の提示以外に、今のところこれ以上有効な戦略は見当たらないとした。ただし、時間の面では、トランプ氏は年末の中間選挙も意識しなければならず、今後どのようにできるだけ早く目標を達成するかが問われると述べた。

馬克氏は、現時点ではホルムズ海峡は依然としてイラン革命防衛隊の掌握下にあり、少なくともアメリカは武力でその支配権を奪う行動には出ていないと指摘した。今後、武力によって革命防衛隊の海峡周辺拠点を完全に打ち破る、あるいは破壊する方向に進むかどうかは、今後の交渉の進展を見極める必要があるとの見方を示した。

米中首脳会談 トランプ氏が有利な立場

分析筋によれば、今後は3つの重要な交渉が控えている。表面上はイランをめぐる協議だが、実際には中共が大きく関わる問題だという。

まず10日に予定されるイスラマバードでの協議では、イラン停戦が長期的な枠組みとなるのか、それとも完全に破綻するのかが決まる。破綻すれば、ホルムズ海峡は再び閉鎖され、原油価格は再び1バレル110ドルを超えて急騰し、中共のエネルギー供給はさらに悪化する可能性がある。

次に、4月19日にはイラン産原油に対する制裁免除措置の期限が切れる。これは、現在海上にある1億4千万バレルのイラン産原油が、米財務省の許可に基づいて今後も中国の小規模製油所へ流れ続けるのか、それとも再び制裁対象貨物に戻るのかを左右する。トランプ氏が免除を延長しなければ、すべてのイラン産原油輸送が違反となり、「影の船団」は拿捕されるリスクに直面し、中国の小規模製油所は安価な原料を失うことになる。

さらに、5月中旬に予定される米中首脳会談では、関税、農産品の購入、貿易協定の延長、レアアース輸出規制などが議題になる見通しだ。しかし、イラン戦争によって状況は一変した。今回トランプ氏が北京を訪れるとすれば、その手元には強力な交渉材料がそろっていることになる。

鄭欽模氏は、トランプ氏の極限的な圧力戦略は布陣は非常に緻密で、一歩また一歩と段階を重ねて進められていると述べた。イランを石器時代にまで爆撃すると脅したことは、目的達成への強い決意を示している。トランプ氏が完全に主導権を握る状況の下で、中共との交渉においても、レアアースや農産品購入の分野で譲歩を引き出す助けになる可能性があるという。

馬克氏は「習近平との会談前にイラン問題を解決できれば、トランプ氏にとって最も有利だ」と述べた。

宋唐
易如
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