日立 水電解設備の設置制約に突破口 グリーン水素普及へ弾み

2026/04/12 更新: 2026/04/12

日立製作所が、水を電気分解して水素を製造する水電解システム向けに、10キロボルト級の高電圧に対応可能な「絶縁配管技術」を世界で初めて開発し、実証機による耐電圧試験に成功した。水素社会の普及に向け、ボトルネックとなっていた設置スペースの制約を緩和する技術として注目される。

水素は、利用時に二酸化炭素を排出しない次世代エネルギーとして期待されており、特に鉄鋼や化学など、電化が難しい産業分野の脱炭素化に欠かせないとされる。一方、水素を製造する水電解システムの普及には、巨大な設置スペースが必要になるという課題があった。

従来は、送電網から送られてくる高電圧をシステムで使用するため、電圧を低く変換する変圧器を多数設置する必要があった。このため、都市部の狭い土地や、設備が建ち並ぶ既設プラントの空きスペースでは、システムの設置が難しい状況にあった。

この課題を解決するには、高電圧のままシステムに直接電気を流し込み、変圧器の数を減らすことが有効とされる。ただ、高電圧をかけながら、水や水素ガスの漏えいを防ぎ、圧力や熱、腐食にも耐えられる配管を実現することは、従来技術では困難だった。

日立は、インバータに関する知見や複合材料を用いた独自技術を活用し、各素材の特性を検証した。その結果、高い絶縁性能と機械的強度を両立した絶縁配管の開発に成功した。

この配管を用いた試験では、10キロボルトの高電圧をかけ、水と水素が混在する実際の環境下でも、絶縁破壊やガス漏えいが発生しないことを確認した。これにより、10キロボルト級の高電圧でシステムを直接稼働させることが可能となり、変圧器の数を大幅に減らし、システム全体の設置面積を最大50%削減できる見込みとなった。

この技術により、水電解システムの小型化が進めば、都市部の狭小地や既存工場の空きスペースにも水素製造設備を設置しやすくなり、水素の普及拡大が期待される。再生可能エネルギー由来の電力を活用して二酸化炭素を排出しないグリーン水素を製造することで、脱炭素社会の実現にもつながるとみられる。余剰電力を活用した水素製造により、電力の需給調整機能を担う役割も見込まれている。

日立は今後、メガワット級の大型システムの開発を進めるとともに、将来的にはAIやデジタル技術「HMAX by Hitachi」との要素技術の一つに発展させることも視野に入れる。最適運用や予知保全といったデジタルサービスを通じて、水素製造の価値向上を目指す方針だ。

今回の絶縁配管技術は、水電解システムの設置を妨げてきた物理的制約を技術で克服する成果であり、身近な場所でクリーンな水素エネルギーを生み出す環境整備に向けた一歩となる可能性もでてきた。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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