米・インドネシアが防衛パートナーシップ締結 マラッカ海峡を念頭に中共を牽制

2026/04/27 更新: 2026/04/27

米国とインドネシアは13日、主要防衛パートナーシップの締結を共同声明で発表した。この時期は、米軍によるイラン港湾封鎖の実施とほぼ同時期にあたる。

イラン情勢が緊迫するなか、米国とインドネシアは防衛協力協定を締結した。表向きは通例の軍事協力だが、注目すべき点がある。両国は海上監視・水中探知・無人機技術の共同開発と、非対称戦力の強化で合意した。さらに正式署名には至っていない別の協定では、米軍機によるインドネシア領空通過を包括的に認める条項が盛り込まれているとされる。協定が成立すれば、米軍の戦闘機・偵察機・無人機は、事前通知のみでインドネシア領空を通過でき、都度の申請は不要となる。

大量の米軍がイランに展開するなか、ヘグセス戦争長官はこの時機にペンタゴンでインドネシア国防大臣と会談し、防衛協定を協議した。このタイミングが示す戦略的考慮とは何か。答えはマラッカ海峡にある。

中共の「マラッカ・ジレンマ」

米エネルギー情報局(EIA)の2025年上半期データによれば、マラッカ海峡を通過する石油は1日あたり2320万バレルに達し、世界の海上石油取引量の約3割を占める。ホルムズ海峡の1日2090万バレルをも上回る水準だ。

中国はマラッカ海峡の最大の石油利用国であり、EIAの推計では、同海峡を航行するタンカーのおよそ半数が中国向けとされる。ホルムズ海峡を出航したタンカーの多くはマラッカ経由で南シナ海へ向かい、アフリカ発の船舶も同じ航路を利用するケースが多い。

中国共産党(中共)内部ではかねてより「マラッカ・ジレンマ」という概念が語られてきた。中共党機関紙『中国青年報』によれば、2003年11月29日、当時中共党首 胡錦濤が初めて公式に言及した。同氏は、国内輸入石油の半数が中東・アフリカ・東南アジア産であり、そのうち約5分の4がマラッカ海峡経由で輸送されていると述べた。この発言は国際メディアから「胡錦濤がマラッカ・ジレンマを露呈した」と受け止められた。

同記事は中国のエネルギー専門家の見解として、中共の実力ではこの海峡を制御することは到底不可能であり、マラッカ海峡はすでに米国のグローバル戦略において押さえるべき16の海上チョークポイントの一つとなっていると指摘した。米国の勢力が介入すれば、いかなる国も手の打ちようがなく、マラッカを制する者が中共の エネルギー供給路を握ることになる、とも論じている。党機関紙が挙げた米国の戦略的チョークポイント16か所には、パナマ運河・グリーンランド・ホルムズ海峡・マラッカ海峡が含まれる。

マラッカ封鎖時、中共が取りうる代替ルート

マラッカ経由の航路が最短かつ最効率であることは言うまでもない。しかし同海峡が実際に封鎖された場合、学術交流プラットフォーム「ResearchGate」に掲載された研究報告によれば、中共が利用できる迂回海上ルートは一本に限られる。スマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡を経て、バリ島とロンボク島の間のロンボク海峡へ、続いてマカッサル海峡を北上しフィリピン南部へ至るルートだ。水深が深く大型タンカーの通行に適するが、航程が1千キロ以上延び、輸送コストは大幅に上昇する。なお、スンダ・ロンボク・マカッサルの三海峡はいずれもインドネシアの主権下にある。

海上ルートに加え、二本の陸上輸送路も存在する。一つは中緬経済回廊を経由する中緬石油・ガスパイプラインで、ミャンマーから雲南省へ直接接続し、マラッカを経由しない。ただし年間輸送量は約2200万トン(原油密度により換算すると1日あたりおよそ44万バレル)にとどまる。もう一つは中央アジア・中露パイプラインで、カザフスタン・ロシア経由の陸上輸送だ。しかし、これら陸上輸送の総量はタンカー輸送には遠く及ばない。

では、マラッカが封鎖された場合、中共の石油備蓄はどれほど持ちこたえられるのか。フランスのエネルギーコンサルティング会社エネルダータ(Enerdata)のデータでは、中共の戦略石油備蓄は現在4億5千万〜5億バレル程度とされる。同社の試算によれば、海上輸入が完全に遮断されても陸上輸送が維持できる場合、この備蓄量は純輸入量の約3か月分に相当する。一方、ホルムズ海峡経由の供給のみが断たれ、マラッカ・ロシア・アフリカからの供給が継続する場合は、200日以上持ちこたえられる計算となる。

米国のグローバル布陣、中国を照準に

4月13日の米・インドネシア主要防衛パートナーシップ締結により、マラッカ海峡に加え、迂回路として使われるスンダ・ロンボク・マカッサルの三海峡すべてが米国の影響圏に収まる可能性が生じた。

続く4月15日〜16日には、米国がモロッコとワシントンで2026〜2036年の国防協力ロードマップに署名し、ジブラルタルをめぐる戦略的態勢をさらに強化した。ジブラルタル海峡は地中海と大西洋を結ぶ世界有数の狭隘海峡であり、欧州・アフリカ間の物資・石油の航運要路であるとともに、大西洋から地中海へ至る唯一の通路でもある。

4月16日、Xユーザー「劳伦斯精卫(@Lawrenc09874431)」は次のように投稿した。「米国が昨日モロッコと締結した国防協定は、ジブラルタル海峡(地中海の出入口)に関わるものだ。これで米国は1年余りの間に、世界の四大海上関門、ジブラルタル・マラッカ・ホルムズ・パナマを完全に掌握したことになる。言わずもがな、これは周到に練られた布陣であり、『一帯一路』よりずっと信頼できる」

パナマ・グリーンランド・ベネズエラ、そしてイランのホルムズ海峡、マラッカ、さらにジブラルタルへと連なる米国のグローバル布陣は、中共を照準に据えたものであることが明らかになりつつある。そのことを読み解く人々が世界で着実に増えている。

王浄純
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