マスク氏がOpenAIを提訴 この裁判は米国の慈善制度の根幹に関わる

2026/04/30 更新: 2026/04/30

イーロン・マスク氏がOpenAIと同社最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏らを相手取った訴訟が、正式に公判段階に入った。

29日、マスク氏とアルトマン氏はカリフォルニア連邦地裁に出廷した。マスク氏は「人類全体のために善意でAIを管理する」という設立当初の使命を相手方が放棄し、非営利組織を利益追求の企業へと変質させたと主張している。この訴訟は2人の技術大手間の個人的確執にとどまらず、最終判決が人工知能(AI)の今後の発展の方向性を左右するとの見方が広がっている。

29日、OpenAIの共同創設者であるマスク氏は、かつての盟友で現OpenAI最高経営責任者(CEO)のアルトマン氏と、カリフォルニア州オークランドの連邦地裁で対峙した。

証言台に着いたマスク氏は陪審員に向けて端的に述べた。

「この問題は実に単純だ。慈善団体を奪い取ることは間違っている」

事の発端は2024年にさかのぼる。マスク氏がアルトマン氏と副代表のグレッグ・ブロックマン氏、およびマイクロソフトを提訴し、OpenAI設立時の「人類に貢献する非営利の使命」から逸脱し、自身が取締役会を離れた13か月後に同社を営利構造へ転換したと訴えた。

昨秋、OpenAIは再度組織を再編し「公益企業(PBC)」へと移行。非営利部門と投資家が共同で株式を保有する形となり、本格的な営利化に向けた重要な土台が築かれた。

マスク氏は、相手方が関連計画を隠蔽した上で自身の名声と資金を利用してOpenAIを「営利の道具」に変えたと主張。慈善信託違反および不当利得に当たるとして、自身と社会に対する説明責任を果たすよう求めた。

裁判所の文書によれば、マスク氏は2016年から2020年にかけて約3800万ドルの創設資金を拠出した。

今回、マスク氏はOpenAIとマイクロソフトに対して1500億ドルの損害賠償を求めており、勝訴した場合は賠償金をOpenAIの慈善部門に充てるとしている。また、同社の非営利性の回復とアルトマン氏の解任・取締役会からの排除も求めている。

マスク氏は法廷で強調した。

「慈善団体を略奪することが許容されるなら、米国の慈善制度全体の根幹が崩壊する」

これに対しOpenAI側は、マスク氏が本当に求めているのは「王国全体の鍵」だと反論。マスク氏は出資当初から商業的利益を見越しており、同社の営利化を推進し、自らCEOに就くことさえ望んでいたと指摘した。

近年、マスク氏とアルトマン氏の初期の対話の一節が改めて注目を集めており、OpenAI設立に際するマスク氏の当初の意図が変わっていなかったことが読み取れる。

アルトマン氏(OpenAI参加前)

「設立から6か月のOpenAIの進展をどう見ますか」
 

 マスク氏

「OpenAIの組織形態は501(c)(3)の非営利法人だ」「(OpenAIの使命は)将来に『存在リスク』が生じる可能性を可能な限り低減することにある」

この裁判は広く注目を集め、OpenAIが小規模な非営利チームから現在の評価額8500億ドル超の技術大手へと成長した過程と、その背景にある権力争いを広く知らしめることともなった。

また、この裁判はOpenAIの将来の新規株式公開(IPO)にも影響を及ぼす可能性があり、AIの展望をめぐる懸念をさらに高めることにもなりかねない。

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