中東情勢の緊迫化とホルムズ海峡封鎖への懸念を背景に、日本国内でナフサ関連製品の供給不安が具体的な形で表面化している。カルビー社の「ポテトチップス」など14商品にパッケージが白黒になる影響もでており、農林水産省が同社へのヒアリングを実施するなど、影響が広がっている。
ポテトチップスの包装に使用される印刷インクや溶剤は、原油から精製されるナフサを原料とする。こうした中、日本のナフサ供給は「総量としては確保されているが、必要な現場に十分届いていない」という構造的課題に直面している。
政府は全体量の確保を強調している。高市早苗首相は5月12日のX(旧Twitter)への投稿で、中東に加え、米国、中南米、アジア太平洋地域などへの調達先多角化が進展していると説明。ホルムズ海峡を通過しない代替調達について「5月は約6割、6月には約7割以上の目途が立った」と報告した。
また今回、問題となっている食品包装資材のインク原料についても「前年実績での供給が可能であることを確認出来ている」とし、日本全体として必要量は確保されているとの認識を示した。
経済界も同様の見解を示している。読売新聞などの報道によると、日本商工会議所の小林健会頭は5月13日の記者会見で、「政府が石油備蓄や代替調達先の確保などの対応をしているので(必要分は)足りている」と述べたうえで、「通常のように流通すれば今まで通り供給されるはず」とし、企業や国民に冷静な対応を呼びかけた。
では、総量が確保されているにもかかわらず、なぜ包装資材不足が発生するのか。背景にあるのは、サプライチェーンにおける深刻な「目詰まり」である。小林会頭は、「供給不安から余計に確保する企業が増えると目詰まりを起こす」と指摘している。
この構造について、毎日新聞の野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏への取材で二つの要因を指摘している。
第一は、代替調達されたナフサの成分構成の違いである。中東以外から調達されたナフサは従来品と性質が異なる場合があり、基礎化学品メーカーの設備や製造条件に適合しにくい。このため、数量が確保されていても現場では調達不安が払拭されない。
第二は、価格高騰に伴う減産である。原油価格の上昇に連動してナフサ価格も上昇しており、基礎化学品メーカーは採算悪化や価格転嫁後の需要減少リスクに直面している。その結果、生産設備の稼働率は過去最低水準に落ち込み、供給能力そのものが低下している。
こうした状況が、企業による先回り確保、いわゆる「買い急ぎ」を誘発し、必要以上の調達行動が連鎖することで、合理性を前提に構築されてきたサプライチェーンにひずみが生じ、局所的な供給不足を引き起こしているという。
政府は対策として、川中から川下に至る流通状況を能動的に把握し、業界団体を通じて「前年同月比同量」での購入を呼びかけるなど、流通正常化に向けた取り組みを進めている。
カルビーのパッケージ白黒化は、単なる企業の一時的対応ではない。そこには、代替原料の品質差、価格高騰による減産、そして流通段階での過剰確保が複雑に絡み合う、日本のナフサ供給網の脆弱性が映し出されている。
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